色彩
■ 27.可愛い子主義

「・・・まぁ、それはいい。で、橙晴。先ほどから気になっているのだが。」
「なんです?」
「君の隣に居る可愛い子は誰だ?」
咲夜は興味津々といった様子で深冬を見る。
それを見て橙晴は苦笑する。


「加賀美深冬さんです。」
「お初にお目にかかります、朽木咲夜様。加賀美深冬と申します。」
「何?!加賀美!?」
咲夜はそう言って目を見開く。


「・・・加賀美って、あの加賀美か、青藍?」
咲夜は恐る恐る青藍に聞く。
『えぇ。あの加賀美です。』
「最近朽木家次期当主と、加賀美家次期当主は仲良しだと噂の加賀美か?」


『あはは・・・。まぁ、そうですね。その加賀美で間違いありません。彼女は彼の妹です。』
青藍は苦笑しつつ言った。
「・・・・・・何だって!!!!あの加賀美にこんなに可愛い妹が居たのか!青藍も知っているなら早く知らせろ!あんな可愛い子と知り合いだなんて羨ましい!橙晴もずるいぞ!」


『父上も知っていますよ。』
「何!?白哉め・・・私に隠していたな・・・。」
咲夜は恨めしげに言う。
『あはは。こうなるのが解っていたからでしょうねぇ。』


「青藍。」
『何ですか?』
「私は、あの子を攫ってもいいか・・・?」
『いや、それは駄目でしょう。色々と問題です。やめてください。』


「だって、あんなに可愛いのだぞ?冬獅郎並みの逸材だぞ・・・?雰囲気まで昔の冬獅郎そっくりだ!私はあの柔らかそうな可愛い子を抱きしめてもいいんだよな?もちろん。」
そう言いつつ、咲夜は深冬に近付いていく。
『いや、母上、駄目って言っても抱きしめるつもりでしょう・・・。』


「当たり前だ!なんだこの可愛さは!」
咲夜はそう言って深冬に抱き着いた。
「あの・・・咲夜様・・・?」
深冬は困惑した様子でされるがままになっている。
「思ったとおり柔らかい。ほっぺたがすべすべ。小さくて可愛い・・・。」


『「・・・はぁ。」』
その様子を見て青藍と橙晴はため息を吐く。
「母上の可愛い子主義は変わりませんねぇ。僕らも小さなころはよくあの被害に遭いました・・・。」


『そうだね・・・。』
橙晴の呆れた声に同意しつつも、青藍は内心咲夜に同意する。
確かに深冬は可愛い、と。
「可愛いぞ・・・。君、うちの子にならないか?」
「え?いや、それは・・・。」
咲夜にそんなことを言われて、深冬は助けを求めるように青藍を見る。


『・・・母上、可愛いのは解りますが、深冬が困っています。そろそろお放し下さい。』
「えぇー。嫌だ。」
咲夜は駄々をこねるように言う。
『・・・へぇ。じゃあ、後で父上に報告ですね。また誰彼かまわず抱き着いて他人を困らせたと。』


「しかも攫うとか言い出していますからね・・・。他にも危ない発言がちらほらとありますし。」
「そ、それは・・・。」
二人の言葉に咲夜は動きを止める。


『「これはお仕置きですね。頑張ってください。」』
そんな咲夜に、二人はにっこりと笑顔でそんなことを言い放った。
「・・・うん。解った。放す。放すから、白哉には言わないでくれ・・・。」
二人を見て、咲夜は名残惜しそうに深冬を解放した。


『深冬、そこの危ない人から離れてこっちにおいで。』
青藍が呼ぶと、深冬は助かったというように青藍の傍にいく。
その様子を見て、咲夜は首を傾げた。
「青藍、何故その子を手懐けているのだ?」


『手懐けてって・・・。まぁ、僕ら色々と共犯者ですから。ね、深冬。』
「そうだな。先ほどの噂の発端は私たちなのです。」
『そうそう。貴族の集会の時に二人で共謀して逃げ回っているのです。もちろん、加賀美君も協力者ではあるけれど。』


「一体、何をしたのだ・・・。」
顔を見合わせて頷く二人に咲夜は訝しげな目を向ける。
『あはは。僕も深冬もそう言う席では周りに人が絶えないので苦労しているのですよ。まぁ、母上がそう言う席に出たらもっとすごいことになるでしょうけど。だから父上は母上をそう言う席に連れて行かない。』

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