色彩
■ 13.取り戻す

白哉は落下していく橙晴を目の端で捉えていた。
しかし、容赦のない攻撃を加えてくる咲夜を前に橙晴を助けに向かうことも出来ない。
斬魄刀を解放したところで、相手が咲夜では意味がない。
鬼道も通用しない。
白哉は内心で舌打ちをする。


私が、守り切れていれば。
そんな考えが頭の中に浮かぶ。
私が守り切れていれば、咲夜が闇に染まることなどなかったのに。
咲夜の瞳を見て白哉は奥歯をかみしめる。


「咲夜、目を覚ましてくれ・・・。」
白哉は思わずそう呟く。
あの、悪戯に輝く、空色の瞳が見たくて堪らない。
凛とした声が聴きたくて堪らない。


そなたは今、何処に居るのだ・・・。
問いかけるように咲夜の瞳をみても、そこには闇があるだけである。
そなたの闇は今でもそんなに深いのか。
私ではそなたは救えないのか。


咲夜の攻撃を受け止めた左腕が嫌な音を立てる。
それでも白哉は気にすることなく咲夜の攻撃を受け続ける。
咲夜、お前はこの世界が好きではないのか。
未だに滅びてもいいと思うのか。


そなたは幸せだと言った。
あれは、心からの言葉ではなかったのか。
何故それを壊すようなことをしているのだ。
応えてくれ、咲夜・・・。


私は、そなたを愛しているのだぞ。
青藍も、橙晴も、茶羅も、浮竹も、京楽も、睦月だって。
多くの者たちがそなたを愛しているのだぞ。
そなたも私たちを愛してくれていたのだろう?


その私たちが居る世界を、何故、壊す必要がある?
咲夜、この世界はそなたが守りたかった世界ではないのか。
ただ、壊れてしまえばいいと思うだけの世界だったのか。
どれだけ問うても咲夜の瞳には闇しか映らない。


私は何と無力なのだろう・・・。
右手に握っていた斬魄刀が弾き飛ばされる。
それでも咲夜は手を止めなかった。
「咲夜・・・。」


鋭い蹴りが、迫ってくる。
それを受け止める術を今の白哉は持たなかった。
あぁ、落ちる。
そう思ってすぐに来るであろう衝撃に備えたのだった。


浮竹と京楽は咲夜に攻撃を加えられて落下する白哉をみて、慌てて瞬歩を使って彼を受け止めた。
「大丈夫かい?ずいぶんやられているねぇ。」
「白哉相手でも、漣は容赦がないらしい。」


「京楽、浮竹。」
白哉は苦しげに声を出す。
「咲夜は・・・私たち諸共世界を壊す気だ。まだ、それ程までに、世界が憎いのか・・・?」
暗い咲夜の瞳に映っていたのは、絶望と、憎悪。
愛する者のそんな姿に、それを救えていない自分自身に、白哉は心が折れそうになる。


「珍しく弱気だな。お前がそんなんだと救えるものも救えなくなってしまうぞ。今、青藍から話を聞いてきた。霊妃は、お前が漣を世界に繋ぎとめていると言っていたらしい。だから、お前に今倒れられては困るんだよ。漣が、元に戻った時のためにも。」
浮竹が諭すように言った。


「そうそう。青藍たちがどうすれば咲ちゃんを止めることが出来るか、考えてくれている。僕らはその答えが出るまで持ちこたえないと。挫けている場合じゃないよ。」
「さぁ、白哉。お前がやるべきことは、漣を繋ぎとめることだ。俺たちも力を貸そう。まずは漣を取り戻すぞ。そしたらお前が思いっきり漣を叱ってやれ。」


「それで、思いっきり抱きしめてあげるといい。この世界は咲ちゃんを必要としているし、咲ちゃんはこの世界を必要としている。それを朽木隊長がしっかり教えてあげなくちゃ。ほら、斬魄刀を握って。腕が折れたくらいで動けなくなるほど、君は弱くないだろう?」
京楽はそう言って千本桜を白哉に握らせて、挑戦的な目を向けた。


「・・・当然だ。私を誰だと思っているのだ。」
その視線を受けて、白哉の瞳に力が宿る。
そして、しっかりと斬魄刀を握りしめた。
「それでこそ、朽木隊長だよね。」
「はは。そうだな。じゃあ、行くか。」
浮竹の言葉に、三人はそれぞれに動き出した。

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