色彩
■ 1.足の向く先

『暇だなぁ。』
非番の青藍は暇を持て余していた。
用意した書物も読み終わり、朽木邸の縁に座り日向ぼっこ中である。
『何故皆して悉く仕事なのだろうか・・・。』
青藍はそう愚痴る。


白哉は勿論、咲夜もルキアも仕事なのだ。
そして、友人たちも皆仕事。
暇そうにしている青藍を目ざとく見つけて、清家が大量のお見合い写真を持ってきたが、まぁ、それは置いておこう。


『今日、茶羅は師走と薬草を探しに出かけちゃうし。せっかく僕が非番なのに酷いや。橙晴は授業に出ているし・・・。』
青藍はそう言いながらごろりと寝っころがった。
『お昼寝するにも早いしなぁ。琥珀庵に行ってもいいけど、蓮が居ないとお使いもさせてくれないし。それじゃあ、邪魔なだけだしなぁ。』
ごろごろと転がりながら青藍は言う。


『だれか、僕と遊んでくれないかな。これじゃあ、一日中ごろごろしているだけで終わってしまうよ・・・。かといって護廷隊に遊びに行くのも何か違うし。そう言えば、今日は貴族の集まりがあったような・・・。まぁ、でも父上も何も言っていなかったし、わざわざ行くほどのことじゃないだろう。』
そう呟きつつ、朽木家の長い縁をごろごろと転がっていく。


「あら?青藍様?」
そんな青藍を上から覗くものが居た。
『あ、佐奈。』
「お行儀が悪いですよ、青藍様。」
転がる青藍の姿に佐奈は苦笑しつつ言う。


『あはは。清家には内緒にしてね。怒られちゃうから。』
青藍はそう言って起き上がる。
「はいはい。・・・今日は何かご用事はないのですか?お出かけになるのでしたら、ご用意いたしますが。」
起きあがった青藍の傍に正座した佐奈は彼に問うた。


『うん・・・。皆忙しいみたい。でも、そうだなぁ。散歩にでも行ってこようかな。邸に居たらずっと転がっているようだ。』
「ふふ。では、すぐに支度させていただきます。」
『うん。お願い、佐奈。』


邸を出た青藍はふらふらと瀞霊廷を歩く。
貴族の邸がある一角を出て、目的もなく思うがままに。
雑貨屋や呉服屋をちらりと冷やかしながら。
そんな青藍だったが、その容姿で周りからの注目が集まる。


そして、知る人は朽木青藍であると知っているので、青藍に丁寧に一礼したり、お近づきになろうと青藍に話しかけてきたりする者もある。
そんな者たちを適当に相手にしつつ、躱しつつ、青藍はただふらふらと歩く。
時折、その辺の草木にも興味を引かれながら。


いい天気だなぁ。
でも、どうしてこうなるのやら・・・。
空を見上げて、その空の青さに清々しい気分になるも、自分の後ろをそれとなく付いてくる者たちに気がついて、青藍は内心ため息を吐く。
どうしたって僕は目立つらしい。


長身痩躯。
その青と藍の美しい瞳。
整った顔。
柔らかな雰囲気。
品のいい仕草。
そのすべてが揃っているのだから仕方がないのであるが。


『あれ・・・?』
そんな者たちから逃げつつ、ふらふら歩いていた青藍だったが、気が付くと、霊術院の前に居た。
『あはは。無意識って怖いなぁ。』
そう苦笑しつつも、逃げ込むのにはちょうどいいと、青藍はその閉じられた門を飛び越えた。


慌てて守衛が出てきたが、青藍の姿をみて苦笑すると、一礼する。
すでに顔見知りなのだ。
それほど、青藍がよく霊術院に顔を出しているからなのだが。
そんな守衛に笑いながら、青藍は持っていた菓子を渡して、中へと進む。


どうやら午後の実習が始まっているらしい。
あちらこちらから、木刀で打ち合う音や、鬼道を放つ音が聞こえてくる。
その音を聞きながら、青藍は同じく暇を持て余しているであろう睦月の元へ向かったのだった。

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