色彩
■ 27.お姫様の救出

『では、為人は?』
青藍の問いに、またもや豪紀は複雑そうな顔をする。
「・・・これは、噂だが。」
豪紀は声を潜める。
「西園寺は、深冬ぐらいの娘を邸の中に何人も囲っているそうだ。」


『それはつまり・・・幼女趣味?』
「・・・まぁ、そうなるだろうな。」
『それは駄目だ!絶対に駄目だ!僕が許さない。』
豪紀の答えに青藍は叫ぶ。
五番隊の隊士たちの注目を集めているが、気にならないらしい。


「だが、これは家に関することだ。いくらお前でも、そう簡単に口出しできることじゃない。今でも変わらず、表向きは加賀美家が彼奴の保護者なんだからな。」
『それは・・・そうなのだけれども。』
豪紀に言われて、青藍は拗ねたように言う。


「深冬には断ってもいいと言ってある。確かに家のためにはなるが、簡単にその辺の奴にやれば、後々面倒になることも考えられるからな。だから一応伴もつけさせた。」
『いい判断だね。まぁ、護衛は黒刃が付いているから問題ないとして・・・。』
「黒刃?」
青藍の呟きに、豪紀は首を傾げる。


『あぁ、言ってなかったっけ。黒刃というのは漣家の式神だ。もう一人、白刃というのも居る。・・・おいで、白刃。』
青藍に言われて、白刃が姿を現した。
「な!?」
突然姿を現した白刃に加賀美は目を丸くする。


『これが白刃だ。黒刃はこれの黒いバージョンと考えてくれればいい。』
青藍はそう言って白刃の頭を撫でる。
「こんな小さいのに、護衛が務まるのか?」
嬉しそうに撫でられている白刃をまじまじと見つめながら、豪紀は言った。


『うん。ちゃんと大人の姿にもなるからね。このサイズで居るのは、この方が色々と便利だから。これでも僕より強いから安心していいよ。』
青藍はそう言って微笑む。
「は・・・?これが・・・?」
青藍の言葉に、豪紀は信じられないという顔をする。


『うん。漣家の式神だからね。そのくらい、訳ないのさ。』
まぁ、母上の斬魄刀だけどね。
青藍は内心で呟く。
そんな時、白刃が首を傾げた。


「・・・青藍。」
『ん?どうしたの?』
「黒刃が、移動してる。」
『移動?』
白刃の言葉に青藍は首を傾げる。
「うん。走って追いかけているみたい。」


『え・・・?それは深冬を、ってこと?』
「そうだよ。・・・深冬が、攫われているって。」
『「!?」』
白刃の言葉に、二人は言葉を無くす。


『・・・それは、どういうこと?』
「見合い相手が深冬を攫って邸に連れ込もうとしている。力ずくで取り返すことも出来るけど、どうする?」
白刃はそう言って青藍を見上げる。


『それは・・・。』
そこまで言って青藍は豪紀を見た。
「・・・攫ったということは、深冬は断ったと考えるのが妥当だろうな。」
『だろうね。加賀美君、どうする?助けるならば、手を貸そう。』
「・・・頼む。」


『解った。白刃、黒刃に足止めするように言っておいて。絶対に、相手の邸の中に入れてはならないよ。婚約が成立してしまうからね。今から、僕ら二人もそこに行く。白刃、黒刃の所まで案内できるね?』
「うん!」


『という訳で、そこで聞き耳を立てていた、玲奈さん。加賀美君をお借りしますね。加賀美君のお仕事、よろしくお願いします。』
青藍は豪紀の隣で仕事をしていた玲奈に、にっこりと微笑んでそう言った。
ついでに、豪紀の机から書類の束を持ち上げると、玲奈の机の上に置く。


「え?ちょっと!?」
「六席、すみませんが、よろしくお願いします。」
目を丸くした玲奈に、豪紀はそう言って頭を下げる。
『すみません、玲奈さん。緊急事態なもので。後で美味しいごはん奢りますから、許してくださいね。まぁ、簪とかが欲しいならそれでもいいですけど。』


「青藍様!?ちょっと、加賀美君もどこに行くのよ!?」
『お姫様の救出、と言ったところですかね。・・・行くよ、加賀美君。』
「あぁ。」
そういって二人は白刃と共に姿を消した。
その後五番隊舎に玲奈の叫び声が響いたという。

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