色彩
■ 29.姫の奪還

『もう一度言うよ。深冬を返して頂けるかな。深冬は朽木家の大事な預かりものなんだ。女の子を攫うような人に、深冬を渡すわけにはいかない。』
青藍は伝令神機のようなものを取り出しながらいう。
それを聞いて、西園寺は顔を青褪めさせた。


「攫う・・・?」
青藍の言葉に、豪紀は首を傾げる。
『どうやら、貴方は流魂街の小さな女の子を次々と攫っているらしいね。そして、邸に連れ込んでいるらしい。』
青藍は静かに言った。


「な!?ど、何処にそんな証拠があるのだ!!!」
『貴方の邸に居る女の子と、流魂街で行方不明になった女の子が一致した。朽木家の情報網をあまり見縊らないことだよ。さて、次々と情報が集まっているようだけれど、どうしようか?』
青藍は楽しげに微笑む。


それをみて、西園寺は邸の方へと足を向けた。
『何処へ行くのかな?』
しかし、青藍は瞬歩でその行く手を阻む。
『前から、流魂街で女の子が居なくなる、という話があってね。六番隊にその調査の依頼が来ていたんだ。明日にでも出かけるつもりだったけど、その必要はなくなったようだ。勘が当たってラッキーだったよ。』


「お前、最初から、それを狙ってここに来たんじゃないだろうな・・・。」
青藍の言葉に、豪紀は疑いの目を向ける。
『あはは。こっちはついでだよ。深冬を取り戻すことが第一さ。・・・という訳で、早く深冬を返してくれるかな。いつまで彼女を抱えているつもりだい?まだ放さないというのなら、僕は力づくでも深冬を取り戻すけれど。』


「・・・くそ。」
青藍に言われて、そう呟くと、西園寺は深冬を地面に降ろす。
そして、指笛を吹いた。
ピィー!
その音が響き渡ると、何処からか十数人の黒装束が現れる。


『・・・はぁ。また面倒なことをしてくれるねぇ。全く、見縊られたものだよ。本当に。ねぇ、加賀美君。』
青藍は面倒そうに言うと、攻撃に備えて重心を低くする。
「そうだな。本当に、面倒なことだ。」
同じく構えながら、豪紀は頷く。


『白刃は、深冬と西園寺から目を離さないでね。その人が逃げたら追いかけること。と、いうより、捕まえちゃってね。』
「はーい!」
『じゃ、片付けますか。』
青藍がそう言うと、二人は動き出した。


「なん、だと・・・?」
一瞬で崩れ落ちた黒装束たちを見て、西園寺は唖然とする。
青藍は崩れ落ちた彼らに縛道をかけて、身動きが出来ないようにしている。
「席官相手に、この程度の奴らが通用すると思ったのか?」
豪紀もまた縛道を施しながら、面倒そうに言う。
青藍は伝令神機を取り出して、白哉に連絡を取り始めた。


『・・・あ、青藍です。今ちょっと、例の噂の犯人を見つけまして。・・・えぇ。そうです。・・・いや、それは偶然だったのですが、深冬のお見合い相手でして・・・。深冬が攫われている、という情報があったので来てみただけなのですが・・・。』
その間に逃げようとする西園寺を青藍は見逃さなかった。


『縛道の六十一、六杖光牢!』
あっという間に、西園寺は捕えられる。
それを見た豪紀は深冬に駆け寄った。

『・・・いえ、すみません。ちょっと逃げようとしていたので。・・・はい。では、隊士を数人派遣してください。主犯とその共犯者を捕まえておきますので。場所は・・・です。えぇ。よろしくお願いいたします。』
青藍はそう言って電話を切ると、西園寺に向き直る。
そんな青藍に、西園寺は小さく悲鳴を上げた。


『さて、これで時期に護廷隊が到着するでしょう。貴方は法によって裁かれる。流魂街の民を攫っていたのですから。それに、邸の中で彼女たちに何をしていたのやら。まぁ、その辺は、聞くのも不愉快なので、刑軍の方にこってりと絞られてくださいね。』
青藍は楽しげに言った。


『・・・それで、加賀美君。深冬の様子は?』
「気を失っているだけだ。首筋に手刀を入れられた跡がある。」
そういいつつも、豪紀は深冬に触れようとはしない。
『そう。では、僕が代わろう。君は、白刃と一緒に西園寺たちを見張っていてくれ。』
それを見た青藍はそう言って深冬に近付く。


「あぁ。頼む。」
豪紀は入れ替わるようにして、西園寺の方へと向かった。
『・・・触れても平気なのに。頭を撫でてあげると、喜ぶのになぁ。』
青藍はそんなことを呟きながら、深冬を抱き上げると、首筋に浮かび上がった跡を鬼道で治していく。

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