色彩
■ 20.隊士とのお茶会

そんなある日。
青藍は執務室でのんびりとお茶を啜っていた。
その場にいた隊士たちとともに。
『暇だねぇ。』
「暇ですねぇ。」
青藍が呟くと何処からともなくそんな声が返ってくる。


「ところで三席、隊長はどうされたのですか?今日は一度も隊主室から出てきておりませんが。」
『父上?あぁ、書類にでも埋まっているのではないかな。』
「「「は?」」」


『僕の仕事を押し付けてやりました。』
青藍はさらりとそんなことを言う。
「それは・・・大丈夫なのですか?」
『いいんじゃないかな。父上の自業自得だから。』
「何かあったのですか?」


『・・・あった。すごくあった。父上ったら、当主の仕事をさりげなく僕に割り振っていたんだよ?僕は次期当主の挨拶に行っただけなのにいきなり朽木家の意見を聞かれたりして大変だったんだから。それだけならまだしも・・・。』
青藍は悔しそうにいう。
「それだけじゃなかったので?」


『そう!僕に仕事を押し付けて、自分は優雅に邸で寛いでいたんだよ!?それも僕以外の家族が揃って!僕だけ仲間はずれとか、酷くない!?僕が死ぬほどお酒を呑まされている間に!それで僕がやっとのことで邸に帰ったら、父上は上機嫌で夜の散歩をしているし!なんなのさ!ずるいよ!僕だって、僕だって・・・うぅ。』
一気にまくし立てて、青藍は机に突っ伏した。


「あの・・・三席?大丈夫で・・・?」
そんな青藍に隊士は恐る恐る声を掛ける。
すると、青藍はガバリと起き上がった。


『僕だって、茶羅の舞が見たかったー!!!!しかも、演奏は母上だよ?何それ。なんて贅沢。僕だって聞きたかったのに!!母上が演奏するなんて、滅多にないのに!相当気分が乗らないと弾いてくれないのに!』
机をだんだんと叩きながら青藍は叫ぶ。
その様子に隊士たちは苦笑した。


「で、その腹いせに隊長に仕事を押し付けたと。」
『うん。僕の仕事を引き受けるか、次の勤務で母上との非番を悉くずらすか、どちらがいいか聞いたら即答で前者を選んだよ。』
「なるほど。六番隊の勤務表を作っているのは副隊長と三席ですもんね。」


『毎回毎回、ルキア姉さまと話し合って、十四郎殿の体調のいい日を予想しながら、苦労して二人の非番を合わせているんだから。お蔭で僕とルキア姉さまの非番が重なったことが未だにないんだよ・・・。次こそは絶対に合せてやる・・・。』
恨めしげに青藍は言う。


「あはは。相変わらず朽木副隊長が大好きですねぇ。」
「青藍さん、昔からそうですけどね。」
「そうだなぁ。小さなころはいつも姉さま、姉さまと、朽木副隊長の後を付いて回っていましたものね。朽木副隊長に褒められたりすると、それはもう、弾けんばかりの笑顔で。」


「可愛かったなぁ。・・・あ、もちろん今も可愛らしさは健在ですけど。三席が今もそうやって本音を漏らしてくれるのは、何だかうれしいです。」
隊士たちはそう言って微笑む。
『君たち、僕を子ども扱いしているでしょ・・・。』


「「「そりゃあ、三席の成長を目の当たりにしてきていますからね!」」」
そう言った彼らの素晴らしい笑顔を見て、青藍はすこし恥ずかしくなった。
『・・・うん。解った。さっきのは確かに子供のようだった。反省する。だから、その笑顔はやめて・・・。』
そして青藍は懇願するようにそう言ったのだった。

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