色彩
■ 2.最悪の場合

白哉と話しながら、青藍は最悪の場合を考えていた。
最悪の場合。
それは、謀反の疑いが朽木家全体にかけられ、四十六室に自分たち家族、および朽木家の家臣が拘束されること。


その時は・・・母上を切り捨てる。
僕らがこの件で知らぬ存ぜぬを貫き通し、謀反は母上の単独だということを知らしめ、母上の擁護に回らなければ、朽木家自体は何の咎めもないだろう。
その場合、自分たち家族が漣家からどんな罰を下されるか、知らない青藍ではなかったが。


だけど・・・自分たちの命と、数千、数万の民の命を秤にかけて、どちらの方が重いかは明白だ。
朽木家の人間が朽木の民を守らなくてどうする。
朽木の血が絶えようと、せめて家臣たちだけでも残っていれば、領地や民の管理は問題なく行われるのだ。


しかし、白哉がそんなことをするはずがないことを、青藍は重々承知していた。
それでも・・・。
もしもがあれば、朽木家全体が無事では済まない。
青藍は、そこまで考えて、自分自身が怖くなる。
・・・僕は、家のために親を切り捨てることすら考えるような奴なんだ。
それがどういうことなのか、理解しながら。


でも僕は、朽木家に生まれた以上、民を守る責任を負っているのだ。
当主だとか、そういうことは、関係なしに。
僕は、僕らは、民を守る責任があるのだ。
僕らが何不自由なく、贅沢をして暮らせるのは、その責任があるからなのだ。


「・・・私に、何もするなというのか。咲夜が拘束されているのだぞ。」
白哉が呻くように言う。
彼もまた青藍と同じ結論にたどり着いているのだ。
それ故、白哉は青藍の言っていることが正しいことをよく理解している。


『・・・いいえ。』
だが、この状況で父上に何もするなというのは酷だ。
『軟禁状態にはなるでしょうが、春水殿が情報を流してくれるでしょう。朽木家の情報網も、使うことが出来るように手配してあります。』


・・・これが最大限の譲歩だ。
この行為すらも、謀反への協力と取られるかもしれない。
その時は、僕が父上の代わりに罰を受けよう。
今回、すべての指示を出しているのは僕なのだから。
言いながら、青藍はそんなことを考える。


しかし、最悪の場合だけを考えていても仕方がない。
今はやるべきことをやりきるほうが先だ。
その最悪の場合を避けるために、僕はこれまで準備をしてきたのだから。


『・・・山本の爺には万一のために黒刃と白刃の封印をしていただいております。すぐにでも母上の元に駆け付けたいお気持ちはわかりますが、母上を助けたいと思っているのは父上だけではありません。だから父上は、命じてください。僕らを信じて。京楽家、周防家、朝比奈家も内々に動いてくださるそうです。』


皆を信じ、自分を信じよう。
母上は絶対に助かる。
青藍は白哉にそう言いながら、自分自身にもそう言い聞かせる。
「・・・わかった。」


『今一番動き易いのは僕ら兄弟です。幸い、まだ監視も付いていないようですからね。相手は僕らを見縊っているらしい。僕らに大した力はないと。今の時点で僕らに何の命も下っていないのがその証拠です。』

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