色彩
■ 25.大好きな世界

「白哉!」
青藍に手を引かれていた咲夜だったが、皆に近付くにつれ、青藍を追い越した。
そして青藍の手を放して、白哉に飛びつく。
「咲夜。」
飛びついてきた咲夜を白哉はしっかりと受け止める。


「・・・ただいま。また心配をかけた。ごめん。」
「構わぬ。何も言わずに逃げ出さなかっただけ、進歩が見えたからな。」
『そうですね。母上は、すぐにどこかに逃げてしまいますから。』
謝った咲夜をみて、白哉と青藍は苦笑する。


「そうそう。咲ちゃんってすぐにどっか行ってしまうんだから。」
「はは。そうだな。お蔭で俺たちは心配ばかりだ。」
「あはは。確かにそうですね。」
「本当ですわ。私、心臓が止まるかと思ったもの。」
「うん。僕も。母上はびっくり箱みたいだ。」
「ははは。たしかに。そんな咲夜さんを妻にするなんて、ご当主にしか出来ない。」


「皆して好き勝手言ってくれるな。」
咲夜は苦笑しつつ白哉から離れて、そこに居る面々を見渡す。
「また心配をかけた。すまない。・・・でも、助けてくれると信じていたよ。助けてくれて、ありがとう。私は、君たちが、君たちが居る世界が、大好きだ。私が壊れてしまえばいいと思った世界は、君たちが壊してくれた。本当にありがとう。」
咲夜は柔らかく微笑んだ。


「それが解っているなら良い。何度だって助けてやる。」
「そうですね。まぁ、何度もあると困りますけど。」
「あはは。そうだね。」
「次があっても逃げたりするなよ。俺たちはお前の味方なんだから。」
「あぁ。ありがとう、皆。」
そう言って微笑んだ咲夜に、皆が安心したように微笑んだ。


「・・・咲夜。」
それを見ていた十五夜が咲夜の名を呼ぶ。
「はい、大叔父様。」
「今回はこの程度で済んだけど、あまり無茶はしないように。」
「はい。」


「それから、今回のことで、君への処罰は何もない。これまで通り、ここに居ることを許す。死神として、朽木家の者として、しっかりと務めを果たすように。」
「はい。今後もこの尸魂界のために尽力いたします。ここに居る大切な者たちと共に。」


「それならいい。じゃあ、僕は帰るよ。雑用とやらを片付けなければならないからね。・・・そうそう。弥彦、君は私に付いてきなさい。霊王様が君の笛の音をご所望だ。」
「えぇ・・・。またですか。私、霊王宮に行くと、肩が凝ってしまうのですが。」
弥彦は不満げに言う。


「僕は君ほど霊王宮で寛いでいる客人を知らないけどなぁ。」
「そうですか?私はいつも緊張して頭が真っ白になりますよ。」
「あなた、嘘はおやめなさいな。霊王宮で昼寝をするような人が何を言っているの。つべこべ言わずにさっさとお行き。」


「天音まで・・・。いつもは家に帰らないと文句を言うくせに。」
「霊王様が相手では違います。響鬼、弥彦を連れて行きなさい。」
「はい。ほら、行きますよ。」
響鬼はそう言って弥彦を掴む。
そして空間を開いた。


「では、皆様。僕たちはこれで失礼します。」
「またね。・・・弥彦。そんな顔で霊王様の御前に立つなど、この僕が許さないよ。」
「はいはい。解りました。・・・行きたくないなぁ。」
そう言って三人は姿を消した。


「さて、私も帰りますわ。どうやら刑軍に邸を荒らされたようですし。この件についての後片付けもありますからね。」
「叔母上。お手数をおかけします。・・・拘束されている間、乱暴にされたりはしませんでしたか?不自由な思いをなさったとか。」


「大丈夫ですよ。今回、私の仕事は大人しく捕まることでしたから。それに、橙晴様が世話係の隊士に化けて、状況を逐一報告してくださいました。色々と気も回していただいたので、何の不自由もありませんでしたわ。」
天音はそう言ってころころと笑う。
「そうでしたか。それは良かった。」
咲夜もまたそう言って笑う。


「今後も、何かあればすぐにご相談くださいね。咲夜殿も、白哉様も、その他の皆様も。漣家は貴方方が漣家の仲間である限り、貴方方の力になりましょう。」
「ふふふ。それは頼もしい。」
「では、失礼いたします。」
天音はそう言って一礼すると去っていく。

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