色彩
■ 37.家族の一員

数刻後。
仕事を終え、睦月と師走を四番隊から連れて帰ってきた白哉と橙晴は、仲良く眠る五人を見て、一瞬言葉をなくした。
「これはまた・・・。」
睦月はそれを見て苦笑する。
「うわぁ、こんな美人に囲まれて眠るなんて、贅沢ですねぇ。」
師走は言葉とは裏腹に呆れ顔だ。


「・・・一体、何がどうしてこうなったのだ。」
白哉は呆れたように呟く。
「さて。でも、とりあえず、兄様はずるいです。」
橙晴は不満げに言った。


「ははは。俺たちの仕事はなさそうだな。」
そんな橙晴を笑いつつ、睦月は言う。
「そうだな。何だか、あのお姫様は落ち着いているようだし。」
眠っている深冬を観察して、師走はため息を吐いた。


「そのようだ。全く、心配して帰ってきてみれば、これだ。」
白哉は苦笑する。
「全く、兄様は他人を振り回すのがお上手ですねぇ。まぁ、その兄様を振り回すことが出来る深冬も流石ですが。」
「青藍は咲夜に似すぎなのだ・・・。」
「あはは。父上も大変ですねぇ。」


「それで、ご当主。実際どうなんですか、あの二人。」
睦月が面白がるように聞く。
「・・・さぁな。後で本人から聞き出すのがいいだろう。」
白哉は清家から青藍の心情に変化があったことをすでに聞いている。
一体、どうなることやら・・・。
白哉は内心で苦笑する。


「まぁ、兄様がその辺のことを素直に話すかどうかは疑問ですけどね。」
橙晴はそう言ってため息を吐く。
「橙晴も素直に話さないからな。」
そんな橙晴を横目でチラリと見ながら、睦月は言う。


「何のことです?」
橙晴は惚けたように言う。
「惚けんなよ。お前は、朝比奈、だろ?」
「な!?」
得意げに言った睦月に、橙晴は目を丸くする。
「俺を騙せると思うなよ。結構昔からだよなぁ。」


「ほう?それは面白いことを聞いたな。」
ニヤニヤという睦月に、白哉も興味深げに言う。
「なんです?流行りなんですか、恋。」
「ちょっと!!違いますからね!?師走さんは黙ってください!」
橙晴は焦ったように言う。
「何で俺だけだよ・・・。」
橙晴の言葉に師走は落ち込む。


「まぁそう恥ずかしがるなよ。」
睦月は相変わらずニヤニヤとしながらからかうように言った。
「五月蝿い!睦月の莫迦!!」
そんな睦月に橙晴は顔を膨らませる。
「なるほど。橙晴はああいうものが好みなのだな。」
白哉もまた楽しげに言う。


「父上まで・・・。」
橙晴はそう言ってさらに頬を膨らませる。
「しかし、あの娘はなかなか手強いぞ。秋良殿が見合い話を全て断っているとぼやいていたからな。」
「はは。それは大変だな。ま、頑張れよ。」
「父上も睦月も面白がらないでください!」


『ん・・・。ん?』
その騒ぎに目が覚めたのか、青藍が瞼を開ける。
「起きたか。」
『父上?橙晴に睦月に師走さんまで。・・・というより、これは一体?』
青藍は起き上がって周りを見渡す。
そして傍で眠っている咲夜と茶羅とルキアを見て、首を傾げた。


「様子を見に来て眠ってしまったのだろう。」
『なるほど・・・。』
納得したように頷いて、青藍は笑い出す。
「どうした?」
そんな青藍に、白哉は目を丸くする。


『ふふ。いえ。なんだかんだで、深冬は既に家族なのだなぁ、と思ったら、何だかうれしくて。父上たちも、心配して来てくださったのでしょう?』
青藍は楽しげに笑う。
「それは、そう、だが・・・。」
白哉は気まずそうに言う。


『あはは。深冬のために睦月たちまで連れて来るなんて、よっぽどですねぇ。』
「そうそう。父上、仕事を早く終わらせるために、すごく集中していたのですよ?」
『そうなの?』
「えぇ。定刻になると同時に隊舎を出てきましたからね。」
橙晴もまた楽しげに言う。


「そなたこそ、心配したから私と共に帰ってきたのだろう。」
「そりゃあ、攫われたと聞けば、心配するのは当然です。深冬は僕の大切な友人なのですから。兄様みたいなトラウマを植え付けられては困ります。」

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