色彩
■ 34.退屈しない

「そう言う話を、笑顔でするのはやめてくれるかしら。貴方、本当に性格が悪いわよ?」
またもや雪乃は呆れたように言う。
『ふふ。まぁ、これは僕個人の意見だ。でも、そう考えると、他の隊長格たちの斬魄刀も概ね残酷さを持ち合わせている。隊長になるためには残酷な一面が必要なのかもしれないね。』


「そりゃそうだろう。時に隊長は隊士を見捨てなければならないことがある。」
豪紀は静かに言う。
『そう。隊士の命を天秤にかける。才ある隊士とそうでない隊士、どちらかしか助けられないのなら、隊長たちは前者を選ぶだろう。才能を持つ者はそう多くはないから。』


「なるほどね。じゃあ、私たちが生き残るためには強くなければならないわね。」
『そうだね。でも、隊長の凄いところは自らの判断によって失った命を絶対に忘れないこと。その命を背負うこと。だから僕は隊長たちを尊敬するよ。それを背負ってもなお、真っ直ぐに立って前を向いているのだから。・・・そうでしょう、春水殿。』
青藍はそう言って声を掛けた。


「・・・気付いていたのかい?」
そう言って京楽が柱の陰から出てくる。
『えぇ。まぁ。斬魄刀の話あたりから。どうせ、僕らが隊長の悪口でも言っていると思って盗み聞きしていたのでしょう?』
「あはは。青藍には敵わないねぇ。」


『ふふ。それにしても、春水殿がこんなところに来るなんて、珍しいですねぇ。』
「まぁ、僕にもいろいろあるのさ。・・・ご一緒してもよろしいですか、朽木家次期当主?」
『もちろんです。今なら雪乃のお酌つきですよ。』
「それはいいねぇ。」
青藍の言葉に京楽はにんまりと笑う。


「さらっと私を巻き込むのはやめてくれないかしら。」
『まぁいいじゃないの。春水殿はなんだかんだで女性隊士に人気だからね。いい経験だよ。』
「それはいいのだけれど・・・釈然としないわ。」
「あはは。雪乃ちゃんも大変だねぇ。」
「えぇ。青藍が近くに居ると、いつもこうですもの。」


「あはは。・・・それで、何だか珍しい組み合わせのようだけど。」
『えぇー?知らないんですか?僕と加賀美君は「仲良し」なんですよ?そんな噂があるの、知りません?』
「えぇ!?あれ、事実なの!?」
青藍の言葉に京楽は目を丸くする。


「まさか。そんなはずないでしょう。」
そんな京楽に豪紀はすぐに否定する。
『あはは。相変わらず、はっきりとものをいうよねぇ、君は。』
「なーんだ。じゃあ、仲良しな「ふり」なの?」
『まぁ、そうですね。これはこれでなかなか面白いものです。』
青藍は楽しげに笑う。


「へぇ?ま、僕はどうでもいいけどね。次男坊だから当主とか関係ないし。」
『確かにそうですね。ですが、今僕と同じ席に居るということは、今後色々と他の貴族に絡まれると思いますよ。春水殿にその気がなくても。』
「全く、青藍の近くに居ると、退屈しないねぇ。」
「そうですね。私も青藍のお蔭で日々目まぐるしくて大変ですわ。」


「雪乃ちゃん、女の子たちに絡まれているものねぇ。僕、よく見るよ。」
京楽は楽しげに言う。
「知っているなら何とかしてくださいよ・・・。」
そんな京楽に雪乃は疲れたように言った。
「あはは。だって、僕が手を出すまでもなく、雪乃ちゃんが言い負かすから。惚れ惚れするくらいだよ。」
『あはは。流石雪乃だ。』


「好き勝手言ってくれるものだわ。・・・それより、加賀美君。さっきから見ていると、貴方の妹は相当呑まされているようだけれど。大丈夫なのかしら?」
雪乃は不安げに囲まれている深冬を見る。
「大丈夫だろう。あれも自分で量を解っている。それに・・・。」
言って豪紀は青藍を見る。


「それに?」
『僕が睦月から貰った薬を飲ませているから大丈夫だよ。』
「なるほどね。本当に、睦月さんって流石だわ。」
『ふふ。朽木家の医師なのだからそれくらいできて当然だよ。でも、流石に可哀そうだから助けてあげようか。』


「どうやって?」
『雪乃、舞は出来るよね?』
「・・・私に舞えと?」
『うん。流石雪乃だ。理解が早い。僕が笛を吹いてあげるよ。』
青藍はそう言って袖から笛を取り出す。


「・・・毎回思うのだけれど、貴方のその袖の中はどうなっているのよ。色々と出てくるようだけれど。この前はお菓子が大量に出てきたわよね?」
『ふふふ。それは秘密です。ね、舞ってくれるでしょう?興が乗ったということで。で、注目がこちらに集まったら、春水殿と加賀美君で深冬を連れていく。』


「あはは。解ったよ。僕もあの子には興味がある。浮竹と咲ちゃんが話していたからね。」
「解ったわ。仕方ないわね。」

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