色彩
■ 35.お互いに動揺

初めて見る深冬の微笑みに、青藍の目が釘付けになる。
そして、自分の顔が熱くなるのを感じて、深冬の肩に額を乗せた。
「青藍?」
そんな青藍に深冬は首を傾げた。


・・・可愛い。
可愛すぎる。
なんだこれは。
僕の心臓を止める気なのか。
吃驚するから、突然笑うのはやめてほしい・・・。
あぁ、もう、僕、駄目な奴だ・・・。


「青藍、どうしたのだ?」
再度問われて、青藍はそのまま答える。
『・・・お礼なんて、いらないんだ。僕は、僕のために君を助けたのだから。きっと、僕は何度だって君を助けに行くだろう。だから、いいんだ。君のその顔が見られるならば、僕は何だってするよ。』


我ながら情けない声だ。
しかもなんか余計なことまで口走っている。
恥ずかしくて顔を上げることも出来ない。
思考が滅茶苦茶だ。
僕、これから先、大丈夫かな・・・。


そんな時、青藍の頭に深冬の腕が回された。
青藍の頭を深冬が抱きかかえるような格好だ。
そして深冬は青藍の頭を撫でる。
深冬の行動に青藍はさらに冷静さをなくす。


『み、ふゆ?』
「・・・こうすると、小さな青藍は落ち着いたと、咲夜様が言っていた。」
母上!!!!????
何余計なことを話してくれているのですか!?
嬉しいやら悲しいやら、恥ずかしいやら情けないやら・・・。


つまり、僕は今、深冬から見ても落ち着いていないということか!
うわ、それは大変だ。
これじゃあ、僕、完全に駄目な奴だ。
『・・・僕、今、そんなに取り乱して見える?』
「あぁ。わずかだが、霊圧が揺らいでいるぞ。何故かはわからないが、とりあえずこうしておくから、落ち着け。」
恐る恐る聞いた青藍に、深冬は何でもない事のように答えた。


『なにそれ・・・。僕、かっこわるい・・・。』
これじゃあ、どっちが慰められているのか、解らないじゃないか・・・。
とりあえず落ち着け、僕。
僕は朽木青藍で、朽木家次期当主だ。
それで六番隊の第三席。
簡単に取り乱しては駄目だ。


・・・よし。
うん。
きっとこれで、大丈夫。
「青藍は、格好いいぞ。」
・・・大丈夫じゃなかった。
深冬の言葉に、青藍は再び冷静さを失う。


「朽木家次期当主として、いつも凛と前を見ている。六番隊の第三席として、隊士を率いている。それだけでも大変なのに、私のことまで引き受けてくれた。たまに本当に阿呆な奴だと思うこともあるが、私は、そんな青藍の姿が、格好いいと思う。」
そんな深冬の言葉に、青藍は思わず彼女の背中に腕を回す。
「それから・・・。」


『それから?』
「私は青藍の手が好きだ。父様や白哉様たちの手も温かくて好きだが、青藍の手が一番好きだ。青藍は優しくないが、優しい奴だ。青藍の手は、優しい。」
『・・・今僕の頭を撫でている深冬の手の方が優しい。』
青藍はそう言われた嬉しさを隠して、拗ねたように言う。


「そうか?・・・それで、私は青藍の瞳も好きだ。青色の瞳も、藍色の瞳も、私のお気に入りの色だ。」
『そうなの?』
「あぁ。初めて見たときから、綺麗だと思った。左右で瞳の色が違うというのは珍しいが、青藍にはぴったりだ。その瞳が真っ直ぐ私を見る。私の瞳を真っ直ぐに見てくれるのだ。」
深冬の嬉しげな声に、青藍の口元が緩んだ。


『それは、君の方だ。僕は君の瞳が、とても綺麗だと思う。宝石のように輝いて、凛とした瞳が、僕は好きだ。相手にどんなに目を逸らされようと、相手を真っ直ぐに見つめる君の瞳は強くて、その紅色の瞳が、柔らかくなる瞬間が、とても好きだ。』
青藍は柔らかな声で言う。


言われて、深冬は戸惑った。
何だか、恥ずかしいのは、何故なのだ・・・?
今、青藍に顔を見られるのは、駄目な気がする。
そう思って深冬は青藍を抱きしめる手に力を入れる。


「・・・青藍。」
『ん?』
「・・・もう少し、このままだ。」
そう言われて、青藍は首を傾げたようだった。
しかし、何かを感じ取ったのか、深冬の腕の中で青藍は小さく頷く。


『うん・・・。僕もその方がいいかも。』
「そうか。」
そうして、互いに落ち着くまで、暫く無言で抱き合っていたのだった。

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