色彩
■ 26.どっちもどっち

そんなこともありつつ、青藍はいつものように仕事をしていた。
するとそこへ、霊術院の制服を着た者たちが執務室に入ってくる。
・・・そういえば、今日は見学の日だった。
それを見て青藍は思い出す。


橙晴が今日は護廷隊に行くと言っていたのだ。
頼むから、普通にしていてくれという言葉とともに。
入ってきた橙晴と目があって、青藍は軽く微笑む。
そして、次に入ってきた人物に目を丸くした。


深冬が入ってきたのである。
彼女は特進クラスではないはずだ。
橙晴と同じところに居るのはおかしい。
そんなことを考えつつ、青藍は何となく彼らを観察する。


「青藍!」
そんな時、そんな声と共に咲夜が執務室にやってくる。
いつものように、開いている窓から。
『母上・・・。いつもいつも、窓から侵入しないでくださいと言っているではありませんか。』
諦めつつも青藍はそう口にする。


「そういいながら、いつもこの窓の鍵を開けておくのは君だろう。」
『開けておかないと母上が窓を突き破ってくるからでしょう・・・。今日は院生が見学に来ているのですよ?僕らは彼らの見本にならなければならないというのに・・・。』
悪びれた様子の無い咲夜に、青藍は呆れたように言う。
その様子を見て橙晴は苦笑いである。


「入隊すれば、これが日常なのだ。そう気を張る必要もあるまい。」
『そうはいっても、もう少し、彼らに夢とか希望とか憧れとか見せてあげないと、今から死神になるのをやめると言われてしまったらどうするのですか。いつだって護廷隊は人手不足なのに。』


「・・・それを青藍が言うのか?いつも霊術院に遊びに行って授業を掻き乱している君が。」
咲夜に言われて青藍は思わず言葉を無くす。
『・・・それは、それです。うん。僕はいいんです!大体、僕が院生の頃、母上だって散々ひっかき回しに来たじゃないですか!』
「青藍が良いなら私もいいのだ!」


『父上に怒られても知りませんよ。いつも勝手にふらふらして怒られているのに。』
「そういう青藍も白哉に怒られるぞ。何かと霊術院に逃げ込んでいるのを知っているのだぞ!」
『何かと追われるのですから、仕方ないでしょう。僕だって好きで逃げているわけではありません!それに、父上の了承は得ています!母上みたいに怒られたりしません!』


「私だって好きで怒られている訳じゃないのだ!ちょっと連絡を怠るだけなのだ!」
二人はそう言ってにらみ合う。
その様子に院生たちは困惑するが、執務室に居た死神たちはいつものことだと苦笑しつつ仕事をしている。


「・・・お二人とも、みっともないのでやめてください。」
そんな二人に、橙晴が呆れたように言う。
『だって橙晴、いつも窓から出入りする母上の方が悪いよね?』
「いや、授業を邪魔しに行く青藍の方が悪いよな?」
二人に言われて橙晴は大きくため息を吐く。


「どっちもどっちです。少なくとも今、僕はどちらにも迷惑しています。ちなみに父上もお二人のそれには頭を痛めているようですよ。」
『「そんな!」』
橙晴の言葉に二人はショックを受けた顔をする。


「隊士の皆様、母と兄が申し訳ありません。この状況でも普通に仕事をしている皆さんに感謝いたします。」
そんな二人は放って置いて、橙晴は隊士たちに頭を下げた。
「別にかまいませんよ、平和な証拠ですから。だから頭を上げてください。」


「むしろ私たちも一息吐けていいですから。」
「賑やかでいいと思います。」
「お二人のこんな姿を見られて、得した気分ですよ。」
「他の隊では見られませんからね。」
「もう慣れましたし。」
「橙晴さんが謝る必要はありません。」
頭を下げる橙晴に隊士たちは笑いながらそんな声を掛ける。


「流石皆様、慣れていらっしゃる・・・。」
慣れている様子の隊士たちに、橙晴は苦笑する。
「青藍のせいでみんなに笑われたじゃないか・・・。」
『それはこちらの科白です・・・。』
それを見て拗ねたように言う二人に、執務室にはまたもや笑いが起こったのだった。

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