色彩
■ 17.空色の瞳

青藍の舞によって生まれた温かで柔らかな力が輝きを増し、黒い靄を浄化していく。
それと同時に、咲夜の動きが小さくなっていった。
そして。
咲夜の目から大粒の涙が零れ落ちる。
涙が零れ落ちると、瞳の中の闇が薄まって、本来の空色の瞳が見えた。


母上、戻ってきてください。
そこに居るのでしょう?
僕らの、光・・・。
咲夜の目からは涙が溢れ続け、止まる様子はない。
それを見た青藍は舞いながら咲夜に近付いていく。
そしてついに、咲夜の舞が止まったのだった。


『母上!僕が、解りますね?』
青藍の問いに咲夜は小さく頷く。
青藍はそれをみると、咲夜に笑顔を見せる。
『父上!!』
青藍に呼ばれて白哉はすぐに咲夜の元へと向かう。


『母上、父上ですよ。貴方の愛する、唯一の人です。』
近付いてきた白哉に咲夜は目を向ける。
「咲夜。」
白哉は静かにそう声を掛ける。
その声に咲夜はさらに涙を流した。


「・・・びゃく、や。」
そして小さく、そう言った。
「咲夜・・・。よく、帰ってきた。」
白哉はそう言って咲夜を抱きしめる。
白哉の言葉に、咲夜は腕の中で小さく頷いた。


「・・・怖かった。」
咲夜は小さくつぶやく。
「あぁ。」
「怖くて、どうしたらいいのか、解らなくて。」
震えながら、咲夜は言う。
「あぁ。」


「でも、帰りたいって、思って。闇の中を彷徨っていたら、温かい空気が流れ込んできて。私はそれを知っていた。知っていたんだ。それで、思い出した。私の、帰る場所を。そうしたら、光が見えて。だから戻ってこられた・・・。私は、独りではなかった。私には君たちが居た。私を愛してくれる人が居た。私は、そんな、君たちのいる世界が、好きだったのだ・・・。壊れてしまってもいい世界なんて、壊したい世界なんて、もう、何処にもない。」


「ようやく分かったのか、莫迦者・・・。」
白哉はそう言って小さく震えつつも、咲夜をきつく抱きしめた。
「怖かったのは、私の方だ。そなたは、いつもいつも、勝手にどこかへ行く。私を置いて。・・・一人で出歩くなといつも言っているだろう。」
「ごめん・・・。」


「私は心配で仕方ないのだぞ。」
「うん。」
「私は、また、失うかと・・・。」
そういう白哉の目から一筋の涙が零れる。


「ごめん。ちゃんと帰ってきたよ。私の帰る場所は、白哉の腕の中だ。君の隣が私の居場所だ。」
それに気が付いているのか、咲夜は白哉の背中に手を回して撫でた。
「当たり前だ。莫迦者。」
そう言って白哉は安心したように微笑んだのだった。


少し離れたところから、微笑みながら抱き合う両親をみて、青藍は漸く力を抜いた。
すると、足の力まで抜けて、青藍は落下を始める。
あれ・・・?
あぁ、そうか。
この三日間、一睡もしていない上に、卍解までしたからなぁ。
刑軍を躱すのにも神経使ったし。


さすがに、無茶だったかも。
僕、この高さからこのまま落ちたら、死ぬよね?
でも、もう何も考えられないや・・・。
卍解が解けて青藍の姿が本来の姿に戻っていく。
まぁ、誰かが受け止めてくれるだろう。
青藍はそう考えて、意識を手放したのだった。

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