色彩
■ 5.今後の相談

「・・・ルキア、あれ、どう思う?」
「そうだな・・・。自覚はないようだが、相当興味があるようだ。」
暢気にお茶を啜り、きんつばを頬張り始めた青藍をみて、ルキアと睦月は小さく会話する。


「だよな?珍しいこともあるものだ。」
「ついに青藍の初恋、か?」
「今のところは流石に解らん。今の状態で青藍があの子に手を出したら犯罪だしな。」
「まぁ、そうだな。」


「だが、個人的にはあの二人を並べたら面白そうだ。」
睦月はそう言ってニヤリと口角を上げる。
「あまり青藍で遊んでやるなよ。」
そんな睦月にルキアは呆れたように言う。


「解っているさ。それにお前だって、それなりに気になるだろう?」
「まぁな。・・・あの子は一体どういう子なのだ?」
「見たまんまだ。常に淡々としている。感情を表に出すこともほとんどない。ただ、どうやら家はあまり好きではないらしい。早く家を出たいと呟いていたことがある。何か事情があるらしいな。」


「そうか。」
「そして、自分の容姿には無頓着だ。あの容姿で普通にその辺で眠り始めてしまう。俺は何度彼奴を拾ってここに運んだか解らない。」
睦月はそれを思い出したのか深くため息を吐く。


「ははは。それでも放って置かないのが睦月だな。偉いぞ。」
ルキアはそう言って睦月の頭を撫でる。
「やめろ。・・・まぁ、最近やっと自分からここに来るようになった。」
睦月はルキアの手を嫌そうに振り払いながら言う。


「実力はあるのだろう?何処の隊を希望しているのだ?」
「二番隊だ。隠密機動なら、日の光に弱くても問題ないからな。だが・・・。」
睦月はそう言って難しい顔をする。
「何か問題があるのか?」


「あぁいうのが、二番隊に行くのはあまりお勧めしない。彼奴はたぶん、隠密機動でも問題なく仕事をするだろう。淡々と。だが、隠密は孤独だ。その孤独に耐えられるほど、彼奴は強くない。強くないやつは徐々に自分の心を閉ざして痛みに鈍くなる。」


「そう言う者は一度折れると立ち直れない・・・か?」
「あぁ。お前も覚えがない訳ではないだろう。心が壊れて去って行った隊士を。」
「まぁな。」
ルキアは苦々しい顔をする。


「そしてそういう奴は大抵仲間と呼べるものが居ない。他人を信じられないからだ。」
「あぁ。誰にも何も言わず、去っていく。」
「そうだ。俺は彼奴がそうなる気がしてならない。だから、仲間というものを知っている青藍のような奴が彼奴の傍に居た方がいいと思う。青藍は心身ともに安定した奴だ。だがその安定は、周りに仲間がいるからだ。お前を含めた家族を信じられるからだ。」


「睦月もその中に入っているぞ。」
「五月蝿い。俺のことはいい。話の腰を折るな。」
「本当に素直じゃない奴だな・・・。」
「・・・。」
じろりと視線を向けられて、ルキアはからかうのを止めた。


「で、その青藍がまだ無自覚とはいえ、彼女に興味を持った。近づけてみる価値はあると思わないか?」
「確かにそうだ。青藍は皆を巻き込んでしまうからな。彼女は嫌でも青藍に振り回されることだろう。」


「そうだろ?その中で、どうにか他人を信じることが出来るようになるといいんだがなぁ。」
「ははは。なんだかんだで結局心配しているのではないか。」
「五月蝿い。これは、俺の仕事の範疇だっての。」


『・・・?ねぇ、さっきから二人で何こそこそ話しているの?』
きんつばを食べ終えたらしい青藍は怪訝そうに二人を見つめる。
「いや、なんでもない。今後の相談だ。」
『今後の相談?何それ。』


「さぁな。ルキアとの秘密だ。なぁ、ルキア?」
睦月はそう言ってルキアを見る。
「そうだな。」
ルキアはその言葉に頷いた。
『姉さま、僕には教えてくれないのですか?』
「ははは。秘密だからな。」


『ちぇ。僕だけ仲間外れだ・・・。』
笑うルキアをみて、青藍は唇を尖らす。
「はは。そう拗ねるな。・・・じゃあ、私はそろそろ帰る。いい加減、喧嘩も終わっているだろうからな。」
ルキアはそう言って青藍の頭を一撫ですると、医務室から出て行ったのだった。

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