■ 9.脅し・・・?
「・・・つまり、私は何だか知らないうちに青藍に巻き込まれている?」
『あはは・・・。まぁ、そうともいうかな。』
深冬の問いに青藍は苦笑する。
『そうはいっても、僕はそうならないために力を尽くすつもりだ。だから、できれば深冬には僕の目の届くところに居て欲しい。本当は霊王宮に居るのが良いのかもしれないけど、先ほどの話を聞く限り、そうもいかないらしいから。』
青藍はそう言って安曇を見る。
「そこまで自覚しているならば、深冬を利用しようなどと考えることはないだろう。深冬を、頼んでもいいだろうか。深冬より大きなものを背負っているそなたに、そんなことを頼むのは酷だと解っているのだが。」
『ふふ。別にいいですよ。そういう覚悟は既に決めていますからね。それに、深冬と霊妃様の繋がりが明確になった以上、霊妃様を守ることと、深冬を守ることは同義です。ね、父上?』
「そうだな。霊妃の愛し子と、霊妃の末裔が出会ったのも、そういう縁なのだろう。霊妃の巫女である咲夜と、愛し子と、末裔か。どうやら朽木家は、霊妃とは縁があるらしい。」
白哉は苦笑する。
「これからの朽木家は大変だなぁ。」
十五夜は暢気にそんなことを言う。
『十五夜様も、他人事ではありませんよ。霊妃様を始めとして色々護るためには、十五夜様を始めとした漣家のお力も必要ですからね。僕らが呼びだしたらすぐに来てもらわなければ困るのですから。』
「そうだな。死ぬほどこき使ってやろう。」
白哉は楽しげに言う。
「あはは。僕は君たちの便利屋じゃないんだよ・・・。」
十五夜はそう言って苦笑する。
『十五夜様なら大丈夫ですよ。なんて言ったって、霊王様の筆頭家臣ですからね。頼りにしていますよ、十五夜様。もちろん、安曇様にもご協力いただきますからね。』
「私も?」
『当然です。貴方の大切な娘を守るのですから、そのくらいわけないですよね?』
青藍は笑顔で言う。
「・・・わかった。力を尽くす。だが、私を使うよりも、十五夜を使った方が便利だぞ。私は立場上、そう身軽ではないのだ。」
『あはは。まぁ、そうかもしれませんね。ですが、味方は多い方がいいので。貴方が敵に回っても、深冬を人質にして、貴方の力を貸していただきますから。そんなことにならないように、僕の敵になったりしないでくださいね。』
そんな恐ろしいことを青藍はなおも笑顔で言った。
「・・・解っている。」
それに気圧されたように安曇は頷いた。
「・・・霊王宮の者を脅すなんて、流石青藍だよね。祭儀長官と言っても、僕の次くらいには偉いのに。だから青藍は怖いんだよ。」
「そうだな。」
十五夜と白哉はそう言って頷き合った。
「それで、とりあえず、深冬は加賀美家に預けたまま、ということでいいのかな?」
「私は構わぬ。」
十五夜の言葉に安曇は頷く。
『深冬は?さっきの話を聞く限り、あまり加賀美家が好きな感じではなかったけれど。』
「私は・・・私にはそれを決める権利がない。当主様と豪紀様に相談するしかない。朽木家は私の正体を知っていると。」
『確かにそれは必要だね。でも、霊妃様のことは一応伏せて話してくれるとありがたいのだけれど。それで朽木家は君の正体を隠すことに協力すると伝えておいてくれ。』
「解った。」
『まぁ、加賀美家が嫌になったら、僕が深冬を攫ってあげるよ。』
青藍は笑顔でさらっとそんなことを言う。
「「「!!!???」」」
白哉以外の三人はその言葉に目を見開いた。
ちなみに白哉は思わず額に手を当てたのだが。
「・・・朽木白哉。」
恐る恐ると言ったように、安曇が白哉に声を掛ける。
「なんだ?」
「そなたの息子は本気なのか・・・?」
「それが分かったら、私はこんなに苦労していない・・・。」
白哉は疲れたように答える。
「攫うというのは、つまり、深冬を嫁にするということだろう?」
「そうなるのだろうな。」
「それは、確かに深冬は安全になるだろうが・・・。いや、むしろ危険なのか?義理とはいえ、あれが私の息子になるのか・・・?今さっき私を脅した奴だぞ・・・?」
安曇は混乱したように言う。
「・・・白哉、あれが本気だったら君はどうするのかな?」
十五夜は青藍に聞こえない程度の声で白哉に聞いた。
「・・・残念ながらその辺のことについて、私は強く言えない。」
気まずそうに白哉はそう答える。
「なるほど。そう言えば君も無茶をしたクチだったね。」
「五月蝿いぞ。」
楽しげに言った十五夜を横目で睨んで、白哉は呟く。
「青藍が自分でそう決めたなら何も言わぬ。養子とはいえ、加賀美家は上流貴族だ。その上、父親が霊王宮の者では、朽木家の家臣もそう反対はしないだろう。」
「へぇ?相手があんなに小さくても?」
「婚約は許す。結婚は流石にもっと育ってからだ。今から手を出せば、色々と疑う。」
「あはは。確かにそうだね。」
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