色彩
■ 30.入隊式の恒例

それから季節は巡り、再び入隊式の季節がやってきた。
桜が満開の中、緊張した面持ちで新入隊士たちはそれぞれの隊長の話を聞いている。
橙晴もまた、その一人であった。
目の前で話しているのは六番隊隊長としての父。
その姿をみて、死神として、息子として、父を支えたいと橙晴は改めて決心する。


そして、もう一人。
恋次と共に白哉の後ろに控えているのは青藍である。
兄様もこういう時は真面目な顔をするらしい。
橙晴はいつものように微笑んでいない兄を見て、内心苦笑する。


「・・・咲夜。」
いつものように咲夜の名を呼んだ白哉を見て、青藍は軽く笑う。
先ほどから気が付いていたが、やはり今年も母上が見に来ているのだ。
呼ばれて咲夜は姿を見せる。
もはや恒例となっているので席官たちに動揺はない。


「今年も見つかった・・・。」
咲夜は不満げに言う。
「最近は隠れる気もないくせに何を言う。毎年のように同じことを繰り返して飽きないのか。」
そんな咲夜に白哉は呆れたように言った。


「飽きないね。毎年入隊してくる者の顔が違うから。」
「それならそれで、最初から居ればいいものを・・・。」
「それじゃあ他の隊を見に行くことが出来ないだろう。」
咲夜は当然のようにそんなことを言う。
そんな咲夜に白哉は諦めるしかなかった。


『ふふ。お二人とも、新人たちが戸惑っておりますよ。母上、自己紹介くらいしたらどうですか?』
そんな二人に青藍は苦笑しつつ言う。
「はいはい。・・・私は十三番隊、朽木咲夜。白哉の妻だ。それで、そこに居る青藍の母だ。よろしくな。」


『毎日のように痴話喧嘩があるから、皆、巻き込まれないように気を付けてね。』
青藍はそう言って微笑む。
「そんなことはないぞ?なぁ、白哉?」
「そうだな。最近は咲夜と青藍の言い合いの方が多いくらいだ。」
「そっすね。お蔭で俺は毎日大変です。」
白哉の言葉に恋次が同意する。


『「それは母上(青藍)のせい!」』
「・・・皆の者、これらが迷惑をかけたら、恋次に言え。」
「俺すか!?隊長、面倒だからって俺に投げないでくださいよ・・・。」
「面倒なのではない。咲夜が二人いるようで、私の手には負えぬのだ。」
「隊長の手に負えないものを俺がどうにかできると思ってるんすか・・・。」
恋次はそう言って頭を抱える。


「二人して酷い奴らだ。」
『そうですね。僕はそんなに問題児じゃありません!』
「私だってそうだ!」
「・・・ここまで自覚がないと、諦めるしかなさそうっすね、隊長。」
「・・・そのようだな。」
白哉と恋次は二人の様子に諦めの表情を見せる。


『それから、もう一人紹介するよ。・・・橙晴。』
「はい。」
『前においで。』
青藍に言われて橙晴は前へと歩を進める。


『この子は朽木橙晴。僕の弟だ。つまり、僕と同じくこの二人の子ども。この春から六番隊の第五席だよ。』
「よろしくお願いいたします。」
紹介された橙晴は一礼する。


「ふふ。この人事に不満がある者は、橙晴に直接手合わせを申し込むんだな。親の欲目を抜きにしても実力は確かだ。」
『そうそう。最近は僕、橙晴の相手するの嫌になってきたよ。』
「ご冗談を。兄様はいつも僕をからかう余裕があるじゃないですか。僕など、まだまだ兄様には及びません。」
『それこそ冗談だ。・・・ま、皆、よろしく頼むよ。』
そんなこんなで入隊式を終えたのだった。

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