色彩
■ 9.卍解

『これで、僕は母上に集中できます。』
「だが、漣は隊長格以上だぞ。あれじゃあ、始解では敵わないだろう。この霊圧だぞ?」
『まぁ、そうですね。だから・・・卍解をします。』


「「「卍解!?」」」
青藍の言葉に三人は目を丸くした。
『はい。実は習得していたんですよねぇ。まだちょっと不安定ですけど、仕方ありません。卍解でもしないと霊圧だけで負けてしまう。なので、冬獅郎さん、ご協力を。』


「解ったよ。じゃ、俺も卍解しねぇとな。」
『えぇ。よろしくお願いしますよ、冬獅郎さん。』
「あはは。流石青藍だねぇ。」
「はは。そうだな。」


『父上を追う者ならこのくらいのことが出来て当然です。・・・それでは皆さん、行きますよ。』
「行くぜ。」
「じゃあ、行くかぁ。浮竹。」
「あぁ。」


四人は青藍と冬獅郎、浮竹と京楽に分かれてそれぞれの場所へと向かう。
青藍と冬獅郎は真っ直ぐに咲夜を目指した。
『冬獅郎さん、母上が怖くはありませんか?』
「いや。」
青藍の問いに冬獅郎は短く答える。


『それは良かった。母上に恐怖を感じて動けなくなりそうになったら、すぐに母上から距離をとってくださいね。』
「了解。じゃ、俺とりあえず、この辺に居るわ。ここなら瀞霊廷を見渡せる。」
冬獅郎は立ち止まり、塔のてっぺんに立つ。


『はい。頼みます。』
青藍はそう言って再び走り出す。
「卍解、大紅蓮氷輪丸!」
その青藍の背後でそんな声が聞こえた。


咲夜の目の前に来た青藍はそこで立ち止まった。
『母上、お相手、お願いいたします。』
青藍はそう言って斬魄刀を抜く。
そのまま腕を伸ばすと、刃を横にして解号を唱えた。


『卍解・・・火雷大神。』
青藍がそう言うと同時に、霊圧が跳ね上がり、斬魄刀が砕け散って、雷が青藍の周りに散らばった。
暗雲が青藍の頭上を中心にして呼び寄せられるように集まってくる。
その雷をつなぐようにして純白の衣が現れて青藍の体を包み込む。
それと同時に、青藍の瞳は金色に輝く。
髪もまた、長くなると同時に、金色に輝いた。


その姿にその場にいた隊長格たちは思わず見とれる。
貴族の正装のような、輝くような白の羽織。
その胸元には金色に輝く文字の彫られた飾りがある。
青藍が少し動くと、それが揺れて、鈴のような澄んだ音をたてるのだった。


そんな中、すでに卍解していた冬獅郎は集まる雲の様子を見て、行動を開始する。
雷鳴が轟き、今にも落雷が起きそうな空模様である。
やっぱり彼奴、性格悪いだろ。
誰だよ彼奴のこと優しいとか言った奴は。

「どう考えても優しいやつの斬魄刀じゃねぇ。」
そんなことを愚痴りながらその天の全てを自らの支配下に入れるために、氷輪丸を構えた。
雪雲と雷雲がぶつかり合って、天気は大荒れとなる。


近くに現れた大きな霊圧に反応したのか、咲夜は青藍に向かって鬼道を放つ。
青藍は左手を伸ばしてそれを避けることなく受け止めた。
それまで瀞霊廷を一撃で大破させていた咲夜の鬼道をいとも簡単に。
受け止められた鬼道は青藍の手の中で小さくなって、静かに消える。
そして、青藍は咲夜の方へと歩みを進める。


『母上。穢れに支配されてはいけません。どうか、僕の声を聴いてください。』
青藍はそう言って咲夜に近付いていく。
咲夜の闇に染まった瞳を真っ直ぐに見つめて。
聞こえていないのか、咲夜は次々と鬼道を放ち続ける。


それでも青藍は歩みを止めない。
咲夜と青藍の距離が後数歩という所になって、咲夜は鬼道を放つのをやめ、青藍に鋭い拳と蹴りを繰り出し始めた。
青藍もそれに反応して、恐ろしい速さの打ち合いが始まる。

[ prev / next ]
top
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -