色彩
■ 6.乱入

『さてと、じゃあ僕は橙晴と遊んでこようかな。』
出て行ったルキアをみて、青藍は伸びをしながら立ち上がる。
「は?彼奴は今、実習中だぞ。」
『ふふ。僕も混ざってこようかなぁ、なんて思うのだけれど。』
呆れたような表情をした睦月に、青藍は悪戯に笑う。


「・・・はぁ。好きにしろ。」
『ふふふ。じゃあ、院生の服、ちょっと借りるね。流石にこの格好で橙晴とやり合ったら服を駄目にしてしまう。』
「はいはい。どうぞお好きに。」


院生の制服に着替えた青藍はこっそりと橙晴の元へ向かう。
どうやら剣術の実習中らしい。
『ふふ。やってるなぁ。』
そんなことを呟いて、青藍は橙晴を探す。


・・・見つけた。
青藍は霊圧と気配を隠して内心ほくそ笑む。
青藍の視線の先には、つまらなそうにクラスメイトの試合を見ている橙晴の姿があった。
時折、クラスメイトへ指導もしているようだが、橙晴の相手をするような者は居ないらしい。


よし。
『これなら僕が参加してもいいよね。』
青藍はそう呟いて何処からか木刀を取り出すと、橙晴の元へ飛び込んだのだった。


カン!!
木刀の乾いた音がその場に響き渡る。
その音に、周りの者は目を見開いた。
橙晴は突然飛び込んできた相手に気が付き咄嗟に木刀で受け止めたのである。


『よく気が付いたね。それにいい反応だ。』
「・・・青藍兄様。ずいぶんなご挨拶ですね。」
『ふふ。だって、橙晴、暇だったでしょ?』
ぎりぎりと押し合いつつ、二人はそんな会話をする。


「それはそうなんですけどね・・・。もっとこう、普通に出てこられないのですか・・・。」
笑う青藍に橙晴はあきれ顔だ。
『まぁ、いいじゃない。兄様、ちょっと暇しているんだ。遊んでくれるよね、橙晴?』
青藍は楽しげに笑う。


「嫌と言っても、やるつもり、なのでしょう?」
橙晴はそう言って青藍の木刀を弾き返す。
『よく解っているじゃないか。』
「何年青藍兄様の弟をやっているとお思いで?」
次は橙晴から攻撃を仕掛ける。


『ふふ。そうだね。流石我が弟だ。』
青藍はそれを受け止め、再び木刀の音が響き渡る。
「それに、その恰好。最初からそのつもりなのでしょう?」
『あはは。そうだね。睦月の所で借りてきちゃった。懐かしいよねぇ、この制服。』


青藍は楽しげに笑う。
そんな青藍に、橙晴はため息を吐いた。
「全く、非番なのにこんなところに来て剣を握るとは、兄様も物好きですねぇ。」
打ち合いつつも橙晴は呆れたように言った。


『そうかな。散歩のついでだよ。』
「普通は散歩のついでで木刀を振り回したりしませんよ。」
『あはは。我が朽木家に普通な者なんて居たかな。』
青藍は惚けたようにいう。


「まぁ、確かにそうですね。母上を筆頭に、あまり普通とは言えません、ね!」
橙晴はそう言いつつ、大きく踏み込んだ。
『だよねぇ。僕、朽木家の中ではまともな方だと思うんだけど、どう、かな!』
それを微笑みながら受け止めて、青藍は反撃する。


「まさか。兄様は、母上の次ぐらいに普通じゃありません、よ!」
『おっと。そうかなぁ。父上も割と変だと思うけど。』
「それは否定しませんが、父上はこんな風に突然現れたりしません!」
『あはは。確かにそうだ。』


そんな会話をしながら楽しげに打ち合う二人に、その場にいる者たちの視線は自然と集まる。
二人とも型が綺麗である故に、その戦いは剣舞の様なのだ。
普段よりも数段遅い打ち合いであるが、それでも院生たちは目で追うので精いっぱいであるのだが。


しかし、珍しい打ち合いに、誰も目を離すことができない。
勿論、その原因は打ち合いの凄さだけでなく二人の容姿にもある。
咲夜似の青藍と、白哉似の橙晴。
どちらの顔も整っており、その所作は美しいと形容するのが一番だろう。
そんな二人が楽しげに剣を振るう姿を見て、見惚れぬものなど居ないのだった。

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