色彩
■ 10.決定事項

「お前、それ、相談って言わねぇよ・・・。すでに決定事項だろ・・・。しかもさらっと脅しだろ・・・。」
豪紀は呆れたように言った。
『あはは。そうだね。だから、協力してくれ。母君を、八重殿を止めてくれ。君だって、茶羅と婚約する気はないだろう?』
青藍は苦笑する。


「まぁな。朽木隊長が俺の義父になるというのは、ちょっと考え難い。それにたぶん、茶羅姫は俺の手に負えるような相手じゃないだろう。どう見ても母親似だからな。」
『よく解っているじゃない。・・・僕と深冬が婚約すれば、君と茶羅が婚約する必要はなくなる。でも、きっと、八重殿はそれでは納得しないのだろう?僕と深冬が婚約したとしても、色々と手を出してくるのだろう?』


「・・・そうだろうな。母は、深冬が気に入らない。深冬が今朽木家に居ることだって、相当頭に来ているらしい。かといって、あの人に事情を説明しても、信じないだろう。安曇様を見せたって、今は納得しないだろう。納得したとしても、深冬を利用しかねない。」


『うん。それでは、僕も君も困る。だからといって僕は、深冬と婚約することは諦められない。この間のように攫われたり、酒宴で他の姫たちに絡まれたりして、深冬が傷つくのは嫌だ。その上、深冬が他の誰かと婚約するなんてことになったら、もっと嫌だ。』
「ほぼお前の私情じゃないか・・・。」
豪紀はあきれ顔だ。


『いいの!深冬を利用される可能性だってある。その時、他の家に居たのでは、守りきれないというのも、本当だ。彼女を守る責任がある者として、それは困る。そうなったときにごたごたして色々とばれたりしたらもっと困る。』


「色々と、ねぇ?お前、深冬に関して、と、いうより、安曇様に関してなんか俺に隠しているだろう。」
『あはは・・・。』
言われて青藍は笑う。


「安曇様は、ただの霊王宮の家臣などではないんだな?」
『・・・。』
「まさか、漣家の力と関係があるとか、言わないよな・・・?」
『・・・。』


「あの時、瀞霊廷を治すために舞っていたのは、お前の母親ではないんだな?」
『・・・。』
「あれこそが、漣の力で、安曇様もその力と近いところに居るんだな?だから俺は、深冬もお前の母親も安曇様も恐ろしいと感じるんだな?」
『・・・。』


「・・・はぁ。無言は肯定ととるぞ。それでいいんだな?」
口を閉ざした青藍に、豪紀は諦めたように言った。
『まぁ、簡単に言うと、その通りだよ。君、最近本当に鋭いよね・・・。』


「だからお前は深冬の正体をあれ程慎重に隠しているのか?」
『うん。深冬と漣家の力には繋がりがある。それぞれ一方だけでもそれなりに揉め事の種になるのに、それが繋がっているなら、余計大きな火種になる。深冬の立場が不安定であるほどに、その可能性は高くなる。・・・まぁ、僕の方がよっぽど火種になりやすいけれど。』


「・・・お前も漣家の力が使えるとか言わないよな?」
青藍の言葉を聞いた豪紀は恐る恐る問う。
『・・・。』
「使えるのかよ・・・。」
『・・・まぁ、使おうと思えば。聞いたことない?僕が霊王の愛し子だって噂。』
「そんな噂もあるな。」
『あれ、まぁ、本当。霊王様の、ではないけれど。』


「待て。それを繋ぎ合わせると、漣家の力は霊王に匹敵するってことになるんだが・・・。嘘で霊王の名前が出て来るなんて普通はない。しかも、お前を愛し子といったのは霊王宮の方なんだろ?」
豪紀は蟀谷を抑えた。
まぁ、実際、頭が痛くなるような内容だよね。


『そうだね。あの時来られた十五夜様は霊王家の筆頭家臣だ。ちなみに十五夜様は母上の大叔父様で、漣家の方だ。』
「つまり、漣家の力は霊王自身が、自分に匹敵すると、認めている・・・?それじゃあ、お前は、尸魂界を背負っているに等しいじゃないか・・・。」


『・・・だから僕は僕自身が一番怖いのさ。漣家の力は、霊妃様・・・霊王のお妃様の力だよ。詳しいことを話すと時間がかかるから、暇なときに深冬か雪乃あたりに聞いてくれ。彼女たちは事情を知っている。今僕らが話したことを含めて、他言は無用だ。裏切れば、朽木家と漣家、その他霊王宮からも、それなりの罰が下るだろう。』

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