色彩
■ 22.次はこちらの番

「せい、らん?」
深冬は混乱したように、青藍の名を呼んだ。
そんな彼女を抱えて、青藍は破面から距離をとる。
『遅くなってごめん。よく頑張ったね。』
「青藍・・・。」
青藍の声に彼女は安心したようだった。


『君はここで待っていて。・・・死神の皆さんは、院生たちの警護に回ってください!破面は僕がやります!後で朽木隊長が来られる!それまで院生たちを守りなさい!!』
青藍が深冬に結界を張りながらそう言うと、言われた通りに死神たちが動き出す。
『橙晴は遊んでないで、早く始解する!!!』


「解っていますよ!それに、遊んでなんかいません!!・・・吹き荒べ、風伯!!!」
解号と共に橙晴の斬魄刀は鋼鉄の扇へと形を変える。
「一之陣、風牙!」
橙晴がそう言ってその扇子を振ると、鎌鼬のような風が周囲の虚を切り刻んだ。
虚の悲鳴と共に風が吹き荒れる。


「手練れはあっちだったか。」
破面はその様子を見て舌打ちをする。
『ふふ。好き勝手やってくれたようだけれど、次はこちらの番だ。』
そんな破面の後ろからそんな声が聞こえてきた。
あわてて破面は距離をとる。


・・・こいつ、いつの間に後ろに来やがった。
破面は内心で呟く。
「死神。お前は何者だ?」
『君の言うとおり、死神だよ。』
「隊長格か?」
『君に語る必要はない。・・・君の命はすでに僕の手の中だ。』
そういうと青藍は斬魄刀を構える。


『火、天に集いて、水、地に集い、雷、天地を結びて裁きを下す、鳴神!!』
青藍の始解と共に霊圧が上がっていく。
それを感じた破面は来るであろう攻撃に備えて体制を整えた。
しかし。
次の瞬間、気が付くと片腕が斬り落とされていた。


「な!?」
『へぇ。破面は鋼皮とかいうので硬いと聞いたのだけれど。意外と刃を通すらしい。』
そう言う青藍を見やるも、彼は一歩も動いた様子がない。
そもそも、彼が握っている斬魄刀には刀身がない。
一体、どういうことだ?
何故自分の腕は切り落とされた?
破面は逡巡する。


『さて、次で終わりにしよう。』
そう言った青藍の霊圧が上がっていくのを感じ取って、破面は刃を握る手に力を込めた。
『二の裁き、雷火!!』
その声とともに、破面の体を雷が駆け抜け、体からは火柱があがる。
こいつ、速い上に強い。
破面はこのままではやられてしまうと考え、斬魄刀を解放しようとした。


『・・・遅い。』
しかし、そんな青藍の声が破面の後ろから聞こえてきた。
青藍の方を振り向こうとするも、体が動かない。
そして、次第に視界がずれていく。
青藍は一瞬のうちに破面の体を縦に真っ二つに切り裂いていたのだった。


「くそっ。」
破面はそんな声と共に燃えながら落下していく。
その体が燃えつきるのを見て、青藍はあたりを見回し、未だに虚が多数いることを認めて、そちらの処理に向かう。


「なんで、こんなに多いかな。面倒だ・・・。」
橙晴はそんなことを呟きながら次々と虚を片付けていく。
『まぁ、そう言わずに。半分くらいにはなったようだね。さすが橙晴だ。』
そんな声が聞こえて橙晴は後ろを振り向く。


「兄様!?・・・お早いお帰りで。」
青藍の姿をみて、橙晴は破面の霊圧が消えたことを確認する。
『ふふ。ただいま。さて、後はこれを片付ければいいだけ・・・。』
青藍が言うと、穿界門が開き、それと同時に桃色の花弁が一片流れてくる。
『ん?・・・橙晴、逃げるよ!!』
それに気が付いた青藍は橙晴を掴むと瞬歩でその場を離脱した。


『・・・ふぅ。危なかった。』
自分の居た場所が桃色の花弁に覆われていく様を見て、青藍は呟く。
数十の虚があっという間にその刃に呑まれていく。
橙晴もまた、状況を理解して、溜め息を吐いた。
「・・・父上は、僕らを殺すつもりですか。虚より父上の方が怖いです。」
呆れたように橙晴は呟く。


『あはは。まぁ、それは、後で抗議すればいいと思う。』
「どうせ、避けられたのだからいいだろう、とでも言われて終わりです。抗議をするだけ無駄ですよ。確信犯ですからね。」
橙晴は諦めたように言う。
『確かに。』
そんな橙晴の表情と言葉に、青藍は苦笑した。


『父上!』
虚を一掃した白哉が斬魄刀を鞘に納めると、青藍と橙晴が白哉の傍にやってくる。
「無事か。」
二人を認めて白哉は問う。
『えぇ。』
「一応は。青藍兄様など無傷です。」


『あはは。橙晴も無傷じゃないか。』
「ただの虚の相手だけなら問題ありません。破面相手に無傷な兄様がおかしいです。」
「どうやら、私が来るまでもなかったようだな。」
二人の様子に白哉は苦笑したように言う。


『そんなことはありませんよ。もし帰刃されていたら、大変でしたから。』
「帰刃される前に倒したのか?」
『はい。この状況ですからね。帰刃される前に倒す方がいいかと思いまして。周りに人が居なければ、帰刃させても良かったのですが。そう強い破面ではなかったので。』


「よい判断だ。」
『ありがとうございます。』
白哉に褒められて青藍は破顔する。
「橙晴もよくやったな。」


「ありがとうございます。・・・でも、まだまだです。精進します。」
「そうか。期待している。」
「はい!」
白哉の言葉に橙晴も笑みを見せる。

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