色彩
■ 2.医務室

『やぁ、睦月。』
開け放っていた窓から現れた青藍を見て、睦月は目を丸くする。
「青藍・・・さま。何故こちらに?」
睦月に敬語を使われ、青藍は医務室の中を見渡す。
すると、ベッドに横たわる者があった。


誰か眠っているのか。
内心でそう呟いて、医務室の中へと侵入する。
『暇だから遊びに来たんだけど・・・。僕が居たら邪魔になるかな?』
青藍は盛り上がったベッドに視線を向けながら睦月に問う。
「いえ。よく眠っているようですから、大丈夫でしょう。今日は、非番では?」
睦月は首を傾げる。


『うん。そうなんだけれどね。暇だからその辺をふらふらしていたら、何だか色々な人がそれとなく付いて来てね・・・。ちょっと非難してきたんだ。』
「それは災難でしたね。お茶でもお淹れしましょう。」
青藍の答えに睦月は苦笑する。
そしてお茶を淹れるために備え付けられている給湯室へと向かう。


『お茶菓子は持っているからいらないよ。今日は落雁ときんつば。』
青藍は睦月にそんな声を掛けた。
「解りました。青藍様はいつもお菓子を持っておられる。」
睦月はそう言って微笑む。
『あはは。色々と便利なんだよ?やちるさんから逃れることも出来るしね。』
「なるほど。計画的なのですね。」


『あはは。まぁ、あとは、小腹が空いた時のためにね。疲れたときには甘いもの、でしょう?』
「確かにそうですね。糖分の摂取はある程度必要です。」
お湯を沸かしながら、睦月は言う。
『だよねぇ。』


「まぁ、取りすぎには注意ですが。」
『ふふふ。大丈夫だよ。少なくともおやつの分は動いているからさ。』
「そうですね。青藍様は細すぎます。」
『そうかなぁ?これでも父上と変わらなくなってきたのだけれど。雪乃にも綺麗な体だって、言われたよ?』
青藍はそう言って自分の二の腕を触る。


「確かに綺麗に筋肉が付いては居ますけど。ご当主様もそうですが、あまり筋肉が付く体質ではないようですね。まぁ、良い筋肉が付いているので、筋肉量が少なくても問題はありませんが。ですが、ちゃんと食べなければ、維持はできませんよ。」
『はぁい。善処しまーす。』
青藍はそんな気のない返事をする。


「青藍様?僕は真面目に言っているのですよ。忙しいと食事を抜いているでしょう。それでは体が持ちません。」
そんな青藍を睨みながら睦月は言った。
『あはは。睨まないでよ。解っているさ。心配してくれて、ありがとう、睦月。』
青藍はそう言って微笑む。


「全く、本当に解っているのでしょうかねぇ。」
そんな青藍に睦月はため息を吐いた。
『大丈夫だよ。他の人よりは食べているから。』
「他の人より食べていてそれなのですから、食事を抜かれては困ると言っているのに・・・。」
『だから、ちゃんと食べるようにするってば。』


「睦月!青藍がどこにいるか知らぬか!?邸には居なかったのだ!」
そんな会話をしていると、ガラリと扉が開かれた。
そこにはルキアの姿がある。
『ルキア姉さま?』
「青藍!ここに居たのか!すぐに来てくれ。兄様と姉さまが・・・。」


『また喧嘩ですか?』
焦った様子のルキアに、青藍は呆れたように言った。
「ははは・・・。今日は浮竹隊長と京楽隊長も参戦していてな・・・。」
ルキアは苦笑する。
『そうですか。まぁ、放って置けばいいんじゃないですかね。』


「そんな!?このままでは隊舎が壊れてしまう・・・。」
『毎度毎度、加減ってものを知らないんですから。たまには四人で仲良く山本の爺にでも怒られればいいんです。僕がいつも仲裁に入ると思ったら大間違いですよ。それに、僕は今日非番ですから。』
青藍は面倒そうに言う。


「青藍・・・。」
そんな青藍にルキアは苦笑する。
『だから、姉さまもここでお茶でも飲んでいってください。ね?』
青藍はそう言って微笑んだ。
「だが、私はまだ仕事中なのだ。」


『戻って巻き込まれるよりは、終わるのを待ってから戻った方がいいと思いますよ。さぁ、姉さま。ここにお座りになってください。それとも・・・僕とお茶をするのは嫌ですか?』
青藍はそう言って小首をかしげる。
少し眉を下げて。


「う・・・。」
小さく呻いたルキアは青藍に負けて隣に座る。
そんなルキアを見て、青藍は破顔した。

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