色彩
■ 26.お見合い

そんなある日。
ある話を聞いて、青藍は五番隊に駆け込んだ。
『加賀美君!居る!?』
「なんやねん。騒がしいのう。」
焦ったように執務室にやってきた青藍に真子は面倒そうに言う。


『あ、真子さん、お疲れ様です。・・・じゃなくて!加賀美君!居ます!?』
「そこに居るやろ。何や、お前ら知り合いか?」
『えー、知らないんですか、真子さん。僕と加賀美君は同期で仲良しなんですよ?』
青藍の言葉に、豪紀は顔を顰める。


「・・・その割には、アイツの顔、めっちゃ嫌そうやけどな。」
それを見て真子は胡散臭そうに青藍を見る。
『そうですか?いつもあんな顔ですよ。』
「それ、嫌われてんちゃうか・・・?」
真子は可哀そうなものを見る目で青藍を見た。


『僕が仲良しと言えば仲良しなんです!』
「我が儘なやっちゃのう。・・・お前も大変やなぁ。こいつ、滅茶苦茶やろ?」
豪紀に同情の視線を向けながら、真子は言う。
「えぇ。五月蝿くて申し訳ありません。」
そんな真子に豪紀は軽く頭を下げた。


「別にお前が謝ることやないやろ。昔はえらい可愛かったのに、どうしてこうなってしもたんやろなぁ。甘やかしすぎなんとちゃうか・・・。」
真子はそう言ってため息を吐く。


『五月蝿いですよ、真子さん。真子さんも僕を甘やかしたうちの一人でしょう!・・・それより!!加賀美君、深冬がお見合いに行ったって本当!?』
青藍は豪紀の机に手を付いて乗り出すように聞いた。
「・・・そうだな。」
聞かれて豪紀は迷惑そうに答える。


『何だって!!!しかも相手は僕らなんかよりもずっと年上だって言うじゃない!なんで!?納得がいかない!』
「俺の父親が決めたことだ。大体、何故お前がそれを知っている。」
『十四郎殿から聞いたのさ!あんなに可愛い子をおじさんの元に送り込むなんて・・・。』
青藍は悔しげに豪紀の机を叩く。


「見合いぐらい普通のことだろう。いちいち騒ぐなよ。邪魔だから早く帰れよ。お前だって暇じゃないだろう。仕事はどうした・・・。」
豪紀は呆れたように言った。
『そんなもの、こっそり、父上と橙晴の机の上に置いてきたに決まっているじゃないか!』
青藍は堂々と言い放つ。


「堂々と言うことちゃうやろ・・・。」
「仕事しろよ・・・。」
そんな青藍に真子と豪紀は呆れたように言う。
『いいんです。お互い様ってやつですよ。父上はすぐに僕らに仕事を任せて母上攫って行くし、橙晴は茶羅が勝手に連れ出しちゃうし。だから、僕だってたまにはいいんです!』


「六番隊、ほんまに大丈夫なんかいな・・・。自由すぎるやろ。」
『いいんですよ。恋次さんや他の席官たちだって居るんですから。最悪母上に手伝わせれば、半日で三日分の仕事が終わりますし。だから、一日ぐらい僕がサボったって問題ありません!』
青藍は悪びれもなく言う。


「・・・はぁ。」
それを見て、豪紀は大きなため息を吐いた。
「朽木家、実はアホやろ・・・。付き合ってられへんわ・・・。」
真子は呆れた顔をして、隊主室へ戻っていく。


『まぁ、それはそれとして、ここからは真面目な話。・・・加賀美家はこの縁談を望んでいるのかい?』
真顔になった青藍は声を潜めて、豪紀にそんな問いをする。
「深冬を行かせたぐらいだ。全く望んでいないとは言えないな。」
豪紀は複雑そうに言う。


『ふぅん?では、深冬の兄としては?』
「・・・。」
青藍の問いに、豪紀は沈黙する。
その沈黙に、青藍は納得したように頷く。


『・・・なるほどね。相手は一体どんな方なんだい?西園寺家の当主なのだろう?』
「なぜそこまで知っているんだ・・・。」
『十四郎殿が聞き出してくれたんだ。まぁ、朽木家の情報網にも今詳しく調べてもらっているけれど。』


「・・・はぁ。貴族としては中流、と言ったところだ。だが、手広く商売をやっているせいか、色々な貴族との繋がりがある。」
『加賀美家は、その繋がりが欲しい、という訳だね。』
「まぁな。」

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