色彩
■ 3.探り合い

『どうして、母上に想いを伝えたりしなかったのですか?』
「俺や京楽では漣を引き受けられないと、解ったからだ。」
浮竹はそう言って、空を見上げる。
「そうだねぇ。・・・僕らね、朽木隊長が生まれたとき、三人で見に行ったんだ。」


「そうそう。そうしたら、白哉は迷わず漣に手を伸ばした。それで漣の指を掴んですやすやと眠ってしまった。それを見たら、漣を怖いと思っている俺たちでは駄目なのだと、気が付いた。」
「なるほど。母上が生まれたばかりの父上に恋をしたというのは、その時なのですね?」


「恐らくな。あれは、悔しかったなぁ。」
浮竹はしみじみという。
「あはは。うん。僕も。それからの咲ちゃんは、朽木隊長が可愛くって仕方がないんだから。」


『ふふ。母上は今でも父上が可愛くて仕方ないのですよ。』
「そうですね。まぁ、母上の気持ちは何となくわかりますが。」
『うん。父上、時々すごく可愛いもの。』
「・・・五月蝿いぞ。」
青藍と橙晴の楽しげな視線に、白哉は拗ねたように言う。


『「拗ねた姿も可愛いですよ。」』
「・・・。」
二人に言われて白哉は黙り込む。
「ははは。流石漣の子だよ。白哉もこれでは敵わないな。」
「そうだねぇ。」
「全くだ。」


「それで、青藍?さっきから人のことばかり聞いているけれど、君はどうなんだい?」
京楽はニヤニヤという。
『僕ですか?僕は別にありませんよ?』
青藍はそんな京楽ににっこりと微笑む。
その微笑を白哉は胡散臭そうに見つめる。


「それはずるいなぁ。青藍だけ、本音を話さないなんて。」
尚も京楽はニヤニヤと聞く。
『そうですか?そういう春水殿だって、そういう話はしていませんよ?』
「僕?僕はいいのよ。僕の話をしたら夜が明けちゃうからね。」


『へぇ?僕は別にいいですよ?春水殿の本気の話なんて、そう聞けませんからね。三日三晩だって付き合います。』
「あはは。青藍ってば、手強いなぁ。」
二人はそう言って笑いあう。


「なるほど。先ほど橙晴が言ったことは本当のようだな。」
そのやり取りを横目で見つつ、白哉は静かに言う。
「?」
その言葉に浮竹は首を傾げる。


「青藍はそう言う話を素直にしない、と。」
「ははは。確かにそうだ。」
「まぁ、兄様はどうせ、深冬ですよ。」
橙晴は声を潜めて言う。


「そうなのか!?」
浮竹は目を丸くした。
「・・・気が付いてないとは、驚きですねぇ。」
それを見て、橙晴は呆れたように言った。


「いや、だって、え・・・?それは・・・大丈夫なのか?」
戸惑ったように浮竹は白哉を見る。
「・・・好きにすればいいのではないか?」
白哉はそんな浮竹を横目でチラリとみてそう言った。
「だが・・・。」


「流石に兄様も、今自覚したってすぐに手を出すことはしませんよ。そのくらいの節度はあります。」
「そうだな。深冬が大きくなれば、問題ない。」
「なるほど。それまで待つつもりということか。」


「そうだろうな。あれも中々、苦労するのだろう。」
未だ腹の探り合いをしている二人を見ながら、白哉は面白そうに言った。
「まぁ、深冬を手に入れるのは、なかなか大変でしょうね。加賀美家は、どうやら次期当主と茶羅をくっつけたいらしいですから。」
橙晴は楽しげに言う。


「そうなのか?」
「そうらしいな。加賀美家、というよりは、加賀美家当主の奥方が、そうしたいらしい。今日の深冬の見合いも、深冬を青藍から離すため、と考えるのが妥当だろう。」
「それは・・・なかなか前途多難だな。」
浮竹は苦笑する。


「まぁ、近く、答えが出るだろうが。」
白哉の言葉に、浮竹と橙晴は首を傾げる。
白哉はそれを一瞥して、楽しげに沈黙したのだった。

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