色彩
■ 3.可愛いのは・・・

『ふふ。姉さま、可愛いですねぇ。・・・睦月、姉さまの分のお茶もお願い。』
可愛いのは青藍の方だ・・・。
言われてルキアはそう思う。
勿論、確信犯であるとはわかっているのだが、毎度毎度青藍には敵わないのである。


青藍がルキアの身長を抜いても、ルキアよりも強くなっても、青藍はルキアにとって大切な、可愛い甥っ子なのだ。
いや、甥というよりは、弟に近い。
小さなころから、姉さま、姉さま、とルキアの後を付いてきた。
そんなことを思い出して、ルキアは思わず頬を緩ませる。


そして、隣に居る青藍に目を向けた。
あの青藍がこんなに大きくなったのか。
自分より広い肩幅や、大きな手を見て、ルキアは感慨深くなる。
それでも、ルキアは青藍のことが可愛くて仕方がないのだ。


『どうしました、姉さま?』
ルキアの視線に気が付いたのか、青藍がルキアを見る。
「いや、大きくなったのだな、と思ったのだ。」
『ふふ。今さら何を言っているのですか。僕、ずっと前に姉さまよりも大きくなりましたよ?』


「・・・そうだな。あっという間に私を抜きおって。全く、困った甥っ子だ。」
『あはは。なんですか、それ。』
ルキアの言葉に、青藍は朗らかに笑う。
「格好良くなったな、青藍。」


『ふふふ。姉さまが、見とれるくらいに?』
青藍はからかうように言った。
「兄様と姉さまの子なのだから当然だ。飛ぶ鳥も見惚れ落ちる、とは青藍のようなものを言うのだろう。青藍と歩いていると、皆が青藍に目を向ける。」


『姉さまに褒められるとは、嬉しいですねぇ。そう言う姉さまはいつまでも可愛いですけど。』
青藍はそう言って微笑む。
「そう言うことは好いた者にでも言うのだな。私に言ってどうする。」
ルキアは呆れたように言う。


『僕は、ルキア姉さまが大好きですけどね。姉さまだって僕のこと好きなくせに。』
「当たり前だ。青藍は赤子の時から可愛いのだからな。自慢の家族なのだ。好きでないわけがないだろう。」
『姉さまも僕の自慢の姉さまです。普段は可愛いのに、戦っている時の姉さまには惚れ惚れします。』


「・・・お二人とも、何恋人のような会話をしているのですか。」
青藍とルキアの会話に、睦月が呆れたように言う。
お茶を淹れてきたらしく、その手には湯呑ののせられた盆がある。
『えぇ?そう?いつもこんな感じですよね?』
睦月の言葉に青藍はルキアに問う。


「そうだな。青藍は誰が相手でもこんな感じだ。何人の女性が陰で泣いているか解らぬ。」
『そんなことはありません。僕は普通に話しているつもりですよ。』
「・・・青藍様ったら、無自覚ですよねぇ。」
睦月が呆れたように言った。


「そうだな。まぁ、あの二人の子なのだから仕方がないのだろう。兄様も姉さまも、邸ではずっとこんな調子なのだ。睦月も知っているだろう?」
困ったようにルキアは笑う。


「確かにそうですね。当主様も、咲夜様も、僕らの前では遠慮がない。」
そんなルキアに睦月は苦笑を返す。
『僕はあれ程酷くありません。』
苦笑する二人に、青藍は拗ねたように言った。

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