色彩
■ 7.狸寝入り

「・・・と、いうわけだよ。そこの二人、起きているのだろう?いい加減狸寝入りはやめなさい。」
十五夜は苦笑しつつ青藍と深冬を見る。
青藍の瞼が開かれて、そこから悪戯な瞳が覗いた。


『あはは・・・。ばれていましたか。』
「まあね。深冬は起きようとしているのに、それを青藍が抑えているんだもの。まったく、君は好奇心が旺盛だ。」


『あらら。そこまで見抜かれているのですね。盗み聞きのようで申し訳ないとは思ったのですが、内容が内容でしたので、聞かせていただきました。・・・ごめんね、深冬。苦しかった?』
青藍はそう言って腕を緩める。


「・・・苦しいに決まっているだろう!青藍の阿呆!大体、何故私のことを知っているのだ!青藍はやっぱり嘘つきだ!知っていて私に近付いたな?」
深冬はそう言って青藍をぐらぐらと揺する。


『うわぁ!?違う!それは違うよ!深冬に知り合ってからそれに気が付いたというか、そう言うことも考えられるなぁ、という程度のことだったんだ。というか、君自身はそのことを知っていたんだね?』


「・・・あぁ。当主様が私に話してくださった。豪紀様も知っている。私のことを知っているのはその三人だけのはずだった。だから・・・誰も、私に触れることなどしなかった。」
深冬はそう言って俯く。
『え?』


「当主様も、豪紀様も、私が霊王宮に仕える者の娘だからと、恐れ多くて触れられないと、そう言って一度も私に触れたことがない。八重様・・・豪紀様のお母様は私のことを嫌っている。たぶん、当主様がどこかで作った子どもだと疑っているのだ。豪紀様の御兄弟も、私には近づかない。その他の人たちだって私のこの目を気味悪がる。」


『そうかなぁ?僕はそう思ったことなんてないけど。』
「それが変なのだ!・・・それに、霊術院では草薙先生がその辺で寝ている私を抱えて医務室に運んで行った。あれも大概訳が分からないが、聞けば、朽木家の医者だという。」
『あはは・・・。』


「そして橙晴は、私に普通に話しかけてきた。話したのはあの現世実習の引率の時が初めてだが、瞳の色や髪の色など関係ないかのように話しかけてきた・・・。」
『見た目など些細なことだよ。隊長格なんて見た目がまともでもそうでない人が沢山いるんだから。十四郎殿だって、大概でしょ?』


「確かにそうだが・・・。でも、一番変なやつなのは青藍だ!私の頭を撫でたり、突然抱き着いてきたり、一体何だというのだ。訳が分からない・・・。やっぱり青藍は変な奴だ。青藍は一番訳が分からない!今のところ一番しっくりきているのは橙晴が言っていた、青藍は阿呆だ、ということだ!」
『え、なんか僕、今、深冬に貶されている・・・?』


「あはは!青藍がこんなに困らされているのは、初めて見たなぁ。」
二人を見て、十五夜は楽しげに笑う。
『十五夜様、笑わないでくださいよ・・・。というか、そこでこっそり笑っているお二人も笑うならせめて思いっきり笑ってくれた方がいいんですけど。震えているのがバレバレです。』
青藍は拗ねたように言った。


白哉と安曇は口元を抑えてその身を小さく震えさせているのだ。
青藍に言われても二人はそのまま笑い続ける。
「おや、これは珍しい。今日は珍しいものを見る日だなぁ。」
十五夜はそう言って笑う。
『・・・何なんですか、皆して。』
青藍はそう言って唇を尖らした。

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