色彩
■ 3.予想通り

「他の隊長たちはどうしている?」
『一番隊、二番隊、八番隊は動いているようですが、他の隊長たちは普段通り執務をこなしておられます。母上とはかかわりの深い方ばかりなので、動かない方が得策だと考えているのでしょう。十一番隊と十二番隊は興味すらない様子ですね。』


青藍は伝令神機のようなものを見ながら言った。
喜助特製なので技術開発局の監視が入らないようになっているのだ。
『まぁ、母上はすでに拘束されているわけですから、動きようがありませんけど。あぁ、それから流魂街で薬師をやっていた弥生さんに妙な誘いがあったようです。』


「何だ?」
『穢れを集めて欲しいと。』
「この件と関係があるのか?」
『その期日が、今日なんですよね。で、とりあえず、師走さんに持って行ってもらいます。関係があるのならば、母上と接触できるかもしれないので。』


「そうか。睦月は?」
『睦月はあらゆる状態に対処できるように医療道具を揃えて待機していますよ。相手が母上をどのように利用しようとしているのかはまだ解りませんが、あの母上が大人しく相手の言うことを聞くとも思えませんからね。でも、それなら母上には逃げるという選択肢もあったはずなのですが・・・。』
青藍は首を傾げる。


「そうだな。・・・それをしなかったのは、咲夜が成長したということだろう。」
『どういうことです?』
「私たちが助けに行くのを待っているのだ。漸く、私たちを頼るようになったらしい。急に姿を消すなと皆で散々言い含めたからというのもあるだろうが。」
白哉はそういって苦笑する。


『では、その期待に応えなければなりませんね。』
そんなことを聞いたら、母上を切り捨てることなどできまい。
青藍は内心苦笑する。


着替えを済ませた白哉は青藍をひたと見つめる。
その瞳を見て、青藍は咲夜を助ける覚悟を決めた。
咲夜を助けて、その後にどんな苦難があろうと、皆で乗り越えて見せよう。
必ずすべてを守り抜いてみせる。


だから、咲夜を切り捨てることなど絶対にあってはならぬ。
父上の瞳がそう語っているのだ。
それを感じて、青藍は、最悪の場合になったら母上を切り捨てる、という考えを捨てた。


「青藍。」
『はい。』
「任せるぞ。三日だ。三日以内に咲夜を取り戻せ。これは、朽木家当主からの命である。」
『御意。』
そう返事をして一礼すると、青藍は姿を消したのだった。


白哉が一番隊に行くと、京楽、山本両隊長によって拘束された。
一番隊舎にて、雀部、伊勢両副隊長の監視下に置かれている。
そしてその日のうちに、六番隊、十三番隊には刑軍の調べが入った。
勿論、謀反の証拠などはなく、刑軍の手は朽木邸、漣邸にまで伸びた。


これに対し朽木家は猛抗議。
明白な証拠がなければ調べることは罷りならぬ、と警備を厳重にし、現在も刑軍との睨み合いが続いている。
漣邸の捜索は行われたが謀反の証拠となるものは発見されなかった。
刑軍は漣弥彦が証拠を持ち去った可能性があるとして弥彦の追跡を開始する。


この時、青藍、橙晴、茶羅は水面下でそれぞれに動いていた。
朽木白哉、朽木咲夜の子どもたちである彼らにはまだ何の力もないというのが四十六室、刑軍の見解であり、もし謀反に協力していても大した敵にはならないという判断が下されていたのだ。


それ故、所在の分からなくなっていた六番隊の第三席である朽木青藍の捜索は後回しにされていたのである。
状況は全て青藍の予想通りに動いていた。

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