色彩
■ 28.返して頂く

隊舎を飛び出した二人は白刃を追いかけて瀞霊廷内を駆け抜ける。
二人の組み合わせと急いでいる様子に、すれ違う隊士たちは首を傾げた。
しかし、二人はそんなことを気にすることなく白刃を追った。


『・・・深冬の霊圧を感じないね。』
走りながら青藍は呟く。
「確かに。気絶させられているのか?」
『さて。それならそれで、相手には痛い目に遭ってもらわないとなぁ。』
青藍は楽しげに言う。


「お前、本当にアレな奴だな・・・。」
豪紀は呆れたように言った。
『ふふ。当然。』
「それで、どうやって助けるつもりだ?」
豪紀は青藍を横目で見ながら問う。


『どうもこうもないさ。向こうが攫った以上、こちらがどんな手を使おうと、構わないだろう?』
青藍は相変わらず楽しげだ。
「・・・確かにそうだ。だが、俺もお前も斬魄刀は持ってきていないぞ。」
『まぁ、鬼道だけでも十分だよ。白刃と黒刃も居るしね。』


あとで、どちらかに鳴神を持ってきてもらえばいい。
青藍は内心で呟く。
「そうか。あれは本当に頼りにしていいんだろうな?」
豪紀は前を走る白刃を見ながら言う。


『うん。あの子たちは、母上と同じことが出来るからね。母上が二人いるようなものだよ。』
「相変わらず、お前の母親は訳が分からない。」
『あはは。確かにそうだ。・・・さて、そろそろ着くね。準備はいいかい?』
「あぁ。」


二人が駆けつけると、相手は姿の見えない敵に苦戦しているようだった。
それを見て、青藍は黒刃に斬魄刀を持ってくるように命じる。
現れた豪紀を見て、西園寺は目を丸くした。
「な、何故、ここに貴方が!?」
その腕の中には気を失っていると思われる深冬が抱えられている。


「妹を迎えに来た。深冬は返して頂く。」
そんな西園寺を一瞥して、豪紀は静かに言う。
「何!?この見合いには、加賀美のご当主の了承があるのですぞ!」
「それは深冬との見合いを了承したに過ぎない。婚約するかどうかの、確約はしていない。」


「だが、深冬姫から了承の返事を頂いた!」
豪紀に言われて、西園寺はそう叫ぶ。
「では、何故深冬を攫うような真似をする?深冬が望んだのならば、深冬が貴方に抱えられている理由は何だ。」
あくまで冷静に豪紀は問う。
それを見て、青藍は内心驚いた。


加賀美君って、怒っても冷静なんだなぁ。
僕も見習った方がいいかも・・・。
「それは・・・それは、深冬殿が酒に酔われたからだ。」
『「それはない。」』
苦し紛れの言い訳に、青藍と豪紀の声が重なる。
「な、何!?」


『その子には、念のため、酒に酔わないように、ある薬を持たせている。酒が出る席に行くときには必ず飲むように、と。だから、深冬が酒に酔って気を失うはずがない。』
青藍は凛と言い放つ。
「お、お前は誰だ!?」
そんな青藍の姿を見て、西園寺は気圧されたように言う。


『僕?僕は朽木青藍。僕の顔に、見覚えがない?』
「く、朽木、だと・・・?」
名乗った青藍を恐ろしいものを見るように見つめる。
『そう。僕は朽木青藍だ。六番隊第三席。・・・朽木家次期当主だ、と言った方がいいかな?』


「な・・・。」
「一応言っておくが、本物だからな。容赦のない奴だから、気を付けた方がいい。」
『あはは。そうかなぁ。僕、世間一般には優しい人で通っているのだけれど。』
豪紀の言葉に青藍は笑いながら言う。


「世間一般には、の話だろう。」
そんな青藍に豪紀は呆れたように言った。
『まぁ、否定はしないけどね。・・・とりあえず、深冬をこちらに渡してくれるかな。』
青藍は真っ直ぐに西園寺を見つめながら言う。


「い、いくら朽木家の方と言えど、婚姻について口出しをするのは掟破りですぞ!」
青藍に気圧されつつも、西園寺は深冬を手放す気はないらしい。
『そうかなぁ。ねぇ、加賀美君。僕って部外者?』
「部外者、と言い切るには、お前と深冬は関わりすぎている。」


『だよねぇ。ねぇ、西園寺殿、と、言ったよね?これは、ちょっと秘密の話。深冬が今、どこにいるか、知っているかい?』
青藍は楽しげに言う。
「そんなもの、加賀美家に決まっているだろう!」


『ふふ。それが、そうではないんだよね。色々と事情があって、今、深冬は朽木家が加賀美家から預かっているのさ。その子を朽木家が預かっているということは、僕はその子の保護者の一員でもあるということだ。』
青藍の言葉に、西園寺は目を見開く。

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