色彩
■ 7.兄弟の打ち合い

『いやぁ、橙晴、強くなっているねぇ。僕、そのうち負けちゃうなぁ。』
そう言いつつも青藍は軽々と橙晴の木刀を受け止める。
「ご冗談を。この程度で兄様に敵う訳がありません。すぐにでも隊長になることが出来る人が何を言っているのですか。」
『えぇ?そんなことないよ?僕は三席ぐらいがちょうどいいのさ。』


「はぁ。全くいつもそうなのですから。この間、僕が見た兄様のお姿は何だったのでしょうねぇ。」
『あはは。橙晴、夢でも見ていたんじゃないかな。』
「全く、そうやって隠していると、また雪乃たちに怒られますよ。」
『あら。それは勘弁。あの後、洗いざらい吐かされたんだから。』
「自業自得です!」


『あ、そうそう、橙晴。』
思い出したように青藍は言う。
「何ですか?」
『そのうち正式に任官状が来ると思うけど、橙晴、霊術院を卒業したら、六番隊の第五席だから。』
「・・・は?」
青藍の発言に橙晴は思わず手を止める。


『こらこら、手を止めないの!実戦だったら死んじゃうよ。』
それを窘めつつも、青藍は木刀を振り下ろす。
「うわ、危な!」
橙晴はそれを慌てて受け止めた。
「なんで、そんなことになるのですか!僕には五席なんて荷が重すぎます!」


『そうかなぁ。父上と君をどうするか話し合っていた時に、今の五席が休隊することになってね。どうやら長引きそうだからって、席官を返上したんだ。それで、丁度いいから、橙晴でいいか、という話になったのさ。良かったね、橙晴。』
青藍はにっこりと微笑む。


「そんな適当な・・・。」
『まさか。父上が橙晴に任せてもいいと思ったからこその五席だよ。僕も異論はない。六番隊隊長としての父上と、六番隊第三席としての僕が選んだんだ。もちろん、副隊長の恋次さんも異論はないといっている。』
それまで笑っていた青藍が、真面目な顔をする。


「・・・はぁ。解りましたよ。期待にお答えできるように力を尽くしましょう。」
それを見た橙晴は諦めたように頷いた。
『ふふ。それでこそ、橙晴だ。頼りにしているよ。』
頷いた橙晴をみて、青藍は満足そうに微笑む。


「解りましたよ。僕はどうやったって青藍兄様に巻き込まれるようですから。覚悟しておきます。」
『えぇ。酷いなぁ。父上だって共犯者なのに。というか、すでに母上もルキア姉さまも茶羅も知っているよ。』


「何故本人である僕が一番知るのが遅いのか・・・。今朝の母上の楽しげな様子はそのせいですか。」
橙晴は諦めたようにため息を吐く。
『ふふ。そうだろうね。それから、それに関連してのことだけれど。』


「何ですか?」
『卍解の修練を進めておいてね!』
青藍は軽く言う。
「はぁ!?僕は五席なのでしょう!?いや、修練はしますけど!」
そんな青藍に、橙晴は思わず叫ぶ。


『だって、僕、父上の下でしか、働く気ないし。でも、橙晴が隊長になるというのなら、話は別だ。橙晴が隊長になるのならば、僕は君のために働こう。だから、ちゃんと修練するんだよ?』
「おかしくないですか、それ!?兄様が隊長になればいいんです!」
『あはは。嫌だ。この際だから言っておくけれど、僕は絶対に隊長にはならない。』


「青藍兄様・・・。」
はっきりと言った青藍に橙晴は思わず呆れる。
『僕は母上に似ているからね。隊長にはならない方がいいだろう。でも、橙晴は父上に似ている。だから君は、隊長になっても大丈夫だよ。』
青藍は楽しげにそんなことを言った。


「ですが・・・。」
橙晴の顔は不満げだ。
『ふふ。そんな顔をしないの。僕が隊長にならない理由は母上を見ればわかるだろう。用心しておくに越したことはない。それは橙晴も解るね?』
「はい・・・。」


『この間の一件でしばらくは手出しをされないだろうが、今後もどうなるか解らないからね。全てでないとはいえ、それなりに知れ渡ってしまった。僕らが注意すべきはあの人たちだけではなくなったわけだ。』
「確かにそうですが・・・。」


『そして、僕はいずれそれに巻き込まれていくだろう。どうやら僕が愛し子だということがちらほらと出回り始めている。もちろん、霊王様の愛し子、ということになっているけれど。』
青藍は声を潜める。


「・・・。」
『隊長になれば、武力を得てしまう。一つの隊を自由に動かすことが出来るのだから。それは、まわりの者たちから見れば脅威だろう。・・・それに、ああいう時に地位は邪魔だ。』

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