色彩
■ 11.仲間入り

「お前、そういうことは先に言えよ・・・。俺を巻き込む気満々じゃねぇか。聞かなきゃよかった・・・。」
豪紀はそういって疲れたようにため息を吐く。
『あはは。で、そう考えると、やっぱり、深冬は朽木家に居た方がいいでしょう?』


「そうだな・・・。そんなもの、その辺の貴族では背負えない。加賀美家は一応上流貴族ではあるが、今の家族関係では深冬を危険に晒しかねない。しかも利用される可能性が高すぎる。だが、利用されれば、世界を揺るがす事態になる・・・。」


『そうなのさ。だから、僕の私情を除いても、決して悪い話ではないんだ。もちろん、加賀美家にはそれなりに朽木家に近付かせてあげるよ。少なくとも、君は既に巻き込まれているようなものだし。』
「お前が今さっき巻き込んだんだろうが!!」


『あは。まぁ、味方は多い方がいいでしょ?事情を知っている人は意外とたくさん居てね。朽木家の者はもちろん、漣家の方々に、十四郎殿、春水殿、烈先生、睦月、睦月の兄の師走さん、それから蓮に、雪乃、侑李、京、キリトは知っている。あぁ、あと深冬もだね。山本の爺には詳しく説明はしていないけれど、それでも、母上に何かあることぐらいは感付いているだろう。それからさっき言った十五夜様と安曇様も協力者だ。まぁ、この二人は元々知っていたのだけれど。』


「お前、彼奴らもすでに巻き込んでんのか・・・。」
『うん・・・。母上が暴走したとき、それをどうにかするために姿を消していたら、皆に後から怒られてね・・・。洗いざらい吐かされたのさ・・・。』
青藍はそう言って遠い目をする。
「・・・彼奴らには敵わないのか。」
『あはは・・・。まぁでも、事情を知っても僕の友人でいてくれるから、心強い味方だよ。もちろん君も今日からその仲間入りだ。おめでとう。裏切れば容赦はしないけど。』


「・・・それ、聞かなかったことにならないか?」
『あはは。無理だね。記憶を消そうにも、十二番隊に行って、その記憶が誰かに見られてしまうというのは裏切りだ。まぁ、君はただ沈黙していればいい。何があっても知らぬ存ぜぬ、で貫き通してくれればいい。こちらは最悪、霊王宮の方を呼ぶことが出来るからね。何か圧力をかけられたりしたら、あの方々に圧力をかけてもらえばいい。』


「正しい権力の使い方だよな・・・。」
簡単に言う青藍に、豪紀は呆れたように言った。
『ふふ。そんなときぐらいしか、あの方々は使えないからなぁ。』
「お前それ、本人に聞かれたら不敬罪だぞ・・・。」


『僕を不敬罪に出来るものならやってみればいいんだ。そんなことをしようとすれば、すぐに霊妃様があの方々を叱り飛ばしてくれるもの。なんて言ったって、僕は霊妃様の愛し子だからね。』
「・・・そうだな。お前はそういう奴だよな。」


『大体、十五夜様なんていつも父上と喧嘩をして隊舎を破壊して帰って行くんだよ・・・。安曇様は安曇様で、父上に追い出されると僕や橙晴の所にやってきて、膨れてひたすらお菓子を食べているし。』
青藍は面倒臭そうに言う。


『父上も父上だ。隊舎を壊す癖に片付けないんだよ?いつも僕と恋次さんと橙晴に任せて仕事に戻ってしまうんだから。隊舎の修繕にどれ程朽木家の財が投じられているか、解っているのかなぁ。』
青藍はそう言ってため息を吐く。


『まぁ、それは、僕が好きに作り替えたりしても文句は言われないから別にいいけどね。』
「お前この部屋のほかにも色々と私物化してんじゃねぇだろうな?」
『あはは。まぁ、それは、秘密。』


「・・・六番隊って本当に大丈夫なのかよ。」
『何事もなければ優秀な隊なのだけれどね・・・。夫婦げんかで隊舎を壊したりすると、何故か僕が山本の爺に怒られるんだよ。理不尽すぎる。毎回夫婦げんかの仲裁をしている僕を誰か褒めて欲しいよ・・・。』
青藍はそう言ってため息を吐く。


『まぁ、それは、いいとして、何だか余計なことも話したけど、とりあえず、僕はそのうち深冬を婚約者にするから、そのつもりで。』
「・・・解った。」
『それと、さっき僕が言ったことを深冬に言ったりしたら切り刻むからね。今日ここで話したことは全部他言無用だよ?』
青藍はそう言って微笑む。


笑ってはいるが、目が本気だ・・・。
豪紀はそれに気がついて、やっぱり今日は余計なことを聞きすぎた、と後悔する。
しかし、頷かなければ本当に何をされるか解ったものではない。
そう考えて、豪紀はそれに頷いた。
「あ、あぁ。言わない。」


『で、八重殿をどうするかは、まぁ、相手の出方次第かな。』
「だろうな。俺も何とか止められるように努力はするが。」
『うん。よろしく。・・・じゃ、帰ろうか。』
「そうだな・・・。」
豪紀はこの先のことを考えて気が重くなったのだった。

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