色彩
■ 18.約束

『・・・深冬。ちょっとそこにお坐りなさいな。』
「?わかった。」
青藍に言われて深冬は青藍の前に正座する。
青藍と深冬の視線がほぼ同じ高さになった。
傍から見たら怪しい光景だが、まぁ、気にしない。


『・・・僕に頭を撫でられて、嬉しかったの?』
青藍は深冬をチラリと見つつ言った。
「あぁ。やっぱり青藍の手は温かい。」
深冬の瞳が少し柔らかくなる。


『その嬉しいのを、僕に分けてくれたの?』
「そうだ。」
『・・・あーもう!可愛い!可愛すぎるよ、深冬!』
頷いた深冬を見て、耐えきれなくなったのか、青藍は深冬を抱きしめた。


「な!?なんだ!?青藍!?」
珍しく焦った声で深冬は戸惑う。
『可愛いなぁ、もう!僕、深冬、大好き。』
それが聞こえているのか居ないのか、青藍は深冬をぎゅうぎゅうと抱きしめる。


「な!?くる、苦しいぞ、青藍・・・。」
そう言われて、青藍は漸く深冬を解放する。
『あはは。ごめんね、深冬。苦しかった?』
「あ、あぁ。いきなり何なんだ?」


『いや、つい、ね。深冬があまりにも可愛くて。』
「可愛い?」
『うん。自覚は・・・ないようだね。深冬、一つ約束してほしい。』
「ん?なんだ?」


『さっきの、僕以外の人にはしちゃ駄目だよ?』
青藍は深冬を見つめながら言う。
「何故だ?」
『攫われて、襲われちゃうから。』


「・・・?」
青藍の言葉に深冬は首を傾げた。
『うん。解らなくてもいいから、とりあえず約束してほしいな。・・・僕以外の人にはしないって、約束してくれる?』
小首を傾げながら青藍は言う。
そんな青藍に深冬は不思議そうな雰囲気をする。


『ねぇ、深冬。約束して?』
「・・・わ、解った。約束する。」
青藍に見つめられて、深冬は気圧されたように頷く。
『よし。いい子だ。』
青藍はそう言って微笑むと、深冬の頭を撫でたのだった。


「・・・・・・お前ら、何をしているんだ?」
青藍の後ろからそんな声が掛かる。
驚いて振り向くと、そこには加賀美豪紀が居た。
『あ、加賀美君。お久しぶり。』
彼の姿を認めて、青藍はヘラりと笑う。


「な!?」
青藍の顔を見て、豪紀は目を見開いた。
「ここで何をしている?」
憮然とした表情で青藍に問うた豪紀に、青藍は苦笑する。


『あはは。深冬と共謀して逃げてきたんだ。ね、深冬?』
「青藍が豪紀様に会いたいと・・・。」
「・・・は?」
深冬の言葉に豪紀は呆けた声を出す。


『あはは。うん。まぁ、それはちょっと、君を利用させてもらっただけで、本当に顔を合わせるつもりはなかったのだけれど・・・。』
青藍は苦笑する。
「・・・はぁ。」
豪紀は大きなため息を吐く。


「お二人は仲が良いのでは?」
二人の様子に深冬は首を傾げた。
『うーん・・・。仲良くは・・・ない、ね?』
「俺はこいつが嫌いだ。」


『あはは・・・。はっきり言うよねぇ、君も。』
「今さら隠す必要もない。」
「でも、青藍は、豪紀様に積もる話があるからと・・・。」
「そんなもの、こいつの嘘に決まっているだろう。」

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