色彩
■ 26.座談会C

『そのころは母上も色々ありましたからね。目の前で隊長を失ってからの逃亡生活ですから。それから、蒼純お爺様が亡くなられた・・・。』
「朽木蒼純が死んだという情報が入った時、咲夜さんは泣くこともなく、ただ立ち尽くしていた。暫くそうしていると、気が付いたように何かを呟いて、どこかへと向かって行った。本当に生きた瞳を見たのはその時だ。今思うとあの時咲夜さんは「びゃくや」と呟いたのだと思う。」


『気が付いたら漣家に駆け込んでいたそうですよ。二十年以上連絡を絶っていたのに。凄い剣幕で「白哉はどうしている?」って、天音様に聞いたそうです。』
「今も昔もご当主が一番なんだろ。彼奴は泣きはらした目で帰ってきて、それから感情が回復し始めた。で、ルキアたちに出会ってさらに回復。そんで日番谷の言葉で大爆笑だ。日番谷は咲夜さんの回復において重要な役割を果たしてくれたよな。」


「・・・睦月さん、咲夜さんのことそんなに観察してたんすね。」
冬獅郎は意外そうに言った。
「俺は医者だからな。怪我だろうが病気だろうが、心や体が傷ついた者を見るとそれなりに気になるんだよ。それは日番谷にも言えることだがな。お前、才能と見た目が伴ってなかったからな。子どもの形でその生意気さだ。周りからはあまり受け入れられなかったんだろ?」


「・・・五月蝿いっすよ。つか、睦月さんだって人のこと言えないっすよね。胡散臭い笑顔しやがって。」
「俺はいいんだよ。別に傷ついてあれをやっている訳じゃない。この顔でこの性格だと面倒だからそうしているだけだっての。」
「はっ。どうだか。どうせその顔に釣られて寄ってきた女どものせいで女性不信にでもなったんだろうが。」


「日番谷、お前生意気さが増してるな?お前のサボり場所に医務室のベッドを提供してやった恩を忘れたのか?ん?」
「あれはあんたが他の教師に見つかると面倒だからって無理やり俺を引きずって行くからだろ!」
二人はそう言ってにらみ合う。


『・・・ふふふ。お二人とも仲良しですねぇ。』
そんな二人を青藍は楽しげに見つめる。
「「仲良くない!」」
二人は噛みつくように否定した。


「「「「「・・・っふ。あはは!!!!!」」」」
「やべ。この二人面白いぞ。」
「息ピッタリですね。」
「似た者同士なのね。」
「兄弟喧嘩みたいだ。」
「お互いに遠慮がないなぁ。」


「「・・・。」」
その様子に二人は不満げに黙り込む。
「日番谷さん、出来ましたよ・・・。って、どうかなさいました?」
佳乃が不思議そうに首を傾げる。
「・・・なんでもない。俺はもう帰る。放って置くと松本がサボるからな。」
冬獅郎はそう言って立ち上がり、佳乃から袋を受け取った。


「いつも悪いな。」
「いえいえ。日番谷さんの甘納豆、そのうち店に出そうと思っているんです。」
「そうか。」
『あ!代金は修兵さんに付けておいていいですよ。出演料です。僕らの分も全部修兵さんの奢りなので安心してください。』


「・・・お前も鬼だよな。お前がそれをやると搾取っていうんだぜ。檜佐木の奴、可哀そうに。まぁ、そう言うことなら遠慮なく奢ってもらうかな。」
『ふふふ。冬獅郎さんだって人のことは言えませんよ。』
「俺はいいんだ。・・・そうだ。昨日の舞、中々だったぞ。じゃあな。」


「「「舞?」」」
冬獅郎の言い残した言葉に昨日の宴に参加していなかったものが首を傾げた。
『あはは・・・。』
「昨日の青藍、凄かったんだよ。ね、蓮さん?」
「うん。僕もびっくりしたよ。何度か青藍の舞は見たことがあるけど、昨日のやつは特別だった。」


『あれは笛が凄かったの。』
「笛も凄かったけど、それだけじゃないと思うよ。昨日の朽木隊長、何だか上機嫌だったし。」
「確かに、いつもより口数も多かったように思います。」
「でしょ?酔っているのかとも思ったけどそうでもないようだったし・・・。」
『そうなの?帰るときは普通だったけどなぁ。』


「あぁ、ご当主は間違いなく機嫌が良かったな。それは咲夜さんもだったが。」
「僕も見たかったなぁ。」
「俺、昨日録画したやつ見たけど、青藍、別人みたいだったぜ。」
「なにそれ、侑李ずるい。僕にも見せてよ。」
京はそう言って唇を尖らせる。


「ははは。それは無理。取材の資料をそう簡単に見せるわけにはいかねぇの。」
「ふふ。次の宴の時は皆に知らせてあげるよ。青藍、咲夜さんの代わりに舞ったから、たぶん次も舞を頼まれるよ。」
キリトがにこにこと言った。


『あはは。やっぱり?母上の舞の方が綺麗なのに。父上はそれを見せたがらないんだ。それで僕が代わりに・・・。昨日は春水殿に連れていかれたのだけど。春水殿ったら、勝手に僕を非番にしちゃうんだよ。』
「京楽さんも自由だよな。まぁ、俺は美味い酒を好きなだけ呑めたから別にいいが。」

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