色彩
■ 15.戸惑い

「その言い方だと、そなたは深冬に振り向いてもらえないようだ。・・・自信がないのか?」
自信なさげな青藍に、白哉は呆れた顔を向ける。
『自信は・・・ないですけど。でも、振り向いてもらえるように努力しますよ。』
「そなたならば、深冬を他の男から遠ざけることは簡単だろうに。」


『あはは。確かに、そうやって僕しか見ないようにするのは簡単ですけど、それでは、きっと、僕は罪悪感に押しつぶされてしまう。実は、今も結構胸が痛いです。こんな僕でも、離れるのは嫌だと、深冬は言ってくれるので。』
青藍は苦笑する。
それを聞いて白哉は小さく笑った。


それは・・・そういうことなのではないだろうか。
そこまで言っておいて、深冬は自覚がないらしい。
そう言われても尚、自信をもてない青藍も大概だが。
本当に、前途多難だな。
白哉は内心で呟く。


『何を笑っているんです?僕、真剣に言っているのに。』
笑った白哉を見て、青藍は拗ねたように言う。
「・・・いや、私もそんなことがあったと、思い出したのだ。私は、咲夜と思いが通じた次の日には勝手に婚約を発表したからな。その後、不安になったりもしたのだ。私の独りよがりではないかと。それを咲夜に言ったら、あれは笑っていたが。」
白哉はおかしそうに言った。


『父上たちは互いに好き合っていたのですから、いいじゃないですか。僕なんか、下手すれば犯罪ですよ?僕の片思いは長そうですし。』
唇を尖らせていう青藍に、白哉は再び笑った。
「その自覚はあるのか。」
『当たり前です。僕を何だと思っているのですか・・・。』
そう言って青藍は再び拗ねる。
それを見て白哉は苦笑した。


「すまぬ・・・。だが、決めたのならば、反対はせぬ。」
『本当ですか?』
白哉の言葉に青藍は目を丸くする。
「あぁ。朽木家の家臣団も反対はせぬだろう。そもそも、それを提案したのは、清家だ。」


『でも、どう考えても正気じゃないですよ?あんなに小さな子を、好きに、なるなんて。』
「誰かを好きになることに、理由などあるまい。それに、婚約が長くなるだけだ。深冬が大きくなれば、大したことではない。それまで待つ覚悟もあるのだろう?」


『・・・待って欲しいのは僕の方です。色々な戸惑いがあるくせに、こんなことをしてしまう自分にさらに戸惑って・・・。今ちょっと、自分で自分が分かりません・・・。自分の感情がどういうものなのか、頭で解っていても、心が追いつかないんです。もう、どうしたらいいのか・・・。』


・・・この様子では、先は長そうだな。
本気で戸惑っている様子の青藍に、白哉は内心苦笑した。
だが、ゆっくりでいい。
二人で、焦らず、慌てず、ゆっくりと進めばいいのだ。
まだまだ子どもなのだから。


「本当に、恋をしたのだな、青藍。」
からかうように言えば、その顔が赤く染まる。
『な、だ、そういうことを、わざわざ言わないでください!父上の馬鹿!こ、こう見えて、一杯一杯なんです!』
「そのようだな。深冬のためにも余計な手出しは控えることにしよう。」
『何かする気だったんですか!?』


「さてな。・・・とりあえず、加賀美家には私から話を通しておこう。断られることはないだろう。」
『・・・僕の気持ち云々は話す必要はありませんからね?』
「解っている。」
念を押すように言う青藍に白哉は苦笑しながら頷く。


「だが、一つだけ言っておく。」
『なんです?』
「言葉にしなければならない思いもあるということだ。大切な言葉は、口に出して伝えるのだぞ。」
白哉は真っ直ぐに青藍を見つめて言った。
その視線を受け止めて、青藍はしっかりと頷く。


『はい。いつになるかはわかりませんが、それはちゃんと伝えます。』
「そうか。ならばよい。見守ろう。」
白哉はそう言って微笑む。
『はい。・・・では、僕はこれで失礼します。』

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