色彩
■ 8.秘密の部屋

「お前、それ、賄賂っていうんだぞ・・・。」
『えぇ?何のことかな?僕は五番隊の皆さんにお疲れ様の意味を込めて持ってきたんだよ?皆さん、遠慮なく食べてくださいね。』
青藍はそう言って微笑む。


「嘘を吐くな。お前、笑って言えば皆が騙されると思っているだろう。」
『そんな、人を嘘つきみたいに言わないでくれるかな。人聞きが悪いじゃないか。』
「否定できないやつが何を言っているんだ。」
『嘘も方便、というじゃないか。』
「・・・やっぱり嘘じゃねぇか。」
『あはは。まぁ、気にしない、気にしない。』


「そもそもお前、俺が断ったらあれで外堀から埋めていくつもりだっただろ?」
そう言って豪紀は青藍に疑いの目を向ける。
何故見抜かれている・・・。
最近の加賀美君、鋭いよねぇ。
青藍は内心苦笑する。


『・・・そんなことないよ?』
「その妙な間は何だ。」
豪紀はじろりと青藍を見る。
『気のせいだよ。』
そんな豪紀に青藍は微笑みながら言う。


「・・・二人とも、仲良かったんだっけ?」
そんな二人を見て、桃は首を傾げる。
「確か、刺したとか刺されたとか・・・。」
その言葉に豪紀は気まずい顔をする。
『そんなこともありましたけど。骨を折ったり折られたり。』
青藍はそれを見て楽しげに言った。


「阿散井君と吉良君が顔を青くして帰ってきたこともあったような・・・。」
『あはは。ただの喧嘩だよね?』
青藍はそう言って豪紀を見た。
「俺に振るな。」
『まぁ、昔の話ですよ。その件は清算済みです。じゃ、僕らはこれで。』
青藍はそう言うと、隊士たちに手を振って、豪紀と共に執務室から出ていったのだった。


「・・・で、何処だよ此処は。」
豪紀は青藍に続いて歩き、着いた場所を見て、呆れたように言う。
十畳ほどの広さの部屋に、ベッドと座卓、それに簡易のキッチンまである。
地下道から入ってきたため、地下であるはずなのだが、その部屋には窓が付いており、外には青空が広がっている。


『ここ?ここは六番隊舎の秘密の部屋。僕のお昼寝スペースだよ。今お茶を淹れるからその辺に座ってくれ。』
青藍は楽しげに言う。
「・・・隊舎を私物化するなよ。」
『ふふ。大丈夫だよ。ここは父上すら知らないから。』


「は?」
『喜助さんにこっそり作って頂きました。』
「喜助って・・・現世の浦原喜助?」
『そうそう。あの人、こっそり何かやらせると、凄いんだよ?あれはもう才能だね。』
「・・・お前って本当にアレな奴だよな。」


『ま、いいじゃないの。内緒話にはもってこいだよ。防音もばっちりだからね。壁に結界が組み込まれているから、僕が許可しないと誰も入ってこられないし、勝手に入ってこようとすると、防犯装置が作動して地下道に落っこちるようになっている。ついでにここへ来るまでの道は一度通ると変化するから、僕と喜助さん以外で、一人でこの部屋にたどり着くのは不可能だ。』
青藍はお茶を淹れながら得意げに話す。


「昼寝するには、大層な部屋だな。」
『その辺で寝ていると、目が覚めたときに、知らない人が縄を持って目の前に居たりするからね。あれは心臓に悪いからやめてほしいよ。』
青藍は思い出したようにため息を吐いた。


「・・・まぁ、それはどうでもいい。相談って何だよ?」
『うん。僕、婚約者を作ろうと思ってね。』
湯呑を座卓に置きながら青藍は軽く言う。
「・・・は?」
『ふふ。それで、深冬にしようと思っているのだけれど。』
「・・・・・・は?」
青藍の言葉に豪紀は唖然とする。


『この間の件で気が付いたよ。深冬を簡単に他の貴族に渡すのは危険だと。だからね、深冬を守るために、深冬を僕の婚約者にしようと思うのだけれど、君はどう思う?』
青藍は珍しく真面目に言う。
「・・・いや、まて。深冬を他の貴族に渡すのは確かに危険だが、お前がわざわざそこまでする理由がないだろう。」


『そうでもないよ。僕が自分で深冬を守りたい。・・・それだけでは駄目かい?』
青藍の真面目な表情に、豪紀は再び唖然とする。
「・・・それは、お前が、深冬を、本気で妻にしたいということか?」
豪紀は恐る恐る聞いた。
聞かれて青藍は目を伏せる。


『まぁ、そういうことに、なるのかな・・・。僕も迷ったのだけれどね。僕の妻になる人は僕という化け物を相手にするわけだから。もしかすると、僕よりも辛い思いをするかもしれないし。』
「・・・。」


『あ、もちろん、今すぐに手を出したりはしないよ?結婚するまでは手を出すつもりはない。深冬が大きくなるまでちゃんと待つ。深冬が嫌だというのなら、触れることだってしないだろう。・・・でも、深冬には、そばに居て欲しい。』
少し苦しげにそう言った青藍に、豪紀は目を丸くした。

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