色彩
■ 28.身代わり大作戦@

朽木咲夜拘束騒動から数か月。
尸魂界は平穏を取り戻していた。
青藍は相変わらず六番隊の第三席として、いつものように仕事をしていた。
あれから青藍の元には時々ナユラから文が届く。
彼女も相変わらず死神との交流を続けているらしい。
もちろん、適度な距離感で。


そして、橙晴はあの件で顔が表に出たために、朽木家の者だということが霊術院でもばれてしまったらしい。
お蔭で最近は何かと逃げ回っている。
護廷隊にもよく顔を出すようになっていた。
そんな折、またもや困りごとが発生したのだった。


ことの起こりは三日前。
女性死神協会が資金繰りに窮し、またもや人気の高い死神の写真集を出そうと企んだことから始まった。
当然のように、人気の高い白哉と青藍はその候補に選ばれてしまったのである。
始めは白哉へ書類でその旨をお願いしたのだが、もちろん白哉はそれを読むことなくごみ箱に捨てる。


その後も女性死神が総出で白哉を説得しようと試みるが、悉く失敗に終わる。
咲夜を利用して白哉を動かそうという企みも、咲夜が拒否したために失敗。
青藍もまた拒否の姿勢を崩さない。
よって、打つ手がなくなった彼女たちは、隠し撮りという強硬手段に出たのだった。


そのしつこさに白哉と青藍は辟易する。
また、彼女たちから逃げ回るのに忙しく、仕事にも支障が出る。
そして、ある手段に出たのだった。


睦月が霊術院で橙晴たちのクラスで授業をしていると、突然扉が開かれた。
そこには青藍の姿がある。
『やぁ、睦月。』
青藍はそう言って扉を閉めて当たり前のように教室に入ってくる。


その姿にクラスは騒然とする。
橙晴もまた青藍の姿をみて、驚愕した。
「青藍様・・・今は授業中にございます。」
睦月は青藍の姿に驚きつつも、何とかそんな言葉を紡ぎだす。


『うん。知っているよ。でも、ちょっと匿ってくれないかな。追われているんだ。あぁ、今日は橙晴も授業に出ているんだね。橙晴は偉いなぁ。』
青藍は橙晴を見つけて、暢気にそんなことを言う。
「兄様・・・。お仕事はどうなされたのですか?それに・・・その恰好は一体?」


長い黒髪。
黒い瞳。
そして、何より目を引くのが、死覇装の上に着ている白い羽織。
『あはは。これはまぁ、色々あってね・・・。僕は今、父上の身代わりになっているんだ。どう?似合う?』
青藍はそんなことを言ってくるりと回って見せる。


その背には六の文字が刻まれていた。
その羽織は間違いなく、六番隊隊長朽木白哉の隊長羽織であった。
『そして、僕の仕事はこの格好で女性死神協会から一日中逃げ回ることなんだよね。』
青藍は苦笑する。


白哉と青藍の作戦。
それは青藍が白哉の格好をして、女性死神協会から逃げ回り、その間に白哉が仕事をするというものだった。
女性死神協会の隠し撮りから逃げられる、かつ、仕事を滞りなく進めることが出来る唯一の手段だったのである。


「・・・なるほど。お二人とも苦労しますね。」
青藍の説明を聞いた橙晴が同情するように言う。
『あはは。全く、大変だよ。この鬘は暑いし、羽織を汚さないように神経使うし。』
青藍はそう言って鬘を外す。
「それで、何故ここに逃げ込んでくるのですか・・・。」
睦月が疲れたように言った。


『あは。ここしか逃げ場がなくなってしまってね。一番隊に隠れようと思ったら、山本の爺に見つかって怒られるし。二番隊は砕蜂隊長がいるでしょ?三番隊はイヅルさんと蓮が匿ってくれたけど、彼等にも女性死神協会の手が回ってきてね・・・。』
青藍はそう言ってため息を吐く。


『それで、四番隊には烈先生が居るでしょ?烈先生にやりなさいと言われたら逃げられなくなってしまうから、四番隊には行かずに、五番隊に行ったんだ。そうしたら、真子さんに「お前が隣に居るとオレがモテへんやろ」とか訳の分からないことを言われて追い出された。酷くない?』
「まぁ、それは仕方ないのでは?失礼を承知で言いますけど、真子さんよりも青藍兄様の方がモテますから。」


『そうかなぁ。それで、七番隊に行ったら狛村隊長は匿ってくれたのだけど、射場副隊長が、うっかり僕が居ることを話してしまったからまた逃げた。で、八番隊は七緒さんや晴さんが居るから飛ばして、九番隊に行ったのだけど、修兵さんが乱菊さんに買収されていてすぐに追っ手がかかってね。その後、十番隊に行ったら乱菊さんが仕事をサボっているものだから、冬獅郎さんがすっごく不機嫌でね・・・。僕、危うく氷漬けにされるところだったよ・・・。』
青藍はそう言って遠い目をする。

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