色彩
■ 19.同期で仲良く

『あはは・・・。ごめんね、深冬。僕と加賀美君は仲が良くない。まぁ、色々あったし。僕は、別に今の加賀美君のことは嫌いじゃないけど。あの場から逃げ出すのに、同期である加賀美君の話をするのが最適だと思ったんだ。』
「そう、なのか・・・。」
深冬はそう言って力を抜いた。


『ごめんね?でも、深冬もあそこから出たかったでしょ?』
「・・・そうだな。知らないうちに私も助けられていたらしい。礼を言う。」
そう言って深冬は軽く頭を下げる。
『というわけで、加賀美君。そう言うことだから、適当に話を合わせてくれ。頼むよ。』
青藍はそう言って豪紀に手を合わせる。


「・・・わかった。断ってもいいことがなさそうだ。どうせ俺と仲が良い振りをして出てきたんだろう。」
溜め息を吐きつつ豪紀は了承する。
『さすが加賀美君。次期当主は伊達じゃないね。あ、そうか。次期当主への昇格、おめでとう。』
嫌そうな顔を崩さない豪紀に、青藍はにっこりと微笑む。


「・・・はぁ。俺はお前のそういう所が嫌いだ。」
『そう?僕は、君がなんだかんだ文句を言いながらも僕と普通に話してくれるところが好きだよ。』
青藍の言葉に豪紀は表情をひくつかせる。


「・・・もういい。深冬、今日はもう邸に帰るぞ。」
「解りました。」
『帰るの?じゃあ、僕も一緒に帰らせてもらおうかな。正直、僕も帰りたい。同期で「仲良く」帰ろうね。』
にっこり笑った青藍に豪紀は苦々しい表情をする。


「俺、本当に、お前のこと、嫌い。」
豪紀は唸るように言う。
『ふふ。まぁ、それはお互いさまってことで。でも、今後も仲のいい振りぐらいはしてもらうよ。色々と面倒だからね。次期当主同士、仲良くしようじゃないか。ちなみに、僕と深冬はもう仲良しだから。ね、深冬?』


「そう、なのか?」
『そうなの!』
「そうか。」
「・・・そいつは養子だ。仲良くしてもそう利益があるとは思えないが。」
『僕が気に入ったのだからいいのさ。あまり損得で人を計るものではないよ。まぁ、貴族と付き合うにはそれなりに必要だけれど。君は僕がそういう奴だと知っているはずだ。』


「・・・本当に気に入らない。」
そういうと、豪紀は廊下を歩き出す。
『あ!ちょっと待ってよ、僕も一緒に帰るんだから!』
青藍がそう言っても豪紀は足を止めない。


『・・・勝手に付いて行くから、別にいいもんね。こっちには深冬が居るんだから!』
それを見た青藍は立ち上がって着物をなおすと、深冬の手を引いて彼を追いかける。
そんな青藍に引っ張られながら、深冬は首を傾げる。
・・・この二人、本当に仲が悪いのだろうか?
それともまた、青藍の嘘なのだろうか?
そんなことを考えつつ、深冬は彼らの後を付いて行く。


その後、朽木家次期当主と加賀美家次期当主は仲が良い、という噂が流れて、白哉は驚きに目を丸くして、咲夜や雪乃は大笑い。
そしてそれがキリトたちの耳にも入り、青藍は彼らにからかわれることになるのだった。

[ prev / next ]
top
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -