色彩
■ 5.頭の痛い状況

「それで、これは父上の着替えです。・・・父上はどうしていますか?」
橙晴は声を潜める。
「いつも通りさ。ただ・・・昨日は一睡もしていないようだね。」
「そうだと思った。じゃあ、これ、飲ませておいてください。睦月特製栄養ドリンクです。どうせ寝ろと言っても眠らないでしょうから。」
そういって橙晴は何色とも言い難い色の液体が入った瓶をとりだす。


「・・・これ、飲んでも大丈夫なの?」
京楽が怪訝そうに瓶を見つめる。
「睦月が作っているのを僕が見ていましたから、まぁ、大丈夫でしょう。変なものは入れていませんでしたし。味が悪いのはの嫌がらせです。」


「君たち、本当にいい性格してるよね・・・。こんな時だっていうのに。」
きっぱりと嫌がらせだと言い切った橙晴に、京楽は苦笑する。
「こんな時だからこそ、ですよ。・・・十四郎さんからは何か知らせが来ましたか?」
「それがねぇ・・・。どうやら、今回の咲ちゃんの拘束は四十六室の総意ではないらしい。」


「総意でない?ということは、四十六室内では意見が割れていると?」
「そうみたい。だから、咲ちゃんを捕えたはいいけど、扱いに困っているようだよ。」
「では、母上は今のところ無事と考えてもいいのですね?」
「そうだね。とりあえず今は何もされては居ないと思うよ。今後どうなるかは解らないけれど。」


「ただ・・・。」
橙晴はそう言って口籠る。
「どうしたんだい?」
「母上の気配が感じられないのが気になります。いつもなら霊圧を消していても眠っていても気配はあるんです。父上は何か言っていませんか?」


「うん。朽木隊長も同じことを言っていたよ。千本桜で呼びかけても答えがないって。僕もやってみたけど、返事はなかった。」
「それは変ですね。母上の剣の巫女の力が使えないなんて・・・。後で一応僕も斬魄刀で声を掛けてみます。」
橙晴はそう言って考え込む。


「もしかすると・・・。」
暫くして何か思いついたように言った。
「なんだい?」
「母上は意識がない状態にされている・・・?流魂街で穢れを集めよ、という妙な誘いがあったそうです。そしてその期日は昨日だった・・・。」


「そう言えば、漣家の巫女は清浄さが武器だったね。」
「特に母上は清浄すぎて他の者が近寄れない。もし、四十六室の者たちがそうなのだとしたら・・・。」
「咲ちゃんを穢して利用するだろうね。」


「「ということは・・・。」」
二人はそう言って顔を見合わせる。
「母上が暴走する危険がある・・・。」
「そうだね。つまり、僕らは急がなければいけない。」


「なんだか頭の痛い状況になってきましたね・・・。」
「そうだね・・・。」
橙晴と京楽はそう言って遠い目をする。


「とりあえず僕は十三番隊に行ってきます。十四郎さんにこのことを知らせなければ。ルキア姉さまも心配ですし。青藍兄様が来たら、一応兄様にも伝えておいてください。まぁ、兄様はその結論に自分でたどり着いているかもしれませんが。」
橙晴は切り替えたようにそう言って立ち上がる。


「うん。頼んだよ。・・・青藍は一体何をしているの?」
「まぁ、いろいろと。ちゃんと仕事をしていることは確かです。春水さんもちゃんと仕事してくださいね。それから、父上のこと、よろしくお願いします。栄養ドリンクは無理やりにでも飲ませてください。母上が暴走したときに父上が倒れていたのでは話にならない。」


「あはは。確かにそうだ。七緒ちゃんにも言っておくよ。」
「ではよろしくお願いします。僕はこれで。」
橙晴はそう言うと、京楽の返事を待つことなく部屋を出て行ったのだった。

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