色彩
■ 24.愛し子は厄介

三人がやってきたのは、六番隊の第三書庫である。
人が立ち入ることはほぼないが、青藍の秘密のお昼寝場所であるため、そこそこ綺麗にされていた。
昼寝用の長椅子と、それに合わせたテーブルまである。
それから枕や薄掛けなどもあり、書庫の一角は青藍の私物で溢れている。


誰かが入ってきても、その場所は本棚と窓に囲まれているため、滅多なことでは気づかれることがない。
気付かれたとしても、窓から脱出できる。
勿論、青藍がそうなるように本棚を動かしたのだが。
そんなわけで秘密の話にはもってこいの場所だった。


「・・・隊舎を私物化するのはどうかと思うわ。」
その一角に入って、雪乃は呆れつつも、椅子に座る。
『ほとんど使われていないのだからいいじゃない。最近、その辺で昼寝も出来なくて。』
雪乃の言葉に青藍は笑いながら答えた。


「ふむ。なかなかいい場所だ。」
ぐるりと一周見回して、安曇はそんなことを言う。
『あはは。気に入って頂けたのなら良かったです。どうぞ、お座りください。』
青藍に言われて、安曇は雪乃の向かい側に腰掛ける。
青藍もまた、雪乃の隣に座った。


『安曇様、約束のものです。どうぞ、お召し上がりください。』
そう言って青藍はケーキを取り出して、安曇の目の前に置いた。
「ほう。これを全て私がもらってもいいのだな?」
ケーキの箱を開けて、安曇は目を輝かせる。


『もちろん。すぐにお召し上がりになるのでしたら、フォークなどもご用意できますが。』
青藍はそういって何処からかフォークを取り出した。
「頂こう。」
それを受け取ると、安曇は嬉しそうにケーキを頬張り始める。


『・・・如何ですか?』
「うむ。美味い。」
『それは良かった。』
安曇の言葉に青藍は微笑んで、雪乃に事情を話し始める。


『・・・と、いう訳で、今、深冬は朽木家が預かっているんだ。もちろん、深冬のお父様である安曇様も了承している。』
「なるほど。そう言うことなのね。そして、この方はとっても偉い人ってわけ?」
話を聞いて頷くと、雪乃は未だにケーキを頬張っている安曇に目を向ける。


『あはは。まぁ、そうだね。霊王宮では十五夜様の次くらいに偉いらしいよ。』
「そうはいっても、私は日々の雑務はやらない。儀式や祭典の時に顔を出すだけだ。実際は地位ほど力を持たない。十五夜は色々と雑用を任されているようだがな。」
安曇は面倒そうに言う。


『ふふ。ご謙遜を。それがどれほど重要か、知らない安曇様ではないでしょうに。』
そんな安曇に青藍は微笑む。
「・・・まったく、そなたは何処まで知っているのやら。末恐ろしいことだ。」
青藍の微笑みを見て安曇は呆れたように言う。


『それは、まぁ、僕には霊妃様がいらっしゃいますからね。色々とお話をしていただいておりますよ。』
「霊妃にも困ったものだ。いくら愛し子とはいえ、何処までも話してしまうとは。」
『まさか。いつも霊妃様からお答えいただけるわけではありません。あの方は、気が向いたときでなければ、お話ししてくださらない。』


「・・・好奇心は猫をも殺すぞ。」
楽しげに言う青藍を横目で見つつ、安曇は言う。
『えぇ。解っております。ほどほどにしなければ、霊王様に叱られてしまいますからね。その辺の分は弁えているつもりです。』
「全く、霊妃もわざわざこんな厄介な者を愛し子にしなくても・・・。」
『あはは。それは僕に言われても困ります。』

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