色彩
■ 18.到着

「「青藍!?」」
落下を始めた青藍に浮竹と京楽は驚いたような声を上げて青藍の元へとむかう。
しかし、二人が青藍の元にたどり着く前に、青藍の体がふわりと浮きあがった。
そして、ゆっくりと地面に向かって降りていく。
その下にはいつの間にか十五夜と響鬼が居た。


それをみた浮竹と京楽は、目を丸くしながらも地上に降り立つ。
十五夜の手の中にある春乃嵐が、ふわ、と風を送り出した。
青藍は真っ直ぐに十五夜の腕の中に降りてくる。
十五夜はそれを大切そうに受け止めた。


「よく頑張ったね、青藍。ありがとう。我らが、愛し子よ・・・。」
青藍にそう小さく声を掛けて、十五夜は浮竹と京楽を見る。
「この子を寝かせてやりなさい。」
十五夜はそう言って青藍を二人に渡す。
それを見たルキアと睦月は駆け寄った。


「「青藍!」」
青藍の青白い顔に、ルキアは泣きそうになる。
睦月もまた、焦ったように青藍の容態を確認する。
「睦月、青藍は?無事なのか!?」
そして青藍の様子をみている睦月につめよった。


「・・・信じられない。」
睦月は一通り青藍をみて、力を抜くと、呆れたように言う。
「睦月?青藍は・・・?」
睦月の様子にルキアは首を傾げる。
「心配するな。・・・眠っているだけだ。」


「・・・え?」
睦月の言葉にルキアは呆けたような表情になる。
「だから、青藍は眠っているだけだ。たいした怪我もしていない。」
「・・・えぇ!?」
睦月の言葉を理解したルキアは驚きの声を上げる。


「あはは。この状況で寝ているだけって。」
そんな青藍を京楽は面白そうに覗き込む。
「流石というか、なんというか・・・。」
浮竹は苦笑する。


「でも、疲れたんだろうね。」
「そうだな。こんなに青い顔をして・・・。隈まで出来ているじゃないか。」
「この三日間、寝てないのかもしれませんね。」
「全く、心配をかけおって・・・。」
ルキアがそう言って青藍の頬を突くと、青藍はくすぐったそうに身じろいだ。


「大叔父様。申し訳ありません。ご迷惑をおかけいたしました。」
白哉とともに空中から降りてきた咲夜が十五夜の前に片膝をついて頭を下げる。
「咲夜。頭を上げなさい。君のせいではない。それに、僕は君の力になると約束したのだから、迷惑などではないよ。」


「そうですよ。咲夜様、顔を上げてください。・・・まだ、その身の内に穢れが残っているようですね。僕が払いましょう。」
響鬼に言われて咲夜が顔を上げると、響鬼はその額に手をかざした。
「汝、闇に住まうものよ。光に敗れた者よ。我が器から離れよ。光と闇の争いは既に終わりを迎えた。」
響鬼が唱えると、咲夜の体から黒い靄のようなものが出てくる。


「気持ち悪いな・・・。」
咲夜は思わずそう呟く。
「彼の魂よ、安らかに。光ある世界に行きたまえ。」
そういって、響鬼が手を叩くと、黒い靄は光を放ちながら霧散した。


「これでいいでしょう。咲夜様、これで穢れから生じた闇は払いました。貴方様の身に宿る闇は、咲夜様自身が持っておられる闇だけにございます。ですがそれは咲夜様がご自身で払わなければならぬ闇。その闇に飲まれることなきよう、お気を付けください。」


響鬼はそう言って咲夜を見つめる。
その瞳は紅に染まっていた。
「はい。肝に銘じます。」


「ですが、その闇を咲夜様がお一人で抱える必要はありません。貴方様はもう一人ではありません。愛し、愛される。今の咲夜様ならばそれも出来ましょう。貴方様が愛し、貴方様を愛する者たちが、咲夜様の光となりましょう。当然我らも、貴方様の幸せをお祈りいたします。」
そう言って一礼すると、響鬼の瞳も元に戻ったのだった。

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