色彩
■ 38.明日からは大変

『ふふ。・・・良かったね、深冬。』
青藍に言われて、深冬は気まずそうに目を開ける。
そして、ゆっくりと起き上がった。
「目が覚めたか。具合が悪かったりはしないな?」
すぐさま睦月が深冬の様子を見る。


「あ、あぁ。大丈夫だ。」
「よし。それならいい。」
睦月はそう言って深冬の頭を一撫でする。
深冬は怯えることなくそれを受け入れる。


「・・・どうやら本当に大丈夫らしい。清家さんから話を聞いて、手を振り払われる覚悟もしていたんだが。」
『ふは。睦月も心配性だよね。昔からそうだけど。』
それを見て、青藍は吹き出す。
橙晴や白哉もまた面白そうに彼を見つめた。


「五月蝿いぞ。これは仕事だ。」
それに気が付いているのか、睦月は拗ねたように言う。
『ふぅん?』
そんな睦月に、青藍は楽しげな視線を向けるだけである。


「何だよ?」
『いや、睦月も大概素直じゃないなぁ、と思ってね。まぁ、そんなところも可愛いよね。』
「かわ!?」


「あはは!確かにそうだ。睦月は可愛いんだよなぁ。悪い振りしているけど、本当はとっても優しい。明らかに仕事以上のことをしているもの。」
「なんだかんだで、朽木家を気に入っているらしいな。」
三人に言われて、睦月は拗ねたようにそっぽを向く。
そして、あることに気が付いた。


「お前ら、寝たふりとはいい度胸だな・・・?」
「「「・・・ふ、あはは!!!」」」
睦月に言われて、咲夜たちは声を上げて笑い出す。
「もう何なんだよお前ら・・・。」
楽しげに笑い続ける三人に睦月は疲れたように言う。


「ふふ。いいじゃないか。睦月はそれだから睦月なのだ。」
咲夜は楽しげに言う。
「そうですね。素直な睦月は睦月ではありませんからね。」
「ルキア・・・。お前なぁ・・・。」
「ルキア姉さまの言うとおりですわ。でも睦月はそれだからいいのよ?」
「・・・。」
楽しげに言われて、睦月は拗ねたように黙り込む。


「・・・なるほど。これじゃあ、お前は朽木家から離れられないわけだ。」
それを見て、師走は納得したように呟いた。
「五月蝿いぞ、馬鹿師走。」
「素直じゃないやつだな。俺は一応お前の兄として、弟が可愛がられていることを喜んでんじゃねぇか。」
「お前を兄と思ったことは一度もないっての!!」


「それも照れ隠しか?可愛い奴だなぁ、お前。」
「喧しいわ!誰が兄だ、この馬鹿!お前なんか、俺の下僕だ!!」
「残念でした。お前への借金は全額返済済みだ。お前の下僕生活は既に終わってんだよ。俺がここに居るのはご当主に御嬢さんを頼まれているからです。ねぇ、ご当主?」
騒ぐ睦月を馬鹿にしたように、師走は言う。


「そうだな。医師としてではないが、茶羅の目付け兼護衛として雇っている。」
「いやぁ、大変だったよ。ご当主と咲夜さんによる訓練が。」
師走はそう言って肩を竦める。
「あはは。そういう割には余裕だったが?」
咲夜はそんな師走に楽しげに言った。


「まさか。もう、お二人とも容赦がなくて、俺は何度か死を覚悟しました。」
「あの位で死ぬような奴に茶羅の護衛は任せられないからな。」
「まぁでも、拾いものとしては十分役に立つ。」
白哉と咲夜はしれっとそんなことを言い放つ。
「お二人とも、本当に言葉がきついですよ・・・。」
そんな二人に師走は項垂れたのだった。



「さて、今日は皆でご飯を食べようじゃないか。もちろん、深冬に睦月に師走もだ。ね、白哉?」
「あぁ。すでにそのように言いつけてある。」
『さすが父上です。』


「あ、深冬。後で浮竹も来るぞ。」
「隊長も?」
咲夜の言葉に深冬は目を丸くする。
「そうだ。心配していたからなぁ。元気な姿を見せてやるといい。」
「はい。」


『ふふ。良かったね、深冬。』
そう言って青藍が頭をなでると、深冬は嬉しそうに微笑み、皆を驚かせたのだった。
それを見て青藍は内心で、明日からは大変だ、と頭を抱えたのだが。



2016.09.04 正体編 完
〜婚約編に続く〜
自分の想いを漸く自覚した青藍。
今後、青藍(や橙晴)の恋の行方を、皆が楽しく見守ります。


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