色彩
■ 25.良い女

「・・・青藍?その様子だと、まだまだ隠し事があるみたいね?」
微笑む青藍に、雪乃は呆れたように言う。
『あはは。まぁね。でも、世の中知らない方がいいこともある。』
「つまり、私たちに話すつもりはないという訳ね?」
『そうだね。今はそれを話す必要がない。必要になれば、雪乃たちにも話すよ。まぁ、そんな時はやってこない方がいいけれど。』


「・・・そう。じゃあ、無理に聞くことはしないわ。その方が私は安全な気がするもの。」
『ふふ。流石雪乃だ。正しい答えだね。』
「馬鹿にしないで。私たちを信じる、といった貴方が、隠し事をしているのよ?それだけ重大なことなのよね?話せば私たちが危険な目に遭う、若しくは重荷を背負うことになるから話さないのでしょう?貴方、本当は霊妃様のことだって私たちに話したくなかったのよね?その存在を知っているだけで霊王宮との関わりが出来てしまうから。」
『あはは。そうだね。』


「・・・なるほど。青藍の友人はなかなか出来た人物のようだ。」
二人の会話を聞いていた安曇はそんなことを呟く。
『ふふ。自慢の友人ですよ。それに、彼女は深冬の友人でもあります。』
「そうか。それは感謝する。あれは、私に似ているからな。あまり友人が出来る質ではなかろう。」
安曇は困ったように言う。


「そんなことはありませんわ。あの子、話せばいい子ですもの。確かに見た目は他と違いますけれど、見た目なんて些細なことです。私は、あの子の瞳が好きですもの。」
雪乃の答えに安曇の瞳が柔らかくなる。
「そうか。そなたは良い女だ。」
安曇に微笑みながら言われて、雪乃は思わず顔を赤くする。


「ふふ。愛いのう。」
それを見て、安曇は楽しげに微笑む。
・・・どうして青藍の周りって、こういう殿方ばかりなのかしら。
雪乃は内心で呟く。
でも、この人、青藍とは反対の人ね。
青藍は普段微笑んでいる分、怒って無表情になった時、とても恐ろしい。


この人は、普段無表情な分、笑った時にとっても柔らかく見えるんだわ。
朽木隊長もそうだけれど、安曇様の場合はその容姿が人形みたいな分、余計ずるいのよ。
全く、これで私の十倍くらい生きているというのだから、霊王宮って詐欺だわ。
雪乃は顔を赤くしたまま恨めしげに安曇を見る。


「そう膨れるな。ほれ、この苺をやろう。」
安曇はそう言うと苺をつまんで雪乃の口元へ運ぶ。
「む!?」
そして問答無用で口に押し付けた。
思わず雪乃は口を開く。


入ってきた苺を噛むと、甘酸っぱさが口の中を満たす。
もぐもぐと苺を咀嚼する雪乃に、安曇は満足そうに微笑んだ。
「美味かろう?」
そういいつつ、安曇は指についた生クリームを舌で舐めとる。
その姿が、何となく卑猥で、雪乃は目を逸らした。


この人、やっぱり凄くずるい人だわ・・・。
雪乃は内心で呟く。
そんな雪乃の心情を知ってか知らずか、青藍はそのやり取りを面白そうに見ているのだった。

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