色彩
■ 38.雪乃の思考

『ちょっと!?しかもこのまま放置なの!?ねぇ、雪乃!!』
騒ぎながらもついてくる青藍を横目で見つつ、雪乃は考える。
この人、深冬を特別扱いしている自覚がないようね。
何故特別扱いしているのかという理由も含めて。
自覚させたとしても、それはそれで危ない人だわ。
あの子はまだ小さいのだもの。


それなら、自覚させない方がいいのかしら?
いや、でも、すでに十三番隊では深冬を攫うっていう発言をしたらしいじゃない?
というか、咲夜さんと深冬を取り合っている時点で色々と問題よね?
それってつまり、どちらにしろ、危ない人・・・?


でも、自覚させたらさせたでこの人、面倒臭そうなのよね。
やっぱりこのまま見守る方向で行こうかしら。
その方が私は面白いわね。
どうやら咲夜さんもその方向で見守っているようだし。
朽木隊長は、どう思っているのかしら?


聞いた話だと、朽木隊長もちゃっかり深冬を可愛がっている様子なのよねぇ。
あの朽木隊長が頭を撫でたという話じゃない。
橙晴もなんだかんだで深冬のフォローをしているし、茶羅も気になっている様子。
それからもちろん朽木副隊長も、自隊の隊士として浮竹隊長と一緒に可愛がっているという話だわ。


でも、霊妃云々の話が本当なら、深冬は朽木家の近くに居た方が安全ね。
青藍が全力で守るだろうし。
霊妃を降ろせるという咲夜さんだってそれを知ったらそうするはずだわ。
もちろん、朽木隊長もこれを見過ごすことはしないわね。


それを考えると、自覚させてもいいのかしら?
でも、この人絶対に面倒な気がするのよね・・・。
流石にすぐに手を出したりはしないでしょうけど、この様子だと深冬が相当かわいいみたいだわ。


何であの流れから深冬が苛められたら大変だ、という話になったのかを考えると、それだけ深冬が大切だからということになるもの。
残念なことに、本人はそれに気が付いていないようだけれど。
まぁでも、このまま深冬に振り回されている青藍を見るのも悪くないわね。
そんな結論にたどり着いた雪乃は、青藍を見る。


『な、何?まだ何かある・・・?』
先ほど殴られたことを警戒してか、青藍は雪乃から距離をとる。
「いいえ。何もないわ。」
『そう?それで、どうして僕はげんこつされたの?』
「それは自分で考えなさい。私が答えを教えていいものではないわ。」


『どういうこと?』
雪乃の言葉に青藍は首を傾げる。
「そのままの意味よ。貴方みたいな人は一度他人に振り回されればいいのよ。むしろずっと振り回されていろって感じね。その方が私は面白いわ。」


『え?なんか、不吉なことを言われている・・・?』
「そうね。貴方がそのままなら、不吉なことかもしれないわね。」
『それは・・・嫌だなぁ。』
青藍はそう言って眉を下げる。


「何情けない顔をしているのよ。ほんと、これがあの朽木青藍だというのだから、お笑いだわ。」
『何か僕、さっきから貶されているよね・・・?何?雪乃、機嫌悪いの?僕、雪乃に何かした?ねぇ、実は怒っているの?』


「まさか。機嫌はむしろいい方よ。」
これから何やら面白そうなことになるっていうのに、不機嫌なはずないじゃない。
雪乃は内心で呟く。
『そうなの?』
「そうよ。貴方にどれだけの人が騙されているのか考えていたら、自分も騙されている気がして腹が立っただけよ。貴方を殴ったらすっきりしたわ。」


『えぇ!?何それ。僕、騙してなんかないのに・・・。』
「そう?それなら殴って損したわね。手が痛いだけだったわ。」
『ちょっと!?痛いのは僕の方だよ・・・。』
「じゃあね。私、こっちだから。」
雪乃はそう言うとあっという間に去っていく。
取り残された青藍はたんこぶが出来た頭を擦りながら首を傾げたのだった。



2016.08.22 覚悟編 完
〜正体編に続く〜
愛し子である自分の立場を自覚した上で次期当主となった青藍。
今後も色々なことに巻き込まれていきます。


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