色彩
■ 21.破面の出現

「・・・青藍。」
隊士たちと茶を呑んでいる青藍の元に、白哉が顔を出す。
『父上?』
「至急、現世へと向かえ。」
青藍は白哉の瞳が厳しいものであることに気が付く。


『現世?・・・何事ですか?』
さきほどののんびりとした雰囲気から一転、青藍の雰囲気が鋭くなった。
隊士たちもそれを見てすぐに気分を切り替える。
「現世に破面反応だ。それとともに、多数の虚が出現した。」
『場所は?確か今日は橙晴が引率で現世に行っているはずです。まさか・・・。』


「・・・そのまさかだ。警護の死神と橙晴が交戦中だ。しかし破面が居る上に数が多い。恋次は他の任務がある。すぐに行けるか?」
『はい。』
「私は念のため限定解除の申請をしてから行く。先に行け。」
「は。」
青藍は言うが早いか、斬魄刀を手に取るとすぐに姿を消した。


そのころ、橙晴は苦戦していた。
目の前には数十体の虚。
そして、先ほどから上空で様子を伺っている破面が一体。
死神たちと共に懸命に闘っているが、数が減る様子がない。
破面が次々と虚を呼んでいるのだ。
そして、共に引率で現世にやってきた小さな少女も戦闘に参加していた。


加賀美深冬。
橙晴は今日まで彼女と話したことはなかった。
何しろクラスが違うのだ。
そう顔を合わせることもない。
どちらも色々と目立つために、名前を互いに知っているくらいだった。
しかし橙晴はその戦いぶりを見て、内心舌を巻いた。


・・・あんな子が、特進クラスでないなんて詐欺だ。
次々と虚を倒していく彼女を見て、橙晴は思う。
特進クラスに入るのを拒んでいるというのは本当だったのか。
力こそないが、弱点を見極めて確実に虚を仕留めて行くのだ。
橙晴はそれを確認して、自分の戦いに集中することにする。


始解をすれば、この程度の虚は訳ないが、下手に目立つとあの破面が参戦してくる可能性がある。
破面の力量が解らないこの状況では、それだけは避けたい。
そう考えて、橙晴はまだ始解すらしていない。
しかし、このままではこちらの体力が消耗し続けるだけだ。


応援はまだだろうか。
恐らく来るのは隊長格。
彼らが破面の相手をすることになるだろう。
僕はいいとしても他の彼らはそれまで持つだろうか。
その時。
視界の端で破面が動くのを感じる。


一体どこへ行く?
橙晴は目の前の虚を切り倒すと、その破面を目で追う。
その破面が向かった先は、深冬の元だった。
しまった。
そう思う間もなく、彼らは刀を交える。
それまで問題なく虚と交戦していた深冬は防戦一方となった。
そこで深冬はバランスを崩す。


斬られる!!
橙晴はそう感じて彼女の元へ向かおうとするが、それと同時に見知った霊圧がそこに向かうのを感じる。
振り向くと、そこには穿界門が現れていた。


青藍が穿界門を出ると、深冬が破面に斬られようとしていた。
それをみて、青藍は慌てて彼女の元へと向かう。
深冬まで引率で現世に居たなんて・・・。
そんなことを思いながら青藍は瞬歩で駈ける。


虚など眼中にない。
それらを全て避けながら、一目散に深冬を目指す。
「兄様!!」
途中、橙晴の声が聞こえた気がしたが、青藍は止まることはしなかった。


ガ、キン!
そんな音を立てて青藍は破面の刃を受け止めた。
「何!?」
突然現れた青藍に破面は目を見開く。
『悪いけど、この子に手出しはさせないよ。・・・破道の三十三、蒼火墜!!』
刃を受け止めたまま至近距離で鬼道を放ち、相手がひるんだすきに青藍は深冬を左腕に抱えた。


それを見た橙晴は、唖然とする。
兄様が、助けるためとはいえ、自分から、躊躇いなく、女の子に、触れた・・・?
唖然としているとすぐそばに虚の気配がして、橙晴は今自分が見たものを頭から振り払う。
とりあえず虚を殲滅することに集中しようと、刀を握りしめた。

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