色彩
■ 36.お昼寝中

「せいらーん!深冬が攫われた、と、聞いた、のだが・・・。」
咲夜がもしものためにと隊の三日分の仕事を処理して邸に帰り、青藍たちの元へ駆けつけると、お昼寝中の二人の姿があった。
青藍が深冬を抱きしめる形で、使用人の誰かが掛けたであろう毛布にくるまって。
その寝顔があまりにも穏やかで、咲夜は思わず微笑んだ。
そして二人に近付くと、自分も畳の上にごろりと寝転ぶ。


「珍しいこともあるものだ。」
咲夜はそう呟きつつ、二人の寝顔を眺める。
青藍が家族以外の前でこんなにぐっすりと眠っているなんて。
赤子の頃からそばに居る浮竹や京楽、冬獅郎や卯ノ花に睦月は例外として、最近の青藍は人前で眠ることはあまりない。
寝込みを襲われたりしないように、警戒しているのだ。
今も昔も彼を攫おうとする輩が存在するために。


白哉が、第三書庫の一角を青藍が私物化していることを黙認しているのは、そのためでもあるのだった。
たまに白哉もあそこを利用しているからという理由もあるが。


それにしても・・・。
深冬が此処まで他人の近くで眠っていることも、珍しい。
私とのお昼寝の時、一度だけ深冬を抱きしめて寝たら、深冬は眠れなかったようなのに。
咲夜は心の中で少し悔しそうに呟く。
ずるいぞ、青藍・・・。
内心で青藍に恨み言を言いつつも、二人を眺める顔は穏やかだ。


そして、気が付く。
普段、そう感じることはあまりなかったが、横になっていると、青藍の大きさがよく解る。
今では、私の方が小さいのだ・・・。
こんなに大きくなったのだなぁ。
その大きな腕の中に、大切に抱えられている深冬を見て、咲夜はくすりと笑う。


誰かを抱きしめて眠るのは、白哉に似たらしい。
あれは、いつも私を抱き枕のように抱えて眠るのだ。
どうやら私が居ないときは枕を抱えているらしいと気が付いたのは最近だ。
何かを抱きしめて眠ると安心するらしい。


と、いうより、私を抱きしめて眠ることに慣れ過ぎて、何かを抱きしめていないと眠れないらしい。
全く、いつまで経っても可愛い奴だ。
咲夜は小さく笑う。


「咲夜姉さま・・・?」
どうやらルキアも帰ってきたらしい。
私が処理した書類を整理してから帰ってきたのだろう。
「ルキア。・・・茶羅も居るのか。」
咲夜が起き上がると、ルキアの隣には茶羅が居た。


「えぇ。深冬のことが心配で、様子を見に来てみたのですけれど・・・。」
茶羅はそう言って青藍と深冬を見る。
「ふふ。ご覧の通りだ。もう、心配なさそうだな。こんなに安心した顔をしている。」
「そのようですわ。兄様ったら、なんて穏やかな顔をしているのかしら。」


「深冬もよく眠っている。咲夜姉さまと眠っている時は、すぐに人の気配に気が付くのだが。」
呆れたように言った茶羅に、ルキアは苦笑しながら言う。
「これでお互い無自覚なのだから面白いわ。」
「ふふ。そうだな。一体いつになったら気が付くのやら。」
茶羅と咲夜はおかしそうに笑いあう。


「静かにしないと起こしてしまいますよ。」
そんな二人を見て、ルキアは静かに言う。
「あはは。確かにそうだ。こんなにまじまじと寝顔を見られていたと知ったら、青藍は拗ねてしまうな。では、私たちも一眠りするか。」
咲夜は悪戯っぽく笑う。


「ふふ。そうですわね。私、毛布を持ってきますわ。」
「では、私も行こう。」
茶羅とルキアはそう言って動き出す。
「あぁ。頼んだぞ。」

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