色彩
■ 11.穢れた巫女

卍解で戦っているのに、ここまでやられるとは・・・。
咲夜と向き合いながら、青藍は内心で呟く。
そして浮竹と京楽の方をチラリと見やり、四十六室の者たちがすでに避難したことを確認する。


これからどうするべきか。
母上を元に戻すにはどんな手段があるだろう。
恐らく、母上は集められた穢れを体内に取り込まされたのだ。


咲夜の相手をしながら、闇に染まった瞳を見て、青藍は考える。
すると、咲夜の打撃を避けた瞬間に隙ができ、咲夜がその隙を突いて鋭い蹴りを繰り出す。
それをもろに喰らった青藍はあっという間に地面に叩きつけられた。


しまった。
息が出来ない。
そう思う間もなく、咲夜が目の前に迫ってきていた。


その刹那。
青藍の目の前が真っ白に染まる。
その背には六の文字。
『ちち、うえ?』
「無事か、青藍。」


『・・・はい。』
白哉が咲夜の攻撃を受け止めたのだ。
青藍の返事を聞くと、白哉は霊圧を上げて咲夜を弾き返す。
そのまま跳ね上がった咲夜を白哉はすぐに追った。


「青藍兄様、大丈夫ですか?」
橙晴がそう言って地面に打ち付けられた青藍の顔を覗き込む。
『橙晴・・・。』


「無茶なことをしますねぇ。・・・兄様はこれでも飲んで休憩しつつ、母上がどうやったら自我を取り戻すか考えてください。」
橙晴はそう言って睦月特製栄養ドリンクを青藍に渡すとすでに咲夜と戦っている白哉の元へと向かって行った。


どうすればいいのだろう。
橙晴から貰った栄養ドリンクに悶絶しそうになりながらも、青藍は考える。
穢れを払うには清浄なものが必要だ。
だが、あの母上が穢れで自我を失っているのだ。
そんな穢れを払うためには普通の清浄さでは無理だろう。


母上の舞ならば、可能だろうが・・・。
古から穢れを払うと言われているのは、水晶に、流れる水、鏡、光・・・。
そこまで考えて、青藍は気付く。
雷というのは場を清めるものではなかったか。


そんな青藍の目の前に、橙晴が落下してくる
そして、地面に叩きつけられた。
『橙晴!!』
青藍は橙晴に駆け寄った。


「にい、さま・・・。やっぱり、母上は、つよい、ですね。」
息を切らしながら橙晴は言う。
『頭は打っていないね?』
「はい・・・。」


『それはよかった。じゃあ、交代だ。橙晴は少しお休み。いま、烈先生の元に連れて行くから。』
青藍はそう言って橙晴を抱き上げる。
「すみません、兄様。僕、役立たず、ですね・・・。」
橙晴を抱えて走る青藍に、橙晴は申し訳なさそうに言った。


『そんなことはないよ。橙晴のお蔭で僕はまた戦える。』
「にい、さま。母上を、助けてください。僕では、力不足です。あんな母上をみるのは、辛いです。母上に、この世界を壊させては、いけない・・・。」
橙晴はそういうと、意識を失った。


『橙晴!!烈先生!!橙晴を、お願いします!!』
青藍が叫ぶと、卯ノ花がすぐさま現れる。
「任せてください。・・・気を失ったようですね。骨が折れています。勇音、頼みますよ。私は青藍を治します。」
卯ノ花は勇音にそう言って橙晴を彼女に引き渡す。


『いえ、僕は早く父上の所に行かないと。』
青藍はそう言って踵を返そうとする。
「青藍、待ちなさい。」
卯ノ花はそんな青藍を止める。


「霊圧だけでも回復させます。ふらふらじゃありませんか。」
『でも、父上が!』
青藍は焦っているが、卯ノ花の視界の端に映る白哉は、未だ始解すらしていない。
剣の巫女の力が戻っている以上、始解も卍解も無意味であるために、霊圧を上げることで持ちこたえているようだった。


「朽木隊長なら大丈夫です。・・・隊長を信じるのも、三席の役目ではありませんか?」
『・・・。』
卯ノ花に言われて、青藍は黙り込む。
「青藍、このまま戦い続けても、咲夜さんを助ける方法が見つかる訳ではありません。違いますか?」


『でも、早くしないと、母上が、世界を壊してしまう・・・。父上が負けて、母上が、舞を舞ったら、駄目なのです。それは、いつもとは逆の舞になってしまう。世界を清浄にするものではなく、世界を穢すものになってしまう・・・。』


・・・霊妃様の言ったとおりになってしまう。
青藍の脳裏に漣家で霊妃に見せられたものが、フラッシュバックする。
ぞっとする光景だった・・・。
珍しく取り乱した青藍に卯ノ花は目を丸くした。

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