色彩
■ 20.変わらねばならぬ

「・・・とまぁ、長々と話したわけだが、君たち、これを聞いてどう思うかね?」
十五夜は楽しげに四十六室の者たちの顔を見た。
「十五夜様、発言の許可を出していないのに質問をするのは酷でしょう。」
「あぁ、そうだったね。発言を許可するよ。まぁ、まともに話せるものが居るとは思わないけれどね。」
意地の悪い笑みを見せて十五夜は言った。


「つまり、謀反人は我らの方だと言いたいのだろう?」
しかし、そんな十五夜の予想に反して、凛とした声が、その場に響いた。
「おや?四十六室にも物分かりの良いものが居るらしい。」
その声に、十五夜は意外そうに言った。
「そのようですね。」


「・・・その通りだよ、阿万門ナユラ。そうか。君は珍しくも死神と交流があるのだったね。もしかすると、咲夜のことも聞いていたのかな。」
「何度か。・・・此度のこと大変申し訳ない。止められなかった私にも咎がある。特に漣、朽木両家には多大なご迷惑をお掛けした。私が謝って済むものではないが、謝罪する。そして事態を収束し、我らの命を救ってくださったこと、深く感謝する。」
ナユラはそう言って頭を下げた。


「待て!そなたは我らが間違っていたと申すのか!!」
そんなナユラを責めるように声が掛かる。
「私が言っているのではない。霊王が言っているのだ。」
ナユラは呆れたように言う。
「「「なに・・・?」」」


「これだけ聞いて、まだ解らぬのか。霊王の意思は朽木咲夜を利用することでも、害することでもない。朽木咲夜を守ることだった。我らは間違っていたのだ。我らは、何一つ、霊王の意思など受け取ることが出来ていなかったのだ。この様で我ら四十六室は霊王の一部だなどとよく言えたものだ・・・。」
吐き捨てるように、ナユラは言った。


「我らは無知だ。尸魂界の法を司る我らが、これほど無知とは。これほど無知な我らが、どうして裁くことが出来ようか。」
「それでも我らは多くの死神を裁いてきた!そこに間違いはなかったはずだ!」


「では、私たちはその死神の何を知っているのだろうか。そなたらはそこに居る死神たちが日々何を思い、何を抱え、何を背負っているのか、知っているのか?我らに、戦いの中で腕をもがれる痛みが解るのか。肉を裂かれ血を流す痛みが。目の前で仲間が死んでいく痛みが。日々、自らの命が危険に晒される恐怖が。」
ナユラは相手をひたと見つめて言う。


「解らぬだろう。我らは地下に籠り、争いが起これば死神に対処を命じるだけだ。見てみろ。我らは腕の骨が折れただけで身動き一つとることが出来なくなる。少し血が流れただけで顔を青くして縮み上がる。刃を向けられただけで震えあがる。」
そう言ってナユラは怪我をして呻いている四十六室の者たちに視線を向ける。


「しかし、そこに居る死神たちはどうだ。片腕が使えなくなろうと、出血が多かろうと、刃にその身を貫かれようと、無茶をしてでも大切なものを守ろうとする。それこそ、自らの命を懸けて。」
「それが護廷隊の務めだ!我らはその護廷隊よりも上の立場なのだから当然だ!」


「だが、彼らがそこまでするのは我らのためではない。死神たちは我らが思っているほど、我らに興味などないのだから。我らはそれに気が付かなかった。いや、気付いていながら気付かぬふりをした。・・・我らは、死神が怖かったのだ。我らに見向きもしない死神が。日々変化する死神が。」
ナユラの言葉に彼らは言葉を失う。


「我らは間違えたのだ。過ちを認め、変わらねばならぬ。これ以上世界に置いてきぼりにされては・・・我らの存在価値はなくなってしまうのだ。」
ナユラはそう言って俯く。
「・・・死神たちが本気になれば、我らなどすぐに潰される。」
そう言って一息つくと、ナユラは顔を上げた。


「四十六室はまたもや全滅するぞ!ここで過ちを認めなければ、我らは彼の者たちの二の舞になるのだ!あの件で我らは何を学んだのだ!我らの力がどれほどちっぽけなものであるか、学んだのではないのか!それなのに、我らは何も変わっていないではないか!今変わらなければ、あの時死んだ私の父を含め、我らの前任者たちは無駄死にになるのだ!それでもいいというのか!・・・変わらなければ、我らに未来などありはしない!今の我らに、尸魂界は守れないのだ!この世界に安寧をもたらすなど、今の我らには出来ないのだぞ!!」
彼女の叫びに、その場に沈黙が降りる。

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