色彩
■ 7.頭を抱えたい

咲夜が拘束されて三日目の昼。
京楽は漸く許可が下り、四十六室に向かっていた。
「八番隊隊長、京楽春水だ。」
扉の前で名乗ると、内側から扉が開かれる。


京楽が足を踏み入れると、その中央には咲夜が横たわっていた。
それを見た京楽は目を見開いて、どういうことかと六人の賢者と四十人の裁判官を見回した。


「・・・これは一体、どういうことなのかな。」
京楽は静かに問いかける。
「発言の許可を与えた覚えはない。」
その言葉を皮切りに京楽に次々と身をわきまえろとの声がかけられる。


「そちらが黙り込んでいるから、僕が発言しただけだよ。この度の朽木咲夜拘束について、説明して頂きたい。」
その声を遮るように京楽は言った。


「・・・朽木咲夜には、前々から謀反の疑いがあった。四十六室として疑わしいものを野放しにしておくわけにはいかぬ。」
「朽木咲夜の力は強大だ。」
「だから、彼女を捕まえたってわけね。証拠はあるのかい?」
京楽は静かに問うた。


「この者は我ら四十六室に恨みのある者。過去に四十六室に逆らったものである。そんな経歴を持つ者が、朽木家と結びついた。さらに力を欲したのだ。これが謀反の用意でなくてなんだというのだ。」


その言い分に、京楽は内心で深いため息を吐いた。
それってつまり・・・。
復讐が怖いから捕まえたってことだよね。


「それでも彼女は死神となって戻ってきた。これまでの様子を見ても、尸魂界のために問題なく働いていると思うけど。」
「それもいつまで続くか解らぬ。何かあってからでは遅いのだ。よって、朽木咲夜は我ら四十六室が身柄を引き受ける。」


「それで、彼女が大人しく従うと?」
「この者を抑える術は用意した。この者は我らのために働くだろう。」
・・・橙晴の予想が当たりそうだね。
京楽は内心で今後起こるであろうことを考えて本気で頭を抱えたくなる。


その時、それまで横になっていた咲夜が急に起き上がった。
「おぉ、我らが巫女のお目覚めだ。」
「これで朽木咲夜は決して我らを裏切らぬ。」
そんな声が室内に響き渡る。


しかし。
起きあがった咲夜を見て、京楽は身の危険を感じた。
本能的に咲夜から距離をとる。
その瞬間、咲夜が天井に向かって鬼道を放った。


四十六室の天井は吹き飛び、賢者たちは慌てふためく。
いつもと違う様子の咲夜に京楽は反射的に四十六室を飛び出した。
「誰か!あれを止めろ!!」
「謀反じゃ!謀反じゃ!!!」
そうして四十六室から護廷十三隊に緊急の救援要請が発せられたのだった。


『間に合わなかったか・・・。』
四十六室の前まで来ていた青藍はその様子を見て呟く。
そして、飛び出してきた京楽に気が付いて彼の傍へと近寄った。
『春水殿。』


「青藍?今までどこに居たの?」
京楽は青藍の姿を見て目を丸くする。
『あはは。漣家に行って霊妃様にお会いしてきました。十五夜様にも連絡を入れたのでそのうち来られると思います。四十六室の方々には少々痛い目に遭っていただきましょう。』


「あぁ、うん。正しい権力の使い方だよね・・・。」
楽しそうに笑う青藍から目を背けつつ、京楽は言う。
『ふふふ。十五夜様は実は偉い方ですからね。きっちりと躾けてもらいましょう。』
笑ってはいるが、目が怖い。
京楽はまたもやこの後起こるであろうことを予想して頭を抱えたくなる。

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