色彩
■ 5.霊王宮祭儀長官

白哉は中々帰ってこない青藍にしびれを切らして、茶羅の元へ向かった。
女性陣のいる部屋を開けると、何故か正座をさせられた姫たちの前で、茶羅が何やら言い聞かせているようだ。
もっとも、生き生きとしているのは茶羅だけで、正座させられている姫たちは青褪めているのだが。
その他の姫たちが遠巻きにその様子を伺っているその光景は異様だ。
まぁ、それはいい。


「茶羅。」
部屋の中には入らずに、白哉は声を掛ける。
「父上!」
それに気が付いて茶羅は白哉の元へ駆け寄った。
「青藍はどうした?」
「青藍兄様なら、深冬を連れて別室に。場所は慶一殿が知っておられるはずですわ。」
「そうか。」


茶羅の言葉に頷いて、白哉はチラリと室内を一瞥する。
・・・これは何かあったのだろう。
大方、あの姫たちが深冬に何かしたのだろうが。
白哉は内心でため息を吐く。
青藍を怒らせるようなことは控えて欲しいものだ。
あれは私などよりも容赦がないのだから。
もちろん、目の前に居る茶羅もだが。


「・・・茶羅、ほどほどにするのだぞ。」
白哉は小さく呟いて、踵を返す。
「解っていますわ。」
茶羅はそんな白哉の心情を知ってか知らずか、楽しげに言ったのだった。


白哉が周防の使用人に案内されて青藍のいる部屋に行くと、二人は柱に凭れ掛かるようにして、寄り添って眠っているようだった。
というより、青藍が膝の上に深冬を抱えているのである。
その寝顔に、白哉は思わず笑みを零す。


このように眠られていては、邪魔をすることもできまい。
内心でそう呟いて、白哉は自分の羽織を彼らに掛けた。
その時、白哉の後ろで突然空間が開き、何者かが現れた気配がする。
この感じは・・・。
白哉はそう思って面倒そうに後ろを振り返った。
そこには予想通りの人物と、もう一人、頭巾を被った見慣れぬ人物がいた。


「・・・十五夜。」
小さな声で白哉が呟くと、十五夜は楽しげに微笑む。
「やぁ、白哉。」
「何をしに来た。」
「僕らの用があるのは、君じゃない。そこに居る、深冬だ。ま、青藍にも用があるけれど。」
十五夜は小さな声でそう言った。


「深冬?」
白哉は首を傾げる。
「青藍から聞いていないかい?深冬は霊妃と関わりがあるのかもしれない、と。」
「それは聞いているが・・・。」
「青藍の言ったことは、まぁ、それなりに正しい。だから僕はこいつを連れてきたわけだ。顔を見せてやれ。」
十五夜に言われて、頭巾を被った人物は、その頭巾を取った。


頭巾を取った瞬間にさらりと長い髪が流れ落ちる。
銀色の髪・・・。
冷たさを感じさせるほどの整った容姿。
そんな男の顔が、頭巾の下から現れる。
そして何より目を引くのが、その男の紅色の瞳だった。
白哉はそれに目を見開く。


「こいつは安曇という。尸魂界を作り、霊王様に仕える赤い瞳の一族だ。そしてその赤い瞳の一族は霊妃の一族。この安曇はその一族を率いるものだよ。」
「霊王宮祭儀長官の安曇だ。十五夜が言ったように、霊妃の一族の長でもある。お初にお目にかかる。」
無表情で淡々とそう言って、安曇は白哉に軽く一礼する。


「お初にお目にかかる。第二十八代朽木家当主、朽木白哉と申す。」
白哉もまたそう言って、礼を返した。
「それで、ここからが本題。その子が何者か、という話だけれど。」
「あぁ。一体何者なのだ?」
「まぁ、見てわかると思うけれど、深冬はその一族の血を引いている。そして・・・。」


「深冬は私の娘だ。」
安曇は淡々という。
「・・・は?」
思わず白哉は固まった。


「あはは!白哉のそんな顔が見られるとは。僕もついて来てよかった。」
そんな白哉を見て、十五夜は楽しげに笑った。
「いや、待て、十五夜。確かに似ているが、それならば、何故この娘はこちらに居る?もともと霊王宮に居る一族なのだろう?」
白哉は困惑したようにいう。


「それはそうなんだけれどね。こいつが一族の掟を破ったというか・・・。」
十五夜は呆れた目線を安曇に送る。
「やかましいぞ、十五夜。別に掟は破っておらぬ。」
安曇は鬱陶しそうに十五夜を睨んだ。
「一族の掟、とは?」
それを見つつ、白哉は問う。

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