色彩
■ 33.斬魄刀と本性

その日の夜。
青藍は酒宴に参加していた。
隣には雪乃が居る。
「全く、何故私がこんなものに出席しなければいけないのかしら。」
雪乃はそんなことを言いながら料理をつまむ。


『あはは。まぁ、僕を助けると思って。』
「あのねぇ!貴方の隣に居ると、私は他の姫に恨まれるのよ?面倒くさいったらありゃしないんだから。大体、何故加賀美君までここに居るのよ?色々とおかしいわ・・・。」
雪乃はそう言って青藍の隣に居る豪紀を見る。


「俺だって不本意だ・・・。」
豪紀はそう言ってため息を吐く。
『あはは。だって僕ら「仲良し」だからねぇ。』
「じゃあ二人で「仲良く」していればいいじゃないの。私が此処に居る意味、ある?」


『もちろん。雪乃っていう美人さんが近くに居るだけで、他の姫が寄ってこない。』
文句を言う雪乃に青藍はそう言って微笑む。
「貴方たちにはそう言うメリットがあるかもしれないけれど、私は貴方たちの隣に居ていいことなんて一つもないのよ。朽木家の次期当主の隣に居るってだけでも面倒なのに、元婚約者と一緒に居るなんておかしいでしょう。」


『それは問題ないよ。君たちの婚約解消の理由は利害の不一致ってことになっているもの。別に不仲で婚約解消ってわけじゃないのだから、一緒に居たって不思議じゃない。それに、僕ら同期だし。』
しれっとそんなことをいう青藍に雪乃はため息を吐く。


「お父様の口車に乗せられてのこのことやってきた私が馬鹿だったわ・・・。」
『ふふ。まぁ、楽しまなきゃ損だよね。雪乃のお蔭で僕らは平和だ。ね、加賀美君。』
「俺はいつもとそう変わらない。」
『あはは。謙虚だねぇ。君だっていつも姫に囲まれているくせに。』
「お前がそれを言うのか?」
嫌そうに加賀美は言う。


『えー?だって君は上流貴族の加賀美家次期当主だ。そして死神。それも五番隊の席官だ。愛想はないが顔だって悪くない。さらにやどうやら朽木家の次期当主とも仲が良いらしい。・・・これだけ揃って他の貴族が目をつけないとでも?』
「まぁ、そうね。それに、何となく癪だけど、最近の貴方自身の評判も悪くないわ。」
『そうそう。君を狙う姫君は少なくない。』
雪乃の言葉に青藍は楽しげに頷く。


「ま、近づいてくる姫たちには下心があるのでしょうけど。」
「こいつとお近づきになりたい、だろ。そんなことは解っている。」
「そう。貴方を利用して、青藍に近付きたい。そしてあわよくば、青藍の心を射止めたい。」


『ふふ。まぁ、僕は僕の友人を利用して僕に近付いてくるような姫に興味はないけど。』
青藍は笑いながらそんなことをいう。
「相変わらず、女性には手厳しいのね。誰にでも優しいくせに、本心は見せないんだから。」
そんな青藍に、雪乃は呆れたように言った。


『やだなぁ。その言い方だと、僕は優しくない上に嘘つきみたいだ。』
「あら、違うのかしら?」
『少なくとも、今は本心を話しているつもりだよ。』
「優しくないって言うことは否定しないのね?」


『まぁね。僕を知る人は僕のことを優しいとは評価しないから。冬獅郎さんになんか、お前は雷みたいな奴だ、って言われたこともあるし。』
「確かにそうね。いつどこで発生するか解らない上に、何処に落ちるか解らない。貴方の斬魄刀は、貴方の本性を現しているのね。」


『あはは。まぁ、斬魄刀はそういうものでしょ。父上の千本桜は桜が散るように美しい。でも、それにつられて手を出せば、容赦なく切り刻まれる。橙晴の風伯は、風だ。風は春を呼んだかと思えば、冬を呼ぶ。穏やかな風もあれば荒れ狂う風もある。ルキア姉さまの袖白雪は諸刃の剣だ。』
「なるほど。」


『春水殿の花天狂骨は遊びで構成されている。だからあの人は元来遊び人だ。でも、遊びというのは残酷なものでもある。だから、あの人は残酷さを持ち合わせている。ついでに十四郎殿は子ども心を忘れない人だ。でも、時として子どもは残酷な生き物になる。それで、山本の爺は見たまんま。業火の炎。』
そんな話をしつつも青藍は笑顔だ。

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