色彩
■ 29.似た者親子

「・・・兄様も窓から出入りしているようですね。全く、似た者親子なんですから。」
橙晴はため息を吐いた。
「そのようだな。青藍も突然抱き着いてきたことがある。」
「え、そうなの?」
「あぁ。先ほどの咲夜様と同じように。」


「あはは。それは悪いね。あの人たちが誰かに抱き着くのは癖みたいなものなんだ。」
まぁ、兄様が女の子に抱き着くのは珍しい、というか、初めてな気がするけど。
兄様が家族と烈先生以外に自分から抱き着くことなんてないもの。
橙晴は内心で呟く。


「・・・それは、普通か?」
深冬は首を傾げる。
「うーん・・・。我が家では普通かな。母上があれだからね。僕ら兄弟も小さい頃は母上にぎゅうぎゅうと抱きしめられたよ。母上は父上が相手だと、今でも顔を見る度に抱き着いているけど。」


「仲が良いのだな。」
「そうだね。喧嘩もするけど。」
「そうか。」


そんな話をしていると、隊主室から白哉が出てきた。
「何やら騒がしいようだが・・・橙晴?」
白哉は橙晴の姿を認めて首を傾げる。
「あ、父上。五月蝿くてすみません。主に騒いでいたのは母上と兄様ですが。」


「・・・その二人は何処へ行った?」
「先ほど逃げた兄様を母上が追いかけていきました。」
その言葉に、白哉はため息を吐く。
「またか・・・。」


「またです。深冬が巻き込まれて可哀そうでした。」
「・・・咲夜に会わせたのか?」
「会わせたというよりは会ってしまったというのが正しいですね。丁度六番隊に見学に来たもので。せっかく父上が会わせないようにしていたのに。」


「また一つ、悩みの種が出来そうだ・・・。」
白哉はそう言って遠い目をする。
「えぇ。深冬を攫うとか言っていたので気を付けてください。先ほど思いっきり抱き着いていたので、相当気に入ったかと。」


「攫うのは駄目だろう・・・。咲夜ならやりかねないが。」
「あはは。流石にそれは兄様が止めておられましたよ。」
「当たり前だ。止めなかったら私はあれを次期当主にしたことを後悔するぞ・・・。」
「確かに。」
疲れたような白哉に橙晴は苦笑する。


「・・・はぁ。とりあえず、咲夜と青藍が迷惑をかけたようだな。」
白哉はため息を吐くと、深冬に目を向けてそう言った。
「いえ・・・。」
言われた深冬は気まずそうに返事をする。
「恐らく、今後もそなたには迷惑をかけるだろう。先に謝っておく。すまぬ。・・・だが、悪い者たちではないのだ。」
白哉は苦笑するように言う。


「はい。解っております。」
そんな白哉を見上げて深冬は頷く。
その瞳を見て、白哉は青藍が彼女に興味を持った理由が解る気がした。
「そうか。なら、あれらに付き合ってやってくれ。」
白哉は柔らかな瞳をしてそう言うと、深冬の頭を一撫でして、隊主室に戻っていく。


頭を撫でられた深冬はポカンとしたような顔をして、撫でられた頭に自分の手をのせる。
「・・・何故私は白哉様に撫でられたのだ?」
そしてそう呟きながら首を傾げる。
「ふふ。まぁ、母上と兄様を頼む、ってことだよ。」
橙晴は楽しげに言う。


「青藍も、頭を撫でる。」
「あはは。それは兄様の愛情表現。」
「何だそれは・・・。」
「嫌じゃないなら、撫でられておけばいいのさ。」
「嫌では、ない。」


「そう。まぁ、可愛がられている証拠だよ。」
「そうなのか?」
「母上と兄様もだけど、父上も意外に小さな子に弱い。全く、親子とは変なところが似る。」
橙晴はそう言って笑う。
そんな橙晴に深冬はさらに首を傾げたのだった。

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