「・・・あの子、変わったねぇ。」
青藍とのやり取りを見ていた京楽は、豪紀の背中を見ながら呟く。
『えぇ。僕は相変わらず嫌われていますけどね。』
「それは貴方がわざわざ加賀美君を刺激するようなことを言うからでしょう。」
楽しげに笑いながら言う青藍に、雪乃は呆れたように言った。


『それは雪乃も参加していたじゃない。』
「私はいいのよ。私はもともと加賀美君に嫌われても好かれても居ないもの。」
「あはは。まぁでも、なんだかんだで協力してくれるあたり、案外そうでもないのかもしれないよ？」


『それはどうでしょう。未だに深冬のことについて話してはくれないんですよねぇ。家の中で何があるのやら・・・。』
青藍はそう言って首を傾げる。
「そういえばそうね・・・。私も聞いたのは養子だってことぐらいだわ。それ以上は何も教えてくれなかった。」
雪乃はそう言って思案顔になる。


『そうなんだよ。深冬も話してはくれないし。そのくせ加賀美家はあまり好きではないらしい。加賀美君相手には普通な様子だけれど。』
「それに、あの子が加賀美君を兄と呼ぶのは聞いたことがないの。いつも豪紀様、としか呼ばないのよね。」


「あはは。二人とも気になるのは解るけど、あまり他の家のことに首を突っ込むものじゃないよ。」
『それは、そうなんですけどね・・・。でも、深冬、僕が頭を撫でるまで、誰にも頭を撫でられたことがなかったんですよ？』


「・・・確かにそれは気になるねぇ。」
『ですよねぇ。後で加賀美のご当主にそれとなく聞いてみようかな・・・。』
「・・・まさか、貴方それを聞き出すために、加賀美君と仲が良い振りをしているんじゃないでしょうね？」
雪乃は疑わしげに青藍を見る。


『あはは。』
そんな雪乃に青藍はただ笑った。
「・・・信じられないわ。貴方って人は本当に性格が悪いのね。」
『そうかなぁ。でも、こうやって宴から抜け出すためっていうのも理由の一つだよ？それに、加賀美家はそこそこ優秀な貴族だ。付き合いがあっても損はない。』


「でも、青藍の一番の狙いはそこじゃないってことでしょ？」
京楽は面白そうに言った。
『まぁ、本音を言えば、そうですね。』
「君の狙いは、あの子の正体。」


『ふふふ。流石に察しが早い。・・・そうです。だって、あの紅色の瞳ですよ？雪乃はまだ見たことがないかもしれないけれど、僕は紅色の瞳を持つ人を知っている。霊妃様の瞳は紅色だ。まぁ、黒刃と白刃も紅色の瞳だけど、あの二人は別物だからなぁ。』
「確かに、僕も驚いたよ。本当に紅色なんだね。」


『そして、その他にも、紅色の瞳を持つ人々が出てくるんです。』
「尸魂界を作った人々だね。」
『よく知っていますねぇ、春水殿は。』
「青藍が知っている方が驚きだよ。」
『まぁ、それは色々と。・・・むかしむかし、瞳の赤い人々が、世界を作り、王を迎えた。その王の名は、霊王。瞳の赤い人々は霊王に仕え、霊王に愛された。』


「それはつまり・・・。」
『この、愛された、という部分が霊妃様のことなら、深冬は霊王に使える人の子どもで、さらには霊妃様の一族の末裔か何かなのかもしれない。』
「もちろん、ただの突然変異の可能性もあるけれどね。」


『えぇ。深冬を直接霊妃様に会わせるのが一番手っ取り早いのだけれど、その可能性が捨てきれない以上、それは出来ません。だから、なるべく当事者から聞き出したい。深冬をどういう経緯で養子にしたのか。それから、加賀美家の中で深冬はどういう立場なのか。これはただ僕が心配なだけですが。』
青藍はそう言って苦笑する。


「あはは。まぁ、そう言うことなら、僕もそれとなく加賀美家の者に聞いてみるよ。僕も興味が湧いてきた。」
『そう言うと思いました。では、深冬の養子縁組について少し探ってみてもらえますか？僕はもう少し調べてみます。』
「わかったよ。」

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